米労働省が2019年11月1日に発表した10月雇用統計の主な結果は、(1)非農業部門雇用者数12.8万人増、(2)失業率3.6%、(3)平均時給28.18ドル(前月比±0.2%、前年比3.0%増)という内容であった。以下では、それぞれの項目を点検していく。
(1)10月の米非農業部門雇用者数は前月比12.8万人増となり、増加幅は前月から鈍化したものの、市場予想の8.5万人を上回った。大手自動車ゼネラルモーターズ(GM)のストライキの影響で製造業の雇用者が3.6万人減少したが、娯楽・ホスピタリティや教育・医療、建設、金融、小売などの幅広い業種で増加した。また、8月、9月分が9.5万人上方修正され、3カ月平均の増加幅は17.6万人となった。
(2)10月の米失業率は市場予想の通りに3.6%となり、1969年12月以来の水準を記録した前回から0.1ポイント上昇した。労働力人口に占める働く意欲を持つ人の割合である労働参加率が約6年ぶりの63.3%に上昇したことが背景。また、フルタイムの就職を希望しながらパート就業しかできない人なども含めた広義の失業率である不完全雇用率(U-6失業率)も前月から0.1ポイント上昇して7.0%となった。
(3)10月の米平均時給は28.18ドルとなり、前月から0.06ドル=6セント増加。伸び率は前月比+0.2%、前年比+3.0%であった。9月分が28.12ドルへ3セント上方修正されたことから前月比では市場予想(+0.3%)に届かなかったが、前年比は予想通りの伸びとなった。
米10月雇用統計は、GMの長期ストライキによる一時帰休の影響で非農業部門雇用者数の伸びが大幅に鈍化すると見られていたが、他業種の伸びがこれをカバーする格好となった。
失業率についても、0.1ポイントの悪化は労働参加率が予想外に上昇したためであり、むしろ良好な結果と言える。平均時給も前月分の上方修正を加味すれば堅調と言っていいだろう。足元の米労働市場は健全であり、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げ打ち止めを示唆したことが正当化される雇用統計であった。
ただ、雇用統計の後に発表された米10月ISM製造業景況指数は拡大・縮小の分岐点である50.0を3カ月連続で下回っており、米景気の先行きに対する不安は残った。このため、この日の外国為替市場では雇用統計を受けたドル買いは長続きしなかった。