シートは基本的にA350-900と同じ
先にも触れた通り、今回導入する787-8は国内専用の新仕様で、仕様名称はE21という。ちなみに、国際線仕様機にはE03、E11、E12の3種類がある。
E21はファーストクラス、クラスJ、普通席の3クラス構成で、使用しているシートは、先に運航を開始したA350-900と基本的に同じものだ。全席にAC電源とUSB電源、それと個人用画面を設置しているところも共通する。ただし、先の比較表でもおわかりの通り、機体の寸法(客室幅)に違いがあるので、まったくの同一仕様ではないようだ。
先の比較表に挙げたうち、客室幅がもっとも広いA350-900も、それよりいくらか狭い787-8も、普通席は3-3-3の9列配置である。そこで同じシートを使用したのでは、通路幅に影響が出てしまう。逆にクラスJは、A350-900は2-4-2の8列配置だが、787-8は2-3-2の7列配置。同じシートを使用していれば787-8のほうが余裕ができるはず。
そこで日本航空のプレスリリースにある数字を基に、A350-900と787-8のシートスペックを比較してみた。なお、シート幅とは肘掛けと肘掛けの間の幅である。
こうして見ると、普通席のシート幅は787-8のほうが心持ち狭く、クラスJのシート幅は787-8のほうが心持ち広い傾向にあるようだ。これで納得した。なお、787-8のファーストクラスでシートピッチの数字がないのは、そもそも1列しかなく前後間隔という概念がないからだ。
実は、同じクラスのシートでも機種や場所によって寸法に微妙な差異があるのは、今回の2機種に限った話ではない。日本航空の国際線エコノミークラス「SKY WIDER」でも、767と777と787ではシート幅が少しずつ違う。3機種とも利用したことがあるが、筆者は細身なので違いを実感できなかったけれど。
なお、767-300/300ERでは、普通席は2-3-2の7列配置、クラスJは2-2-2の6列配置、ファーストクラスは2-1-2の5列配置となっている。似たような定員だが、787のほうが胴体が太いので、こういう差異が生じる。
新仕様の客室を徹底チェック
ともあれ、多少の寸法の差異はあるにしても、基本的にA350-900と787-8の国内線仕様は同じシート。シートの写真をやたらと並べても、同じ話の繰り返しになってしまう。そこで、シートの話はサラッと流して、それ以外のところも見てみよう。
A350ファミリーにはない、787ファミリーの特徴として電子シェードがある。乗ったことがある方なら御存じの通り、窓の色が濃くなったり薄くなったりする仕組みで、個別制御も一斉制御も可能。国際線に乗っていると時間帯によっては、寝ている間に朝になって直射日光が射し込んできてしまい、それで起こされてしまうなんてこともあり得る。電子シェードなら一斉に暗くできるから、そんな悩みはなさそうだ。
この787-8国内線仕様、まず10月27日から羽田-伊丹線に、12月20日から羽田-福岡線にも就航する。その後は、ファーストクラスの設定がある他の路線にも運用が広がっていくのではないだろうか。といっても、後は羽田-新千歳線と羽田-那覇線しかないけれど。
著者プロフィール
井上孝司
鉄道・航空といった各種交通機関や軍事分野で、技術分野を中心とする著述活動を展開中のテクニカルライター。
マイクロソフト株式会社を経て1999年春に独立。『戦うコンピュータ(V)3』(潮書房光人社)のように情報通信技術を切口にする展開に加えて、さまざまな分野の記事を手掛ける。マイナビニュースに加えて『軍事研究』『丸』『Jwings』『航空ファン』『世界の艦船』『新幹線EX』などにも寄稿している。