2018年12月に開催された「Shadowverse World Grand Prix 2018」で優勝し、賞金100万ドル(約1億1,000万円)を獲得したふぇぐさん(Libalent所属)は、今、最も注目を集めているeスポーツ選手の1人。デジタルカードゲーム『Shadowverse(以下:シャドウバース)』を遊びはじめてから、わずか2年でつかんだ栄光だ。
今年に入ってからも戦績は好調で、プロリーグである「RAGE Shadowverse Pro League 19-20 ファーストシーズン」で、チーム優勝と個人MVPに輝いている。国内最高額の賞金を得たeスポーツ選手は、普段どんな「働き方」をし、どのようなキャリアを考えているのだろうか? 本人へのインタビューをお届けする。
無限の選択肢を見極めるための練習
シャドウバースは、Cygamesが提供している対戦型オンラインカードゲームだ。カードゲームといってもトランプやUNOとは大きく異なる。将棋が飛車・桂馬・歩など8種類の駒を使うように、性能の違う1,500種類以上のカードから40枚を選び、対戦する。
当然、膨大な組み合わせや打ち手が存在し、感覚を磨くために、シーズン中のふぇぐさんは毎日10~12時間ゲームをしていると言う。
「あんまりモノを買ってなくて、ゲーミングスペースの他はテレビとベッドとウォーターサーバーくらいしか自宅にありません。シーズン中はゲームを終えてそのままベッドに倒れ込んで、起きたらすぐゲームを始めるといった生活をしています。チームメンバーとの対戦は4割くらいですね。残り6割は一人でやっています」。
シャドウバースにはランクマッチという、同等の成績の相手と対戦できる機能があるが、そこでeスポーツ選手だけでなく、ライトユーザーを相手にすることも多い。それでも「一人練習」にこだわるのはなぜか。
「シャドウバースは無限の選択肢があるゲームですが、同じ相手とばかり対戦していると、どうしてもプレイが限られてしまいます。ランクマッチだと想像もしていなかったような手を見ることができ、いい学びになるんです。eスポーツ選手は当然みんな強いですから、ふつうに挑んではなかなか勝つことができません。
対策を考えてもいなかったような未知のプレイを仕掛けることで、相手のミスを誘発するように心がけているんです」。
稼ぎは毎月の給料+賞金・出演料
シャドウバースのプロリーグは、よしもとLibalentの他、読売新聞やau、サッポロビールといった企業がスポンサード・運営する8チームが総当たり戦を行い、上位4チームのトーナメント戦によって優勝が決まる。
1シーズンは3~4カ月で、1年を通して2シーズン戦う。この期間の密度が濃いのはいうまでもないが、オフシーズンであっても、ふぇぐさんはネット番組やゲームイベント、さらにCM出演などに大忙しだ。
気になる所属チームとの契約を聞くと、プロリーグの参加を条件に月額30万円の給料が支払われているという。賞金は事前に決めていた比率で取り分けており、さらに出演料が収入に加わる。プロにならなければ、世界大会で優勝することはできなかったとふぇぐさんは言う。
「リーグが始まった頃は全然勝てなくて、半年後に当時のeスポーツチーム代表との面談があったとき、クビにされるかと思っていたくらいです(笑)。でも、『半年じゃまだ本当の調子は見えないから』と暖かい言葉をかけてもらえました。
いまになって振り返ると、ゲームに対する集中力や真剣さが全然足りてなかったように思います。チームメイト同士で勝ったプレイ・負けたプレイの意見を交換するなど、一戦一戦の振り返りをきちんとするようになりましたね」。
応援を糧にさらなる高みを目指す
ふぇぐ選手はeスポーツ選手として、事務所やファンとはどのような関係を築いているのか。
「練習は選手に任せてくれていて、チームの状況はリーダーが報告しているので、プレイ内容について事務所から言われることはあまりありません。その代わり、オリンピックに出場するアスリートと同等のSNS講習会を開いてくれるなど、ファンとのコミュニケーションについていろいろ教わっています。
思っていたよりずっと熱心に応援してくれているファンが多くて、嬉しいですね」。
プロになる以前、大学を休学してゲームに専念すると宣言したとき、父親には殴られるほど反対された。それが今では「めちゃくちゃ応援してくれている」という。
「(父親は)ルールをまだよく分かってないようなんですが、自分の試合は必ず見てくれています。それから、自分が出演した広告のポスターも、わざわざ駅に行って写真を撮ってきてくれました」。
eスポーツ選手となって1年半が過ぎた。今年25歳になるふぇぐ選手は、今後のキャリアをどのように考えているのだろうか。
「もう一度、世界大会で優勝することが目標です。将来は『伝説の選手』になりたいと思っています。シャドウバースというゲームを知らない人でも、ふぇぐというeスポーツ選手は知っている、そんな世の中にしたいですね(笑)」。