ダイキン工業が11月1日、ユーザー参加型のイノベーション・プラットフォーム「DAIKIN LAUNCH X」を開設しました。同社は今後、本プラットフォームを通じて開発段階のものを含めて商品情報を公開し、ユーザーの評価や意見を集めた上で、最終的な仕様の策定や商品化、販売につなげていく考えです。
DAIKIN LAUNCH Xは、大きく2つのコンテンツで構成されます。1つは、開発中の製品に関するコンセプトや搭載予定の機能、スペックなどの情報を掲載する「READY PRODUCTS」。ここでは、ユーザーが製品に対する期待度や意見を直接投稿でき、開発担当者との意見交換会といったオフラインのイベントも企画されています。
もう1つは「ONLINE SHOP」で、いわゆるネットによるダイレクト通販サイトですが、今後は「READY PRODUCTS」で商品化された製品を直販していきます。メーカーと直接つながったプラットフォームなので、ユーザーは購入後も意見や要望を投稿可能。さらに、製品の改良や将来的な新製品の開発、新規ビジネスへとつながるコミュニケーションなども、継続して図っていく意向です。
第一弾として、DAIKIN LAUNCH Xに掲載されているのは4製品(2019年11月1日時点)。ONLINE SHOPでは、「アシストサーキュレータ AIRLINK(エアリンク)」と、IAQセンサー&AIコントローラー「Beside(ビサイド)」が発売されています。
エアリンクは、 ルームエアコンの気流を遠くに届けたり、エアカーテンのように空気の壁をつくるなど、ルームエアコンと連動して室内の温度ムラも減らす補助サーキュレーター。2018年5月発売の初期モデルが、ユーザーの声を反映してモデルチェンジしています。
Besideは、センシングやAI技術を活用して事業を展開する香港のIoTスタートアップ企業、Ambi Labs社と開発した製品。センサーで検知した室内の温度や湿度、照度やCO2などの環境情報とともに、ユーザーの好みを学習してエアコンを制御するという、快適な空調環境を提供するデバイスです。
一方のREADY PRODUCTSに公開されているのは、コードレス脱臭機「LOOP STREAMER(ループストリーマ)」。ダイキンのエアコンや空気清浄機にも搭載されている独自の空気清浄技術「ストリーマ放電」を応用した、狭小空間向けの脱臭機です。サイトを通じてユーザーから意見を集め、2020年の発売を目指しています。
もう1つはは、エアコンの設置が難しいキッチン、洗面所、ガレージなど、さまざまな場所に持ち運べるヒートポンプ式のポータブルエアコン「Carrime(キャリミー)」。2020年6月の発売を目指し、クラウドファンディング「Makuake」を通じて、2019年12月10日まで支援を募集します。目標支援額は1,435万5,000円で、300台以上の支援で生産を開始する予定です。
今回の発表会には、マクアケ取締役の木内文昭氏もゲストとして登壇。「ダイキンさんのような大手企業がMakuakeを利用するということで最初は驚いた。こうしたものづくりのやり方がよき前例となり、ほかの企業にも影響や波及効果をもたらして、新しいものを作る風土につながっていってほしい」と期待を語りました。
今回のプロジェクトを開始した背景には、ダイキンが空調専業機メーカーとしての生き残る危機感が挙げられます。
「エアコンは、一家に1台からいまや一部屋に1台という時代にまで普及している。一方で、買い替えサイクルは13.6年に伸び、ユーザーは一度購入するとそれ以降、メーカーとの接点がない。ライフスタイルが多様化するにつれ、空気に対して求めるものも多様化してきているのではないか。これまでのように冷暖房だけではなく、空調文化に新しい価値を提供していかなければならない」(ダイキン工業 萩原良彦氏)。
DAIKIN LAUNCH Xは、エンドユーザーとつながるための場所として、ダイキンの空気に関する最先端の技術が集まるイノベーション・プラットフォームとしての位置付けです。今後の運用・展開についても、「社員が考えたアイディア商品が1万5,000件ある。それらをどのように発表していくかなどは、あまりルールを決めずにやっていきたい。一度発表したものを取り下げることもありうるし、出し直すこともあると思う」(萩原氏)と柔軟な姿勢を示しました。