ネット速度をまとめて高速化できる最新の無線LANルータ
パソコンやスマートフォンには、体感速度を低下させるさまざまなボトルネックが存在しますが、多くの機器に対して同時に効果てきめんなのが無線LAN(Wi-Fi)ルータ。無線LANルータに接続する機器が新たな無線LAN規格に対応している必要はありますが、最新モデルを導入すれば多くの機器でブラウジング、動画鑑賞、クラウドストレージとの同期などが高速化します。いま注目を集めているのが、「Wi-Fi 6」に対応した無線LANルータです。
11ac対応の旧最上位モデルと比べて、約3.1倍の通信速度!
今回レビューするバッファロー「WXR-5950AX12」は、国内で初めて10GbE(10ギガビットイーサネット)を搭載して、無線LAN規格として新たに「Wi-Fi 6(IEEE802.11ax)」に対応した無線LANルータ。Wi-Fi 6の概要は、別記事「バッファロー、11ax無線LANルータを正式発表 - 10月発売、10GbE有線LANも」を参照いただくとして、規格上は最大9.6Gbpsという高速通信が可能な仕組みとなっています。
バッファローがWXR-5950AX12で実測したスループットの結果を紹介しましょう。Wi-Fi 5(IEEE802.11ac)に対応した従来モデル「WXR-2533DHP2」の約1.2Gbpsに対して、Wi-Fi 6対応のWXR-5950AX12は約3.7Gbps。約3.1倍の通信速度を記録しています。これはあくまでWXR-5950AX12同士で計測した結果なので、スマホやノートPCでは同等の速度は望めませんが、それでも大幅なスピードアップを期待できるのです。
80MHz・160MHzの性能を最大化する「デュアルスタックダイポールアンテナ」
実効速度のベンチマークを実施する前に、外観とセットアップ手順をチェックしてみましょう。WXR-5950AX12の本体サイズは300×195×75mm(幅×高さ×奥行き)、重さは約1,580g。
無線LANの通信に用いる周波数、80MHzと160MHzのそれぞれで、パフォーマンスを同時に最大化するための「デュアルスタックダイポールアンテナ」を採用しています。このアンテナを最大限に開くと、幅は実測で約640mm、高さは約420mmとなりました。アンテナ部分が広がるだけなので設置面積は変わりませんが、棚などに設置する場合は、電波の飛びやすさを優先させるか、設置スペースや見栄えを重視するか、悩むかもしれません。
インタフェースやボタン、スイッチ類は左右側面です。右側面には電源端子、電源ボタン、USB 3.1 Gen 1 Type-A、INTERNETポート(有線LAN、最大10Gbps×1)、有線LANポート(最大10Gbps×1、最大1Gbps×3)を配置。左側面には、AOSSボタン、ROUTER/AP/WBスイッチ、AUTO/MANUALスイッチ、RESETボタンがあります。
Wi-Fi 6に対応するだけでなく、最大10Gbps対応のLANポートも備えたWXR-5950AX12は、インタフェース類が充実しています。ただし、LANケーブルを取り外すための「ツメ」が前面に来る配置になっており、前面カバーがジャマになってツメが少々押しにくく感じました。ツメ折れ防止カバーが大きなLANケーブルは選ばないほうがよいですね。
光回線のモデム設置済みなら、数分でセットアップ完了
WXR-5950AX12の本体背面には、Wi-Fi接続用のSSIDと暗号化キーを記載したセットアップカードが収納されています。すでにプロバイダーから提供されたモデムなどの機器を設置済みなら、モデムとWXR-5950AX12をINTERNET端子経由(有線LANケーブルを使います)でつないで電源を入れると、数分後には自動で無線LANルータとして機能します。
この場合は、特に設定作業は必要ありません。スマホやPCなどの各端末から、セットアップカードに記載されたSSIDを選び、暗号化キーを入力すれば、すぐに高速ワイヤレス通信を享受できます。
おもに詳しい人向けですが、各種設定を行うためには、スマホ用として「StationRader」、WindowsとMacには「エアステーション設定ツール」というアプリが用意されています。どのアプリを使った場合でも、Webブラウザへの橋渡しをするだけで、結局はWebブラウザを使って各種の設定を行います。つまり設定できることは、スマホもWindowsもMacも変わらないわけです。
928Mbpsの最大スループットを記録!
続いてベンチマークですが、筆者の住む地域にはまだ最大通信速度10Gbpsをうたう「NURO 光 10G」のようなサービスが提供開始されていません。
そこで今回は、Wi-Fi 6対応のWXR-5950AX12と、Wi-Fi 5対応のWXR-2533DHP2を用意し、それぞれのLAN端子に有線LANアダプタ「SANLink3 T1」経由で「MacBook Pro」を接続して、ネットワークパフォーマンス測定ツール「iPerf3」をサーバーモードで実行。
そして、Wi-Fi 6対応の「iPhone 11 Pro Max」と、日本エイサーのWindows 10搭載14型ノートPC「Swift 7」から、「iPerf3」をクライアントモードで実行しています。iPhone 11 Pro MaxとSwift 7で実効通信速度を3回計測し、その平均値を算出しました。下記がその結果です。
Wi-Fi 6対応のWXR-5950AX12は、Wi-Fi 5対応のWXR-2533DHP2に対して、iPhone 11 Pro Maxでは約137%に相当する862Mbps、Swift 7では約142%に相当する910Mbpsの実効スループットを記録しています。WXR-5950AX12同士で実効スループットを計測したバッファローの結果には及びませんが、スマホ、ノートPCの実効通信速度としては十分満足できる結果です。
最大通信速度10Gbpsの光回線サービスでこそ真価を発揮か
今回のベンチマークで、Wi-Fi 6(11ax)はWi-Fi 5(11ac)に対して、実効スループットの大幅な向上を実現していることを確認できました。この実効通信速度は、最大通信速度が10Gbpsの光回線サービスを契約してこそ真価を発揮します。「NURO 光 10G」を提供するソニーネットワークコミュニケーションズをはじめ、多くの光回線サービス提供事業者が、できるだけ早く10Gbpsの光回線網を整備することを強く期待したいところです。