10月15日、NAS製品メーカーであるSynology社のユーザーイベント「Synology 2020 Tokyo」が行われました。SynologyはNAS専業の会社で、個人向け製品だけでなく、最近は企業向け製品も業績を伸ばしています。

  • Synology 2020 Tokyo

Synology 2020 Tokyoの中心は企業向け製品でしたが、個人向け製品の展示や、NASを管理するソフトウェア「DiskStation Manager 7.0」(以下、DSM7.0)の変化とアプリケーションの説明がありました。

  • Synology Japan 代表取締役社長 蔡明宏氏

    Synology Japan 代表取締役社長 蔡明宏氏

  • SynologyのNASは10年間で700万台超を販売。管理OSのDSMはバージョンアップを繰り返し、1.5億ダウンロードに

  • 今後の方針として、DSM、対応アプリケーション、クラウド対応が挙げられます

2020年春に正式版が登場する予定のDSM7.0は、ユーザーエクスペリエンスを見直し、たとえばネットワーク越しにログインする時間が約1/4に短縮されるなど、スムースな動作に。また、外部からの安全なアクセスには暗号化通信が望ましいのですが、従来は設定にそれなりの手間がかかりました。DSM7.0では、アカウント取得と同時に、暗号化通信の証明書取得ができるようになるそうです。

  • Synology Japan テクニカルサポート部 内山裕子氏

  • DSMの変化の一例。ゼロから再設計することでUXの向上が図られ、ログイン時間は約1/4に

  • 外部からのアクセスを可能にするQuickConnect機能で安全な接続を行うためには、従来このような手間がかかっていましたが、DSM7.0ではワンステップで設定可能に

ほかにも、一般ユーザーにとって便利な機能アップがあります。SynologyのDSMは基本的なファイル管理のみ備えていますが、スマホのアプリ感覚で必要な機能を追加できます(自社製だけでなく、サードパーティのツールもあります)。

Synology製のNASで写真を管理するためには、Photo Station、momentsという2つのツールがありました。Photo Stationはフォルダ単位で写真を管理し、momentsはAIを利用した自動分類やタイムラインでより手軽に使えます。ただ、Photo Stationとmomentsは別々のツールであり、写真管理を統一するようなものではありません。

Photo Stationユーザーからはmomentsのような簡易な管理を、momentsユーザーからはPhoto Stationのような細かな管理を求める声が寄せられました。そこで、DSM7.0とともに登場する「Synology Photos」はこの2つを合体したツールとなり、フォルダ単位の管理や自動分類に対応します。

  • 従来の写真管理はPhoto StationとMomentsの2本立て

  • DSM7.0からは、Synology Photosとして一本化

大量の写真から目的の写真を見つけるためのフィルタも、場所や日付といった基本的な項目に加えて、カメラの種類や焦点距離なども使える点が特徴です。また、Synology Photosは従来のPhoto Station、momentsの後継になるため、Synology Photosに移行するときに、自動で従来の設定が引き継がれます。

  • Sylonogy Photosの画面。こちらは従来のPhoto Station的なフォルダ管理の画面

  • 右上のボタンを押すだけで、Moments的なタイムライン管理画面に変化

  • Momentsで使われていた絞り込みも健在。下の方にカメラという項目があるように、かなり細かな絞り込みも可能

  • 「一緒に旅行した仲間との写真共有フォルダ」のように、URLを知っている人だけアクセスできるフォルダも作れます。安全性を上げるために、アクセスの有効期限やパスワードロックにも対応

「1つの入り口からすべてのファイルにアクセス」という、Synologyの方針は変わっていません。今回、オンデマンド同期が「2.0」へと進化し、パソコンがマウントしたNASのファイル一覧を見ても、ファイルそのものは同期されません。パソコンからNAS上のファイルを開いたときだけ、ローカルにダウンロードされます。つまり、ローカルストレージを無駄に消費することがなくなりました。オンデマンド同期は従来、Windowsパソコンのみ利用可能でしたが、2.0になってMacでも使えるようになりました。

また、グループ旅行の写真をみんながSynology NASにアップロードするような使い方に対して、Synologyアカウントを作らなくても、ゲストでアップロード可能にするオプションが加わりました。セキュリティは有効期限やパスワードで対処します。

  • Synology Japan セールススペシャリスト 阿部光太郎氏

  • 普段は使わないファイルをNASに入れつつ、ファイル一覧などはそのまま見られるオンデマンド同期。「2.0」にバージョンアップして、より便利に

  • Windowsマシンに加えてMacにも対応

ざっと見てきたDSM7.0と対応アプリケーションですが、近日中にβテストを開始する予定です。なお、Synology Photoルーツに関しては、すべての機能が利用できるのは高機能なファイルシステムであるBtrfsが使える「上位のNASTY製品のみ」と説明がありました。

今回の説明では、一般ユーザー向けの売れ筋製品「jシリーズ」でSynology Photosが利用できるかできないか、また利用できる場合は制限があるのかなど、細かい情報がありませんでした。2020年2月末のカメライベント「CP+ 2020」までには、詳細な情報が出てくるのではないでしょうか。

  • 個人向けNASの「DS120j」(シングルドライブ)は、2019年10月発売予定。デュアルドライブの「DS220j」は2020年の発売予定

  • NASのイベントなのでストレージメーカーも参加。Western DigitalはHDDとSSDが中心でした

  • 製品一覧にない14TB製品も(発売日未定)

  • SeagateもHDDとSSDを展示。SSDはエンタープライズクラスのみ

  • 写真ではわかりにくいのですが、HDDヘッドを動かすアクチュエーターが二組あり、シークタイムを短縮する製品を現在評価中とのこと

  • crucialはSSDのみ展示。Synology NASにもSSDキャッシュ対応製品が用意あります