外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年10月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ユーロ/円 10月の推移】
10月のユーロ/円相場は117.074~121.471円のレンジで推移し、月間の終値ベースでは約2.2%の大幅高(ユーロ高・円安)となった。世界景気の先行き懸念からユーロ売り・円買いが先行したが、3日に付けた117.074円を底値に切り返すと、21日には121.40円台まで反発して7月17日以来の高値を記録。その後も121.00円を挟んで高止まりした。
米国と中国の貿易摩擦が一服し、11月の部分通商合意が見込めるまでになったことや、英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitを巡り、英国とEUが離脱協定案の合意に漕ぎ着け、「合意なき離脱」の可能性が大きく低下したことがユーロ/円相場を支援した。
【ユーロ/円11月の見通し】
ユーロが10月に大きく反発したのは、前述の通り米中貿易摩擦と英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitを巡るリスクが大きく低下したことが最大の要因であった。そうした中、ユーロ圏の景気に底入れの兆しが依然として見えてこない点は、ユーロ反発の持続性を占う上で注意すべきポイントだろう。
特に、中核国のドイツではPMIの他、ZEWやIfoなど景況感関連の指標に10月は目立った改善が見られなかった。11月は、米中貿易摩擦とBrexitのリスクが後退する中、これらの指標に改善が見られるか注目しておきたい。ドイツ景況感の底入れが確認できればユーロはもう一段上昇してもおかしくないだろう。
その他、欧州中銀(ECB)は11月から総裁がラガルド前国際通貨基金(IMF)専務理事に替わる。早速、4日には講演が予定されており、市場の注目が集まりそうだ。一部のECBメンバーは9月に決めたマイナス金利の深堀りや量的緩和(QE)に反対したことが明らかになっており、市場には金融緩和に打ち止め感が漂い始めている。
ユーロ圏の景気に目立った改善が見えない中で、ラガルド新総裁がどのような政策スタンスを示すか注目したい。
【11月のユーロ圏注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya