京成電鉄は10月26日にダイヤ改正を実施する。最大のポイントは、成田国際空港へのアクセスを担う全車座席指定の列車「スカイライナー」の増発だろう。日中を中心に40分間隔の運転となっている時間帯があったが、ダイヤ改正後はこれを解消。ほぼ終日にわたって20分間隔の運転とし、いつでも待たずに利用可能となるとうたう。運転本数は現行の上下計59本から23本増えて上下計82本、41往復となる。

  • 成田空港駅へ向かう「スカイライナー」。京成電鉄が10月26日に実施するダイヤ改正で大幅に増発され、20分間隔の運転を基本とするダイヤに

早朝の京成上野発成田空港行の始発列車は、現行の京成上野駅5時58分発から繰り上げて同駅5時40分発とし、成田空港駅には6時24分(土休日は6時26分)に到着する。これにより、おおむね7時30分以降に成田国際空港を出発する便に対応できるようになる。

成田空港発京成上野行の最終「スカイライナー」も、現行の成田空港駅22時30分発から23時20分発となり、50分繰り下げられる。10月末以降、成田国際空港の飛行時間制限が現在の23時までから0時までに延長されることへの対応となる。最終列車の繰下げにより、今後の拡充が予想される深夜時間帯の到着便からも乗継ぎを可能とする。

深夜時間帯は一般列車も増発し、空港従業員の帰宅の便を図る。京成電鉄は成田空港駅0時7分発(土休日は0時10分発)、宗吾参道行の普通を新設する。成田国際空港へのもうひとつの空港アクセス鉄道であるJR東日本も、10月27日から当分の間、臨時列車として成田空港駅23時45分発、千葉行の快速を運転する予定となっている。

  • 「スカイライナー」とともに成田空港アクセスを担うアクセス特急。一部に成田空港~羽田空港国内線ターミナル間を直通する列車もある

  • 成田国際空港からの深夜輸送を行うため、JR東日本の列車も増発

京成電鉄は「スカイライナー」を増発するため、最高運転速度160km/hのAE形(8両編成)1編成を新造・増備し、9月19日から営業運転に投入した。付帯費用を含めて、およそ20億円程度の投資が、この新製車に対して行われたと推測できる。

特急料金不要のアクセス特急に使用する新形式車両3100形(8両編成)も2編成新製される。その他、安全輸送対策などを含め、2019年度の京成電鉄の鉄道事業設備投資計画は総額227億円と公表されている。

■なぜ日中時間帯も「スカイライナー」を増発するのか

早朝・深夜時間帯における輸送力増強は、航空便の増便に伴う意味があり、当然といえる。その一方で、大規模な投資を行ってまで、日中時間帯の輸送力増強を行う意義は何なのだろうか。

「スカイライナー」の利用客自体は順調に伸びており、2017年度は554万4,000人に達している。前年度が501万8,000人であったから、約10.5%の増加である。

ライバルとなるJR東日本の特急「成田エクスプレス」は、路線網の広がりを活用し、東京駅のみならず渋谷駅、新宿駅、池袋駅、あるいは横浜方面などからも直通運転を行い、利用客の獲得を図っている。それに対し、京成電鉄の「スカイライナー」は都心側のターミナルが京成上野駅・日暮里駅のみで立地的にやや不利というハンデがありながらも、そのスピードを武器に健闘していると言えよう。

  • 京成電鉄「スカイライナー」のライバル、JR東日本の特急「成田エクスプレス」。運行範囲の広さが大きな武器といえる

ただし、「成田エクスプレス」がほぼ終日30分間隔の運転を確保している一方で、「スカイライナー」は日中に40分間隔の運転となる時間帯があり、頻度の面でやや見劣りしていたのも事実だ。「スカイライナー」なら40分あれば都心へ到達できるのに、乗車までに日中でも40分待たされてしまう。このギャップを埋めるための増発であるということが、まずひとつあるだろう。

さらに、これは空港アクセス鉄道の「宿命」のようなものだが、とくに国際線やLCCの場合、到着便の早着・遅延はごく当たり前にある。利用客にしてみれば、前もって「スカイライナー」や「成田エクスプレス」の特急券を確保していても、到着時刻が読めないのでは意味がない。事実、都心方面の特急券は大半が発車直前に購入されている。京成電鉄もJR東日本も、ウェブ利用のチケットレスサービスに力を入れている理由はそこにある。

  • 成田空港駅から成田スカイアクセスを経由し、都心へと向かう「スカイライナー」。とくに成田空港発の列車において、高頻度の運転が求められていた

鉄道輸送の面から言えば、定員いっぱいの200~300名程度を乗せた航空便がいつ到着してもいいように、列車を用意しておかなければならない。京成電鉄の「スカイライナー」車両AE形の定員は398名で、およそ飛行機2機分。駅でただじっと利用客が集まるのを待っているわけにもいかないから、とくに都心方面行の列車は乗車率の偏りにある程度目を瞑ってでも、短いサイクルで頻繁に運転を行い、アクセス手段を提供しなければならない。利用客にとって、運とタイミング次第で40分も待たされるのはたまったものではない。リムジンバスなど他の交通機関への逸走を招きかねない。それを防ぐための増発でもある。

■近距離の沿線住民の空港アクセス輸送にも配慮か

京成電鉄のダイヤ改正では、成田スカイアクセス経由の「スカイライナー」だけでなく、京成本線(京成船橋駅など経由)の成田空港アクセス輸送にも手が加えられる。

日中、都営浅草線から直通し、京成佐倉駅まで運転される快速はダイヤ改正後、一部を成田空港駅まで延長。その代わり、京成上野~成田空港間で毎時3本運転され、運賃の安さからLCC利用客を中心に人気がある特急(京成上野~成田空港間は「スカイライナー」の2,470円に対し、本線経由の特急は1,050円で済む)の一部が京成成田駅発着の快速特急に変更され、京成佐倉~京成成田間ノンストップの運転となる。停車駅の多い快速を成田空港駅へ乗り入れさせることで、千葉県下を中心とする京成沿線からの空港利用客の利便性を図った施策と見ることができよう。

  • 京成本線を走る京成上野発成田空港行の特急。10月26日のダイヤ改正で一部が快速特急に変更される

一方で、先代の「スカイライナー」車両AE100形が都営浅草線へ乗入れ可能な仕様となっていたように、何度も構想が浮かんでは消える成田空港~羽田空港間を京成線・都営浅草線・京急線経由で連絡する座席指定制列車については、東京国際空港(羽田空港)の国際便拡充もあり、現在は沙汰止みになっている感がある。都営浅草線から分岐線を建設し、JR東京駅に乗り入れる構想も、最近は進捗の話を聞かない。

京成電鉄としては、営業エリアの「面的な広がり」が当面期待できない以上、1978(昭和53)年の「スカイライナー」デビュー以来、地道に利用客数を伸ばしてきた東京都心対成田国際空港輸送を経営上の最重要課題のひとつとして、守り育てていかなければならない状況だろう。