WOWOWでは、満島ひかり、坂口健太郎らが新たな魅力を見せた舞台『お気に召すまま』を放送する(11月9日 土曜 18:00~)。満島ひかり演じるロザリンドと、坂口演じるオーランドをはじめとしたさまざまな恋模様が描き出される本作。演出は2010年『おそるべき親たち』が文化庁芸術祭演劇部門大賞ほか各賞を受賞した演出家・熊林弘高で、2016年に演出を手掛けた『かもめ』に出演していた満島ひかりと坂口健太郎、中嶋朋子、小林勝也、山路和弘らが再集結した作品となっている。今回、同舞台公演中に坂口健太郎にインタビューを行った。

坂口健太郎

――今回、演出家の熊林さんはじめ、スタッフ・キャストで共有されていた一番のメインテーマは?

秩序と混沌の差というのは、皆さん共通認識を持っていたんだろうなと思います。もちろん、エロスだったり、ちょっとセクシャリティな部分だったりというのは、肉体表現も多いし、見て分かるものなんですけど。でも、秩序、固定された宮殿と、そこから森に入った瞬間の差というか、それは稽古中も皆すごく意識はしていましたね。

最初本を読んだ時に、よく分からなかったんですよ。隠語もすごく多いし、シェイクスピア作品だからというのもあると思うんですけど、何を意図して、何を意味しているんだろうというのが、凄く分からなかったんですね。だけど皆で少しずつ解釈を進めていくうちに、こういう取り方も出来るし、こういう考えも出来るし、解釈によって、全く違う方向に、アプローチが出来るというか、凄い広い本だなというのは、とても思いましたね。だからその秩序と混沌っていうのは凄く意識はしていたんだなと思いますね。

――生々しいテーマに対して舞台上で演じる上で何か躊躇みたいなものはありますか?

僕は無かったですね。でも、美しくは見えていたいなというのは頭にはありました。例えば僕が三幕でジェイクスと揉みあうシーンがあったりして、ああいう時って、どうしても役としても男性同士の関係性じゃないですか。だけどジェイクスはそういう男性同士も全く厭わないような存在でもあるし、そういう時に、ただただそのエロスの部分が走りすぎてしまうと、ちょっとお腹いっぱいになっちゃうような気はしていて。

だからもう一つ何か、エロスのほかに、肉体的な強さでジェイクスは求めてくる、僕は離れたい、そういうエネルギーのぶつかり合いというか、そういうエロスだけではない何かプラスアルファをきっと熊林さんは見せたかったんだろうなと思っています。

多分、エロスだけだったら簡単にセックスをする行為を見せればいいだけなんですけど、そこにもう一つ、逃げる追いかける、このエネルギーのぶつかり合いだったりとか、それはきっと一番最初のエロスが発揮されていないレスリングのところとかでも、凄く動きだったりで見せてはいるんですよね。ちょっとハッとしてしまうような息をのむ感覚というか、僕は肉体を出す場面が多く、オーランドは凄く強さを持っている役だと言われてはいたので、やっぱりどこかその強さの裏打ちとして、体重も増やしたりはしたんですけど、まずそれがあって、その裏に見えてくる、エロスの部分、セクシャリティな部分というのは、すごく大事にしないといけないなと思いましたね。

――満島ひかりさんとこのお芝居を作っていく中で、お互いの間で会話した事はありますか?

本の話じゃないですけど、やっぱり僕らは解釈して分かっているんだけど、勿論分かってない所もありながら、こういうことなのかなというのを少しずつ進めていく中で、お客様は全く分からないよねっていう話に一度なったことがあったんですよ。

もし『お気に召すまま』を知らない人が初見で作品を観た時に、きっと何を伝えたくて、こんな表現をしているというのが、もしかしたら伝わらないかもしれないよねという話になって。だから僕らがやっているから分かるけど、知らない人にもいろんな、全部は教えなくていいと思うんですけど、なんかこういうことなのかもしれないって欠片でも分かるように、セリフのやりとりだったり、体の使い方だったりを満島さんとは話しましたね。