Microsoftは自社製品の多くに「インサイダープログラム」を提供している。今回はインサイダープログラムのラインナップを整理してみたい。最初に紹介するのは、インサイダー向けポータルサイトである「Microsoft Insiders」。日本語ページを用意しており、Microsoftが提供中の製品・サービスの一覧を確認できる。

  • Microsoft Insiders

    「Microsoft Insiders」。本稿執筆時点で8製品(サービス)のインサイダープログラムが稼働している

もっとも早くインサイダープログラムを開始した「Windows Insider Program」は、新ビルドをプログラム参加者に最速で配信する「Firstリング」、安定性を優先した「Slowリング」、機能更新プログラム(いわゆる大型アップデート)の正式リリース直前に提供を始める「Release Previewリング」の3チャネルを選択可能。

機能更新プログラム提供後、次期Windows 10 Insider Previewへ更新する「Skip Ahead(スキップ)」もあるが、一部のインサイダープログラム参加者に限定される。ちなみに、Microsoft社員向けには「Canaryリング」というものも存在しているが、一般のインサイダープログラム参加者には公開していない。

そのほか、企業ユーザー向けにAAD(Azure Active Directory)アカウントで参加する「Windows Insider Program for Business」や、開発者向けにプレビュー版SDKをダウンロードする開発者向けWindows Insider Programもある。

  • Windows Insider Program

    Windows 10 Insider Preview 20H1を選択し、まもなく同バージョン1909がリリースされることから、Skip Aheadチャネルに切り替わっている

Office Insidersは、Office 365サブスクリプション向けのインサイダープログラムだ。Windows Insider Programとは異なり、選択できるチャネルは「Insider(旧Insiderファースト)」と「月次チャネル(対象指定、旧Insiderスロー)」の2種類。これは、Office 365自体が「半期チャネル」「半期チャネル(対象指定)」「月次チャネル」という3段階の更新チャネルを設けているからだろう。

「対象指定」とは、パイロットユーザーや互換性テスト担当者に次期チャネルを試用してもらう意味合いがある。Office Insiderのリリースノートを見ると、バージョン1910だけでも6回の更新が行われており(新機能のテストや早期のバグフィックス)、安定性よりも新機能をいち早く試してみたいユーザーには好都合だろう。

  • Office Insider

    Office Insiderは月次チャネル(対象指定)とInsiderを選択できる。画像では「対象限定」となっているが誤植と思われる

Skypeインサイダーは、Windows 10、macOS、Linux、Android、iOS、Web版と幅広い環境でテストできる。Windows 10版はWindows 10 Insider Previewに含まれる形だ。なお、Microsoft Edge Insiderについては、Chromiumをエンジンとした新Microsoft Edgeだが、本連載で繰り返し取り上げているため割愛する(記事末のバックナンバーを参照)。

  • Skype for iPhone

    TestFlightプログラム経由で入手できるSkype for iPhone

先のポータルサイトには、統合開発環境であるVisual Studio Previewと開発者向けテキストエディターのVisual Studio Code Insiders、そして検索サイトであるBing Insiderなども並び、多くのインサイダープログラムが存在する。

注目したいのはOneDriveだ。早期機能を実装し、バグフィックスもいち早く行われるため、OneDriveおよびOneDrive for Businessをメインのクラウドストレージとして使用しているユーザーに、強くおすすめしたい。発見したバグや要望は、Uservoice.comでクライアントごとに英文で意見を投稿するか、Microsoftアカウントで投票する仕組みだ。

  • Visual Studio Preview

    早期の機能実装を試せるVisual Studio Preview

  • Visual Studio Codeインサイダー版

    日々人気が高まっているVisual Studio Codeのインサイダー版

  • OneDriveインサイダープレビュー

    インサイダープレビューを申し込むと、OneDriveクライアントは自動的に更新する

各インサイダープログラムはテレメトリデータの提供が必要だ。Windows 10 Insider Previewであれば、使用しているハードウェア情報やインストール済みアプリと使用状況などを含む診断データをMicrosoftに送信している。他のインサイダープログラムもほぼ同様だ。

Microsoftは使用目的として「サービスの提供や分析」に使用し、上記の提供情報は1カ月以内に削除、エラー情報やMicrosoft Storeの購入履歴などは長期間保存すると説明している。これらの諸条件を踏まえた上で、最新のソフトウェアとサービスを試してみたいと思ったら、インサイダープログラムへの参加を検討してほしい。

阿久津良和(Cactus)