10月28日に東京・将棋会館で第50期新人王戦決勝三番勝負第3局(主催:しんぶん赤旗)増田康宏六段―高野智史四段戦が行われました。

高野四段が相居飛車の攻め合いを制す。増田六段は3度目の優勝ならず

高野智史四段

増田六段が先勝し、高野四段が追いついて迎えた最終局。戦型は相居飛車になり、先手の増田六段は雁木模様に、高野四段は矢倉に構えます。そこから増田六段は居玉のまま、五段目に歩を伸ばして角道を通し、伸び伸びとした陣形を築きにいきました。これに対して、高野四段は鋭く反発します。桂を跳ねて伸びてきた歩を直接狙い、さらに本来は囲いの一部である銀を前線に繰り出して、積極的に戦いを挑みました。

中盤、銀が中央でぶつかり、激しい攻め合いへと突入します。先手は天王山とも呼ばれる盤面中央に角を飛び出して、ペースを握ったかに見えました。しかし、高野四段がじっと自陣に歩を受けて辛抱してみると、形勢は意外と大変でした。

深い位置にいる高野四段の玉に対して、右玉に構えた増田六段の玉は戦場から近い位置。加えて高野四段の右桂が、序盤で増田六段が突いた歩を取りながら攻めに参加してきます。その桂を軸に反撃を開始して、高野四段が優勢になりました。

終盤戦に入って苦しくなった増田六段は勝負手を出して粘りますが、優勢になってからの高野四段は手厚い指し回しで逆転を許しません。最後は増田玉を即詰みに討ち取って勝利。見事に2勝1敗で、新人王に輝きました。

「(師匠が)王位を獲られていますので、自分も頑張らなければいけないという思いがありました。その中で、一つ結果を出すことができて、大変うれしく思います」(中継ブログより)と、高野四段。

高野四段はこれが棋戦初優勝です。この三番勝負で見せた「辛抱」、「受け」、「手厚い勝ち方」は、まるで師匠の木村一基王位のよう。その技術と精神は師匠から弟子へ、確かに受け継がれているようです。