久光製薬は10月26日、九州本社(佐賀県鳥栖市)にて「第25回 秋の茶会」を開催した。晴天に恵まれた秋の好日。芝生の庭には立礼席、別邸には薄茶席が用意され、各々にお茶を楽しむ参加者の姿が見られた。東京2020大会のオフィシャルパートナーである久光製薬では、五輪の機運を醸成する公認プログラムとして秋の茶会を実施している。

  • 久光製薬は10月26日、「第25回 秋の茶会」を開催した(佐賀県鳥栖市田代大官町にある久光製薬九州本社にて)

    久光製薬は10月26日、「第25回 秋の茶会」を開催した(佐賀県鳥栖市田代大官町にある久光製薬九州本社にて)

佐賀には茶の文化が

心地良い秋風が吹き、九州本社に掲げられた国旗と社旗をはためかせる。そんな穏やかな気候のもと、今年も秋の茶会が開催された。開会に先立ち、裏千家淡交会佐賀支部長を務める村岡安廣氏が挨拶。淡交会では今年、4つの大きな茶会を予定しており、その3つめが本日の茶会であると説明した。

  • 裏千家淡交会佐賀支部長の村岡安廣氏

    裏千家淡交会佐賀支部長の村岡安廣氏

村岡氏は、織田有楽斎(織田長益、安土桃山~江戸時代の大名・茶人)の弟子たちが佐賀県小城市に1920年に建立した「茶筅(ちゃせん)塚」が来年で100周年を迎えることをはじめ、佐賀県内には独特の素晴らしいお茶の文化が残っていると紹介。久光製薬による秋の茶会は、そうした伝統を背景に開催されていると説明した。

  • 東京2020参画プログラムとは?

    東京2020参画プログラムとは?

なお、東京2020参画プログラムでは、スポーツだけでなく日本の伝統文化や芸術を未来につなぎ、また世界を和(WA)でつなげることを目的にしている。久光製薬の茶会の取り組みは、この東京2020参画プログラムの趣旨に添ったもの。老若男女を問わず誰でも参加できる催しのため、鳥栖市内だけでなく、近隣県からも多くの参加者が訪れているという。

立礼席は、継承、和のしつらえ

西公園で行われた立礼席は、裏千家淡交会佐賀支部青年部・育成委員会が担当した。進行からは「今年は御代替りというお祝いごとがあり、平成から令和になりました。今回の席は、継承、和のしつらえをしています」と説明がある。

  • 立礼席は、裏千家淡交会佐賀支部 青年部・育成委員会が担当

    立礼席は、裏千家淡交会佐賀支部 青年部・育成委員会が担当

  • 優雅にお点前を披露

    優雅なお点前を披露

  • 参加者に茶が振舞われた

    参加者に茶が振舞われた

菓子は、厳木(きゅうらぎ)の「草生庵」によるもの。丸い和菓子はバレーボールを、四角い和菓子は五輪旗バージョンのサロンパスをイメージしてデザインされた。

  • バレーボールをイメージした和菓子

    バレーボールをイメージした和菓子

  • 五輪旗バージョンのサロンパスをイメージしてデザイン

    五輪旗バージョンのサロンパスをイメージしてデザイン

  • 秋空の下、お茶を楽しむ

    秋空の下、お茶を楽しむ

茶碗は彫唐津(中里窯)を使用した。継承というテーマに従い、青年部に長く使われてきた茶器を使っているとのことだった。

  • 茶碗を愛でる参加者たち

    茶碗を愛でる参加者たち

  • 秋を感じる茶器も

    秋を感じる茶碗も

ちなみに立礼席が行われた西公園には今年(2019年)4月、久光製薬ミュージアムが開館したばかり。創業170周年を記念して建てられたもので、大きなガラスを使用した大胆なデザインが特徴的だ。1階は、久光製薬の歴史を紐解くフロア。創業から今日に至るまでの経緯が時系列に沿って紹介されており、歴代経営者の熱意や、当時の看板商品などを見て回れるようになっている。

  • 久光製薬ミュージアムは、鉄筋コンクリートの2階建て。イタリアの彫刻家チェッコ・ボナノッテ氏が担当したデザインが美しい

    久光製薬ミュージアムは、鉄筋コンクリートの2階建て。イタリアの彫刻家チェッコ・ボナノッテ氏が担当したデザインが美しい

久光製薬の創業者、久光仁平が薬業を始めたのは1847年(弘化4年)のことだった。ペリーが浦賀に来たのが1853年(嘉永6年)だから、ときは幕末。ミュージアムには、その頃に製薬道具として使っていた薬研も展示されている。長男の久光与市が薬業を引き継ぎ、さらに与市の三男である中冨三郎氏が継承した。現在の中冨一榮社長は、創業者から数えて6代目となる。歴代の経営者の顔写真が並ぶミュージアムとあり、来館者には、現在の中冨社長に創業者の面影を見つける人の姿もあった。

別邸では、萬年の歓びを

別邸で行われた薄茶席は、裏千家淡交会佐賀支部が担当した。進行の女性は「即位礼正殿の儀が10月22日に行われました。お祝いの気持ちで、お床は『菊松萬年歓』をかけさせていただいております」と説明。茶碗は善五郎による千羽鶴を用意した。

  • 薄茶席は別邸で行われた

    薄茶席は別邸で行われた

  • 菓子は鳥栖の水田屋による「みのり」

    菓子は鳥栖の水田屋による「みのり」

  • お茶を味わう参加者

    お茶を味わう参加者

佐賀豪雨により8月末には県内に被害がもたらされた。それを念頭に、茶会が開催できることへの感謝を口にする。「千葉の方では雨による被害が出ており、大変お気の毒なことでございます。こちらでは心配していた雨もやみ、この日を迎えられました」。

  • 萬年の歓びを軸で表現。花はシュウメイギク(秋明菊)、イトススキ(糸薄)、ノコンギク(野紺菊)が飾られた。花入は瓢阿による唐物手付籠

    萬年の歓びを軸で表現。花はシュウメイギク(秋明菊)、イトススキ(糸薄)、ノコンギク(野紺菊)が飾られた。花入は瓢阿による唐物手付籠

  • 茶碗は善五郎による千羽鶴

    茶碗は善五郎による千羽鶴

会話を楽しみ、お茶を味わう参加者たち。茶碗や軸、花などを通じて秋の日を楽しむ姿が見られた。

  • 秋の食材を味わうことができるお弁当

    秋の食材を味わうことができるお弁当

  • 食堂では点心席が用意された

    食堂では点心席が用意された