東京・汐留の一角、イタリア街と呼ばれるオフィスエリアにて10月11日、コーヒースタンド「COMFORT STAND」がオープンした。三菱地所が展開するコンパクトオフィスCIRCLES汐留の1階という好立地。代々木上原で人気のビストロ「MAISON CINQUANTE CINQ」を展開するフランス料理人・丸山智博氏と、熊本で人気のスペシャリティコーヒー「AND COFFEE ROASTERS」のオーナー・山根洋輔氏によるコンフォート(comfort)なメニューが、ビジネスパーソンの注目を集めそうだ。
なぜオレンジジュース? どんな味?
そもそもはCIRCLESで働くワーカーズのために三菱地所が計画したコーヒー店の出店。その仕掛け人として、都内に人気フレンチ店などを続々とオープンさせているシェルシュ代表の丸山氏が選ばれた。そこで丸山氏は、自身もファンだという熊本の山根氏のコーヒーを軸に展開することを決める。
「大手コーヒーチェーン店とは違い、AND COFFEE ROASTERSでは豆の仕入れから焙煎まで、山根さんがこだわり抜いている。ご自身がルワンダに赴くなどして、豆を直接仕入れているんですね。そんな特別なコーヒーを、働く人のため、街の人のために提供したかった」(丸山氏)
実はコーヒーが特別であるのに加え、オレンジジュースにもこだわっている。丸山氏はコーヒーだけでなく、オレンジジュースも提供する理由について、次のように説明した。
「仕事で頻繁に訪れるパリで、カフェの朝食といえばクロワッサンやパン・オ・ショコラなどのペイストリー、そしてフレッシュオレンジジュースとコーヒーが定番。そこでワーカーが良い朝を迎えるため、これらのメニューを再現できる店舗づくりを目指しました」
コーヒー、オレンジジュースはどこでも飲めるドリンクだが、どこまでも深く掘り下げていくことができる、と丸山氏は話す。
「COMFORT STANDは、個人のオーナーがやっているような店舗にしていきたい。これは便利になりすぎた世の中に対する、自分なりのカウンターカルチャーでもあります。例えばコーヒーなら湿度、気温、豆の状態など、その日その日で挽き方を変え、マシンの調整を変える。オレンジジュースにしても同様です」
計画は1年くらい前に立ち上がり、そこからコンセプトを考案、年明けから具体的に動き出したが、その間もずっとオレンジジュースの生産者となる農家を探し続けてきたという。
「柑橘類の旬は短いんです。蜜柑、ポン柑、伊予柑、ネーブル、ブラッドオレンジなど、それぞれに最も美味しい季節がある。そんな旬を逃さずに仕入れていきます。いま店舗でお出しできるのは、ネーブルをベースにして愛媛の早摘み蜜柑をブレンドさせ、熊本で採れたすだちの皮で香りをつけたオレンジジュース。1週間後には、別のブレンドになっているかも知れません」
チェーン店のようにレシピ化できず、そこに難しさがあるとしつつも「丸山なら、どんなオレンジジュースを出すだろうか」というお客さんの期待に応えていきたいんです、と笑顔を見せる。
「生産者から直接、旬の食材を仕入れ、店舗で売り上げたお金でまた、生産者から食材を仕入れていきます。そのとき『美味しかったよ』なんて喜びの声を伝える。こうした循環を大切にしていきたいんです」と丸山氏。
来店客と寄り添うだけでなく、生産者とも寄り添う。そんな気持ちがコンフォート(安心、快適)というキーワードに込められている。気になるのは他エリアへの出店計画だ。三菱地所では今後5年間で、都内に30棟あまりのCIRCLESを展開していくとしている。丸山氏は「条件が合えば、そちらにCOMFORT STANDを展開する可能性もありえます」と話していた。