今年も「CPS/IoTの総合展」CEATEC 2019が開催されました。かつては家電見本市といわれていたCEATEC JAPANですが、CPS/IoTの総合展として新たな舵を切ったのが2016年。そして今年は、CEATEC JAPANからCEATECと名称を変更しました。

その新生CEATEC、2018年までIoT TOWNとして行われていた主催者企画が、今年はSociety 5.0 TOWNに。より「共創型」となり、各企業が持つ強みを出し合って、サービスや商品を創るという動きが出ています。また、新生CEATECには従来なら出展しなかったような企業もブースを構え、多様性が増した印象です。

  • CEATEC 2019

【動画】LIXILの子会社、NITTO CERA(ニットー セラ)がクラウドファンディングを行った「KINUAMI(絹浴み)」を、手だけで体感できる「泡シャワー」を展示。温かい泡がまとわりつくのはかなりの異次元感覚
(音声が流れます。ご注意ください)

作業安全のための見守りと技術活用

CEATEC 2019には、土木建築業の企業が多く出展(大林組、清水建設、大成建設、戸田建設、中日本高速道路、東日本高速道路)。

興味深かったのは東日本高速道路で、コンクリート検査を省力化する展示です。コンクリート内部の劣化をチェックするため、従来はハンマーで軽く叩いて音で判断していました。これは経験が必要な上に、ハンマーでコツコツ叩くのは作業員の疲労につながります。トンネル内の検査では足場を組む必要があって、渋滞の原因になるだけでなく、足場を組んでも手が届きにくい場所があります。

そこで実用化したのが、ハンマーの代わりとなるローラーです(コロコロeyeという名前で販売中)。コンクリートの上でローラーを転がすことで、点から線へと診断範囲が拡大され、作業負担も減ります。

【動画】コンクリート内部の不良を調べるために、従来はハンマーで軽く叩いて音を聞いていました。このローラーを使えば、壁にローラーを当てて転がすだけで壁の状態がわかります
(音声が流れます。ご注意ください)

加えて現在検証中なのが、熟練の作業者でなくても異常を判断しやすくする機器です。外部の騒音を減らすノイズキャンセル機能によって、交通量の多いトンネル内でも異常を判断しやすくします。将来的には、ローラーを持たせたロボットを使って、検査を省力化する試みが検討されているようです。

  • CEATEC 2019

    作業員が音で判断するので熟練が要求されますが、そのハードルを低くするのがAI。環境音をキャンセルしつつ、壁からの音をAIが判断。ランプによって劣化の判定を支援します

  • CEATEC 2019

    公立諏訪東京大学と共同研究中とのことで、ヘルメットに音を入力するマイクと判定ランプが付いています

インフラ補修を支援

高度成長期に作られた橋やトンネルの、検査と補修の必要性が増大するといわれています。例えば、1964年の東京オリンピックを機会に作られた東京の首都高速も現在、大規模な修繕工事中です。この先、工事が増えても作業員を増員することは難しいため、効率アップと合わせて、熟練者でなくても各種の判断ができる仕組み作り要求されています。今回のCEATECでは、「作業者の安全見守り」の展示が多く見られました。

一例として、工事現場で作業する人が熱中症になる前にアラートを出すという課題。作業員の体表面の温度や湿度、運動状況などをモニタリングして、リモートで現場事務所や所属企業にアラートを出すという取り組みです。

ここでも共創が行われており、センシング技術やICTを持つ企業と建築土木系の会社がコラボレーション。お互いの意見を取り入れた製品やサービスを開発しています。

  • CEATEC 2019

    ALPSALPINE×シマブンの見守りシステム。すでに長時間の実証実験が行われているそうです

  • CEATEC 2019

    京セラ×清水建設のコラボ。マスクを付けていても、騒音環境で会話ができるように、骨伝導スピーカーを使った通話システムが入っています

  • CEATEC 2019

    村田製作所×戸田建設の見守りシステムは、ヘルメット内で完結。村田製作所の無線通信技術を用い、中継器とゲートウェイを介してクラウドにデータを送信します

  • CEATEC 2019

    NTT研究所×名古屋工業大学。熱中症対策で重要な人間の体内温度を、センサー付きの下着を使って身体の表面から判断する研究をしています

先祖がえり? シャープブース

家電製品をズラっと展示していたのが今年のシャープ。展示の中心は、AIoTプラットフォームや、他社との共創、スマートホームです。

  • CEATEC 2019

    ヘルシオオーブン、ホットクック、冷蔵庫、洗濯機といった家電が並んでいたシャープのブース。先祖がえりしたかと思いました

  • CEATEC 2019

    とはいいつつも、KDDIの睡眠センサーとエアコンと協調して快眠を実現するなど、イマドキの展示内容でした

家電以外にも「液晶のシャープ」を印象付ける「120V型サイズ8Kディスプレイ」を参考展示。価格は未定も「1,000万~3000万くらい」とのこと。少なくとも家庭で買えるような価格とサイズではなく、サイネージやパブリックビューイング用途ですね。そのとなりでは、60V型の4Kディスプレイ×4枚を組み合わせた展示も行っており、こちらは「1台120万×4台」とリーズナブルさ(?)をアピールしていました。

  • CEATEC 2019

    120V型の8Kディスプレイは参考展示(右)。参考価格はちょっとしたマンションぐらいでしょうか。左は4Kパネルを4つ使った「今できる技術」の展示

また、サイネージ用途として、液晶のバックライトユニットを外して、その後ろに商品を並べて説明をしている展示もありました。「各社の製品が4Kにシフトしている大型ディスプレイですが、90V型のフルHDディスプレイを現在もラインナップしていることのアピール」(説明員)とのこと。透過型のサイネージ利用ならばフルHD解像度でも十分でしょう。4Kにすると透過率が落ち、裏の商品への照明を強くしなければならないので、バランスを考えたという説明でした。

  • CEATEC 2019

    サイネージ向けの液晶など、幅の広い展示が印象的でした