待機児童の多い都市部では、最初から希望通りの保育園へ入園できるケースばかりではありません。「自宅から遠い園だけど、とにかく保育園に入れることが必要だった」「認可はすべて落ちてしまい、認証保育所など認可外施設に一旦預けるしかなかった」「兄弟同一園にしたかったが、空きがなかった」などの理由で、とりあえずの預け先として保育園へ入れた、という方もいるでしょう。
また、小規模保育や保育ママなど、0.1.2歳を対象とした保育サービスを利用している場合、3歳児以降は転園が必要となります。
このような理由から、一度保育園に入れたとしても、途中で転園を考えたり、経験したりする方は少なくありません。そして転園は、手続き次第で可能です。
ほとんどの自治体で、転園に理由は必要ない
転園する理由には、上記であげたような事情のほかに、「認可外で保育料が高いため、認可に移りたい」、「園の理念や方針が家庭の価値観と合わない」「園庭があったり、もっと人数の多い保育園に移りたい」といったものもあるでしょう。
認可外への転園や、認可外→認可への転園(入園申請)で、理由を問われることはないものの、認可→認可への転園は自治体に申し込むことになるので、このように、現在の不便・不満を解消するため、今後の希望をかなえるためという理由で、転園できるのかどうか気になるかもしれません。この点、多くの自治体では、転園の理由に制限を設けていないようです。
ただ一部の自治体では、「転居」「兄弟同園希望」「5歳までの間に卒園年齢が来る保育施設からの卒園」「やむを得ず自宅から遠い保育園に通っている」など、転園理由に一定の制限を設けている場合があります。具体的には、自治体(市区町村)の保育園入園案内などにて、確認しておきましょう。
手続き方法は?
転園の申し込みは、上記でも示したとおり、認可施設への転園であれば自治体に、認可外施設への転園であれば直接施設に対して行います(自治体独自の保育サービスは、自治体に申し込むものもあります)。
認可施設への転園申込は、すでに認可施設に通っているのであれば、「保育の必要性の認定」などに必要な書類は提出済みなので、「転園申請書(新規の入園申請と同じ書式を使う自治体も多い)」などで手続きできることが多くなっています。
認可外に通いながら、すでに認可への申請を出している場合も同様です。ただし、年度が変わるとき、もしくは、仕事や家庭の状況など、保育の必要性にかかわる事情が変わっている場合は、新規入園と同様の書類一式の再提出が必要です。
「転勤・引っ越しのため、転園しなければならない」といった方もいるでしょう。転居した後に、のんびり保育園探しをすればいい、ということであればよいのですが、引っ越してすぐ保育園に預けたいという場合は、現在お住まいの自治体経由で、転園先の自治体への利用申請が必要です。
その際の注意点としては、
(1)申請期限は自治体ごとに異なるため、転居先が決まったら早めに申請スケジュールを確認すること
(2)申請時に転居を証明する書類(賃貸契約書など)の提出が必要な場合も多いので、必要書類を用意できるかどうかを確認すること
(3)待機児童になる恐れがある場合は、認可外施設にもアプローチしておくこと
などがあります。
転園で費用はかかる?
転園そのものに、必要な費用はありませんが、保育料や給食費(自治体ごとに異なります)が変わったり、認可外では、入園料・教材費・制服代などが必要だったりすることがあります。また、エプロンや布団など新たに用意しなければならない通園グッズがあるかもしれません。入園前に確認しておきましょう。
転園可能な時期は?
転園を申請する時期に特に制限はありませんので、少しでも早く転園したい場合は、転園先をよく検討したうえで、早めに申し込むのも吉です。年度途中に空きが出る場合もありますが、やはり定員が動きやすい年度初めが、もっとも実現しやすいタイミングでしょう。
なお、小規模保育など5歳未満で卒園を迎える認可施設からの転園では、「卒園の翌年度の4月申込時のみ、調整指数の加点や優先順位を上げての選考」がされるというルールを取っている自治体が多いため、それまで転園が実現されないかもしれません。
注意点
認可施設に通いながら転園申請を出し、内定が出た場合、辞退すること自体は可能ですが、これまで通っていた園は、次に入園する方で埋まっていたりと、必ずしも戻れるとは限りません。このため、転園の意思がなくなった場合は、申し込みを取り下げるための手続きを行いましょう。
また、これまで保育園を利用していたお子さんであっても、転園先では、あらためて「慣れ保育(慣らし保育)」の期間が必要です。慣れ保育の期間や内容は、保育園によって異なりますので、事前に保育園に確認しておき、職場に相談しておくと、お互い安心です。
転園にあたっては、大人の都合だけではなく、子どものメンタル・気持ちに配慮しましょう。転園による心理的な影響の度合いは、1人ひとり異なりますが、あまり頻繁に環境が変わるようなことはなるべく避けたほうがよいでしょう。
特に2歳以上の場合は、自我が芽生え、子ども同士または大人との間でも人間関係ができ、社会性を身につける準備の時期ですので、転園による影響は1歳以下よりも大きいと考えられます(ちなみに、0歳と1歳で転園を経験したわが子は、ケロっとしておりました)。
このため、お子さんへの影響が心配な場合は、事前に「保育園が変わること」「次の保育園はどんな保育園か」について、子どもに合わせた説明をしておくとよいでしょう。また転園後は、子どもの不安やストレスをきちんと受け止めてあげられるよう、本人の様子を丁寧にみながら、先生方ともしっかりコミュニケーションを取ることで、なるべくスムーズに新しい環境になじめるよう、親としてサポートしていきましょう。
※本稿の内容は、調査時点の一般的な情報に基づくものであり、実際の申込時および各自治体個別の要件等を保証するものではありません。詳細かつ最新の情報は自治体にご確認下さい。