季節もすっかり秋に変わりそろそろ衣替えのシーズンですが、ことスーツに関しては、クリーニングに出して春夏物から秋冬物に入れ替えるだけで、ケアが十分とは言えません。スーツを長く着るために必要な、衣替えの方法とは? 青山商事第一商品部レディス商品企画グループの髙井さや・チーフに聞きました。

  • スカーフを合わせてスーツをおしゃれに着こなしている、青山商事第一商品部レディス商品企画グループの高井さや・チーフ

    スカーフを合わせてスーツをおしゃれに着こなしている、青山商事第一商品部レディス商品企画グループの髙井さや・チーフ

春夏スーツは汗汚れに注意!

――春夏スーツを収納する際には、どんなことに気を付けたらいいですか?

春夏のスーツは秋冬のスーツに比べて生地が薄いので、汗を吸いやすく、シミになりやすい傾向があります。また特に夏物は、シャリ感があり、肌触りがさらっとしている生地を使っているケースも多いのですが、こういった生地は表面がデコボコしているので、汚れもつきやすいです。

このまま放置しておくと、においや汚れの原因になってしまいます。

――ドライクリーニングに出してケアしておけば大丈夫ですか?

汗は水溶性の汚れになるので、油性の汚れを落としてくれる一般的なドライクリーニングでは、汚れが落ちにくいと思います。そこで、水を使って洗浄するウェットクリーニングがオススメですね。皮脂汚れにプラスして汗汚れも取ってくれますよ。

――UVカットや消臭機能などの加工がされているスーツのケアで、気を付けることはありますか?

他の一般的なスーツでも言えることですが、クリーニングに出すとその分生地はダメージを受けます。ですから、クリーニングの頻度を上げると、生地がいたむのと同時にこれらの効果も薄れていってしまいます。あまり頻繁にクリーニングに出しすぎないように気を付けましょう。

  • ウェットクリーニングの利用も検討してみよう(画像はイメージ)

    ウェットクリーニングの利用も検討してみよう(画像はイメージ)

シャツの替え時は〇〇で決める

――衣替えは、春夏シーズンに着たシャツを処分するタイミングでもあると思うのですが、一般的にシャツの寿命はどれくらいなんでしょうか?

着数や着用頻度によっても変わってきますが、例えば6~7枚を毎日着まわしていた場合、平均2年はもつのではないかと思います。

――シャツの買い替えを判断するポイントはありますか?

襟の部分のハリが無くなってきたり、汚れが落ちにくくなったりした場合には、2年たっていなくても、替えた方がいいのではないでしょうか。シャツは襟が一番見られる部分なので、そこがピシっとしていないとかっこ悪いですよね。

あとは、袖や裾がよれていたり、手首の部分が黄ばんでいたり、ボタンが外れていたり、他人から見たときにかっこ悪いと思われそうな点があれば、寿命です。

お気に入りのシャツだったり、持っている着数が少なかったりすると、自分では「まだまだ着られる」と判断しがちです。身内や仲の良い方に判断を委ねて、「まだ着られるかな? 大丈夫かな??」と聞いてみるのも手だと思いますよ。

また、シャツだけでなく、このタイミングにネクタイのチェックをしてみてもいいですね。意外と汚れやにおいが付きやすいので、気になるようであれば、スーツと一緒にドライクリーニングに出しましょう。

  • 衣替えに合わせて、シャツの黄ばみ、汚れ、シワのチェックを(画像はイメージ)

    衣替えに合わせて、シャツの黄ばみ、汚れ、シワのチェックを(画像はイメージ)

スーツを収納する前にやっておくべきこと

――クリーニングから戻ってきたスーツをクローゼットに収納する際に、気を付けたいポイントがあれば教えてください

クリーニングから戻ってきたスーツは、袋を付けたままだと湿気やにおいがこもってしまいます。袋を取り外し、風通しが良いところで乾かして、湿気や溶剤のにおいを完全に飛ばしてからクローゼットに収納しましょう。

そして収納する前に、クローゼットの中の環境を整えておくと安心です。クローゼットの中は、湿気がこもったり、ホコリがたまったりしがちです。衣替えのタイミングで、除湿剤を入れ替え、掃除をしておくと、スーツがより長持ちする保管環境を作れますよ。

秋冬のスーツを着る前にしておきたいこと

――いよいよ秋冬のスーツを出そうというときに、やっておきたいことはありますか?

着用する前に、カビがないか、においがないか、虫食いがないか、確認するのが一番大事なのですが、スーツの汚れって実は裏側に付きやすいんです。表地を確認した後に、裏返して裏地も確認し、そのままハンガーにかけて干してあげるとベストです。

――裏返して干すんですね!

裏地は湿気がこもりやすいので、裏返したままがいいですね。通気性の良い室内で一日陰干しをしておきましょう。

また第二段階として、しまっている間についたシワをスチームアイロンで取りましょう。秋冬のスーツは、ウール素材を使っているものが多いと思います。ウールは呼吸する繊維といわれていて、湿気を吸って・吐いてを繰り返しています。

スチームアイロンをあてると、蒸気を吸って、自然にのびてくれます。殺菌効果もあるのでにおいも取れますし、新品みたいにパキッとした仕上がりになるので、新たな気持ちで秋冬シーズンのスタートを切れると思いますよ。

――そういったひと手間がポイントなんですね

パンツの中央に入った線(クリースライン)が取れていたら、アイロンで伸ばしておくと、さらに新品のような仕上がりになります。

そして、洋服ブラシでスーツをブラッシングしましょう。収納している間に倒れてしまった生地の毛羽を立てることで、光沢が出ます。これが最後の仕上げです。

  • 洋服ブラシ(右)を活用しよう。スーツを収納する際は、防虫カバー(左)を使うなど、虫食い対策も忘れずに

    洋服ブラシ(右)を活用しよう。スーツを収納する際は、防虫カバー(左)を使うなど、虫食い対策も忘れずに

今年の秋冬は「レトロ」がトレンド、おしゃれに着こなして

――最後に、衣替えに合わせて買い足しておきたいビジネスウェアがあれば、教えてください

春夏と秋冬では、スーツの生地が変わります。スーツの生地感に合わせたコーディネートができる、インナーやシャツをそろえられるといいですね。

また1年の中でも、秋は降水量が多い時期。スーツの素材も秋冬は湿気を吸いやすいウールが多くなっているので、雨対策が大事です。突然の雨や雪に備えて、防水グッズやレインシューズをそろえておくと、安心です。

――今年の秋冬はどんな商品をそろえておくと、トレンド感が出せますか?

まずレディスですが、弊社の場合、70年代レトロをテーマにしたカラーコーディネートを提案しています。黒に赤の差し色を使った大人な組み合わせや、ブラウンとグリーンを合わせたクールな着こなし、それに青とロイヤルブルーといったように、同じ色味を組み合わせるのもオススメです。

メンズはここ4~5年、体にフィットする細身のスーツが流行していましたが、例えばノータックではなくて、ツータックのパンツが店頭に並びだしたり、ダブルジャケットの種類が増えたりと、ゆったりとしたシルエットに変わってきています。

メンズもレディスもクラシック回帰が見られて、ゆったりとしたサイズが流行しているので、取り入れてみるとトレンド感を演出できると思います。

また近年、スーツは着心地の良さや動きやすさが求められています。弊社もスポーツブランドのデサントとタッグを組んで、動きやすいストレッチのきいた素材を使った商品を展開していますが、こういった機能性を意識してスーツを選んでみるのもいいかもしれません。