2019年6月よりトルコのユルドゥズ・ホールディングから、MBKパートナーズ傘下となったゴディバジャパン。あわせてベルギーのブリュッセル工場はゴディバジャパンの管下となり、日本をはじめ、韓国、オーストラリア、ニュージーランドへ商品を展開させていく。

ゴディバジャパンは今後、体験型のカフェやアトリエを広げ、オンラインからオフラインまでアプリなどを活用したデジタルプラットフォームを介した、統合オムニチャネルモデルを構築するという。

  • ゴディバジャパン、ジェローム・シュシャン社長

    ゴディバジャパン、ジェローム・シュシャン社長

今回、ゴディバジャパンの最高デジタル責任者に就任した宮野淳子氏にインタビューを行った。宮野氏はオーストラリアのロイヤルメルボルン工科大学大学院を卒業後、日本ロレアル、アマゾンジャパンを経て2019年5月にゴディバジャパンのChief Digital Officer兼マーケティングコミュニケーション & デジタル / ITトランスフォーメーション統括本部長に就任した。今後のゴディバを担う宮野氏に、デジタル戦略の概要や展望について話を伺った。

デジタルで進化するゴディバ

ー『最高デジタル責任者』として、具体的にどのような改革案を実行するのでしょうか?

今後関わっていくのは、デジタルだけではなくて商品開発以外のマーケティング全般。幅広く、全ての部門を見させてもらっています。それにより、相乗効果が生まれると思っています。

まずは各部門のいいところを一つにして、デジタルを使いながら組織作りを行っています。そして、社内にあるデータを一元管理し、消費者のコードデータと個人情報をトラックすることで『いつのタイミングで、どんなものを求めているのか、どこに行かれるのか』という予測をかけながらマーケティングをやっていこうと思っています。

  • 最高デジタル責任者に就任した宮野淳子氏

    最高デジタル責任者に就任した宮野淳子氏

ー今まではゴディバの内部では、そのようなデータ蓄積などの作業はなされていなかったということでしょうか?

なかったですね。それぞれの部署ではデータを持っていて、メンバーシップカードやEコマースの購買履歴などの情報はあるのですが、それらは統合されていませんでした。各店舗で持っている情報だけですので、ビジネスに活用しようとするなら全てをコネクトしていく必要があります。

ー今回の経営統合で日本発のモデルケースも増えてくると思いますが、いかがでしょうか?

ビジネス規模では日本が大きく、世界規模でのデータ量はまだ少ないです。まずは、日本で成功事例を作って、他国展開をしようと思っています。

すべての人に最適なサービスと商品を提案

ーデジタル活用ということで、Eコマース(インターネットでものを売買すること)の拡充など、どのようなアイディアがありますか?

私たちがやるべきことは、どこのお店であってもその人に最適なサービスと商品を提案することであって、Eコマース単体で考えるのではなく、全部のチャネルの一つとして考えてビジネスをしたいと思います。Eコマースは、全体の最適化でライフタイムバリューを上げていく存在の一つです。

ーメディアへの露出や新たな広告展開など、何かプランはありますか?

例えば、B to Bで会社の誰かに買うのであれば、秘書向けにバルクディスカウント(数量値引き)の広告を出すなど「その人がどんな人か」「何を探しているのか」という予測をかけて広告展開をやっていきたいと思います。

ーこれまでの経歴の中で培った成功事例など、ゴディバに取り入れたいものはありますか?

これまではメーカーとして、その商品を買った人にいかにしてさらに買ってもらうかということと、新しいお客さんをどう取るかということに取り組んできました。ゴディバではギフトを大部分で販売し、プレゼントされた方も商品を体験しているので、第三者を介して渡ったユーザーにも実際に買っていただくようにしたいです。

また、今まではB to Cのチャネルでしたが、そこに合わせて第三者を加えたビジネスモデルを展開したいと思います。プレゼントされた方にもアプリをダウンロードするとか、アンケートに答えてもらうとか、その方がどういうモーメントになったのか、次にどんな商品を買うのか、そこまで踏み込むとパイが広くマーケティングができると思うのでチャレンジしたいと考えています。

ーアプリの開発などは行うのでしょうか?

まずはデータを取得して、一元化をするためのCDP(カスタムデータプラットフォーム)を導入し、マーケティングクラウドと連結して、そこから最適な情報を最適なタイミングでお客様に届けるということを行います。ゴディバクラブという会員が存在しているので、それをアプリ化することで消費者のデータをCDPと一緒にすることができれば、最適なタイミングでクーポンも出せますし、お店の方が端末で見ることで顧客との履歴が確認できます。

今後はマーケティングで伸ばす

ー「ゴディバ」という既に日本でネームバリューのあるブランドにデジタル要素が加わることで、どのような発展が望めますでしょうか?

これまで各店舗でしか管理していなかったデータが、全チャネルでハーモナイズして管理をすることが一つ。それから、今まで買った方に対してどうアプローチすることしかやっておらず、プレゼントされた方にアプローチするのはデジタルでしかできない領域ですので、発展の可能性は大きいと思います。

  • 「ゼロからイチ」宮野氏の挑戦は続く

    「ゼロからイチ」をモットーに宮野氏の挑戦は続く

ーゴディバでの可能性ややりがいなど宮野さんの考えをお聞かせください

ゴディバはクラフトマンシップで商品のクオリティを担保してお店を広げてきたビジネスで成功していて、今後はマーケティングの仕方で伸ばす段階に入ってきていると思います。私は「ゼロからイチ」を作るのが好きなので、これから作り上げて飛躍させるのはとても面白く感じています。