既報の通り、富士フイルムがミラーレスの最上位モデル「X-Pro3」を発表しました。富士フイルムの担当者が「こだわり抜いて作り上げた1台」と自信を見せる、個性爆発のカメラの特徴を実機をもとに見ていきましょう。
カギでゴリゴリやってもキズつかない新コーティング
X-Pro3は、カメラを持つ喜びや操る楽しみを追求すべく設計したといいます。X-Pro3の商品企画を担当した富士フイルムの上野隆氏は「X-Pro3は純粋に写真を愛する人向けのカメラ。万人に受け入れられるカメラではないが、誰でも扱えるカメラを求める人にはX-T3などのシリーズを用意しているので、X-Pro3はあえて振り切った」と語ります。
X-Pro3の特徴の1つが、天面の軍艦部と底面の軍艦部にチタンを用いたこと。上野氏は「天面と底面はさまざまな場所に衝突しやすい部分なので、硬く変形しにくいチタンを用いた」と解説します。
ちなみに、チタンは加工が難しい素材でもあり、機械だけでは細かな部分の処理ができないため、研磨など一部の加工は手作業で行っているそう。そのため、軍艦部の仕上げは製品ごとにわずかな違いが生じるといいます。「工業製品ではあるが、手作りによる違いも楽しんでほしい」(上野氏)。
単純にチタン素材を採用しただけではありません。新品時のようなキズのない状態で長く愛用してもらうべく、3色のうち2色のカラバリには「デュラテクト」を用いた特殊なコーティングや硬化処理を施したのも注目できます。通常のチタンと比べて表面の硬度が10倍にも高くなり、カッターやカギなどの金属でこすってもキズがまったく付かないそう。「いつまでも新品のような塗装で使ってもらうべく、チタンと特殊コーティングの組み合わせにした」と上野氏は語ります。
ちなみに、ブラックモデルのみデュラテクトの技術は用いられていません。何かにこすったりすればキズが付いてしまうものの、経年による味を楽しめるカラーと位置づけます。
液晶を内側に隠した「Hidden LCD」誕生の理由
X-Pro3は、背面の液晶パネルに特徴があります。「Hidden LCD」の名称からも分かるとおり、メインの液晶パネルはチルトパネルの外側ではなく内側に隠されており、通常撮影では撮影情報などを表示する正方形の小型液晶のみ露出しています。
このような構造にしたのは、写真を撮影したあとに背面液晶で撮った写真を見る行為をやめたかったから。かつてのフィルムカメラのように、1枚1枚の写真の構図や露出を追い込んで作品を仕上げていってほしい、という願いが込められています。
とはいえ、ライカの「ライカM-D」ように背面液晶を完全になくしてしまうとやはり不便なうえ、液晶を上に向けたウエストレベルの撮影に対応できる利便性を求めた結果、このようなスタイルにしたといいます。
新フィルムシミュレーションなど機能の底上げも
撮像素子や画像処理エンジンは、X-T3やX-T30、X-E3などの現行モデルと同じ最新世代のものを搭載しており、同じレンズを使えば同じ写真が手に入るXシリーズの特徴を継承します。
そのうえで、X-Pro3は新たなフィルムシミュレーション「Classic Neg.」(クラシックネガ)を搭載したのが特徴。フィルムカメラ全盛時代、多くの人が使ったカラーネガフィルムの色再現で撮影できるモードで、彩度を抑えつつ堅めの階調で仕上がります。
撮影性能も高めています。肉眼ではほぼ真っ暗な状況でも位相差AFで確実なピント合わせができるようにしたほか、有機ELパネルを搭載する電子ビューファインダー(EVF)はフレーム間に黒を挿入することで表示の残像を低減しました。
「写真好きな人に長く愛用してもらえるカメラを目指した」というX-Pro3、10月26日(土)に東京・上野で開かれるファンミーティングイベント「FUJIFEST GLOCAL 2019,東京」にて、いち早く実機が試せます。X-Pro3のこだわりポイントが気になる人は、ぜひ足を運んでみてください。