外為どっとコム総合研究所の神田卓也氏が2019年10月の為替相場レビューと、今後注目の経済指標やイベントをもとにした今後の相場展望をお届けする。
【ドル/円 10月の推移】
10月のドル/円相場は106.484~109.284円のレンジで推移し、月間の終値ベースではほぼ横ばいだった。米9月ISM製造業の予想外の悪化を受けて米国景気の先行き不安が再燃した月初こそ106円台に下落したが、その後は米中通商摩擦や英国の欧州連合(EU)離脱=Brexitを巡る過度な懸念が後退したことで上昇に転じた。
米連邦準備制度理事会(FRB)が30日の連邦公開市場委員会(FOMC)で今年3度目の利下げを決めるとともに、利下げ打ち止めを示唆したことを受けて約3カ月ぶりに109.284円まで上値を伸ばす場面もあった。ただ、31日には米中摩擦への懸念が再燃する形で下落したためほぼ横ばいで10月の取引を終えることになった。
【ドル/円 11月の見通し】
11月のドル/円相場は、米日双方の10月金融政策発表を無難に消化したこともあって、米中貿易戦争へと焦点が戻っていきそうだ。
南米チリでのアジア太平洋経済協力会議(APEC、16-17日)に合わせて行われるはずだった米中首脳会談は、チリ政府が大規模デモなどを理由に会議そのものを取り止めたためリスケジュールされることになった。ただ、トランプ米大統領は「中国との第1段階合意の署名に向けて、(首脳会談の)新たな場所を選定している」と述べており、首脳会談の開催に前向きな姿勢を示している。
中国側も「第1段階」の内容については特に反論しておらず、月内にも部分的な通商合意に至る公算が大きいだろう。これがドル/円相場を押し上げるかどうかは他の条件にもよるが、少なくとも下値を支える可能性は高そうだ。
ドル/円押し上げに繋げるためは、これ以上米景気先行き懸念≒追加利下げ観測が高まらないことが肝心となる。その意味では、10月米雇用統計と10月米ISM製造業景況指数(いずれも1日)や10月米小売売上高(15日)など、一連の米経済指標の結果が重要だろう。
【11月の日米注目イベント】
執筆者プロフィール : 神田 卓也(かんだ たくや)
株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役調査部長。1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信(デイリーレポート『外為トゥデイ』など)を主業務とする傍ら、相場動向などについて、WEB・新聞・雑誌・テレビ等にコメントを発信。Twitterアカウント:@kandaTakuya