「気づいたら、もう3日出ていない」「いつもお腹が張ってつらい」……。食物繊維の多い食品を食べたり、たくさん水を飲んだり、気を使っているつもりなのになかなか便秘が解消されない――。こういった声は特に女性から聞かれることが多い。
運動やお腹のマッサージがいいなどといった話も耳にするが、いったいどの方法が効くのだろうか。しつこい便秘を改善する正しい方法について、消化器科 消化器外科 外科医の小林奈々医師にうかがった。
医学的な便秘の定義
小林医師によると、慢性便秘症診療ガイドラインでは便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されており、その特性は器質性と機能性に分類されるという。
「器質性は腸自体に問題があることであり、機能性は腸の動きに問題があることを示します。さらに器質性は『狭窄性』と『非狭窄性』に分けられます。つまり腸が狭くなっているか否かで分類するのです。また、非狭窄性と機能性は症状により『排便回数減少型』と『排便困難型』に分かれています」
病院やクリニックでは、患者の便秘がどの種類に当てはまるかを考えて適宜検査を行い、治療をしていくことになる。
便秘による主な症状
便秘によって起こる主な症状は以下の通り。
■下腹部不快感、腹痛、腹部膨満、排便困難、吐気、嘔吐、残便感、食欲不振、肌荒れ、イライラ、不眠、頭痛、肩こり、めまい、口臭、痔など(※症状は個人差があり、本人の訴えで判断していく)
「便秘によって下痢の症状を訴える人もいます。便秘が直腸に刺激を伝え、下痢を誘発するからです。この現象は『隠れ便秘』とも言われております」
便秘解消に役立つ食材
実にさまざまな症状を呈する便秘。長年にわたり苦しんでいる人は、毎日の食事を工夫してお通じの改善を図っているだろうが、便秘解消につながる食事とはどのようなものだろうか。小林医師にうかがったところ、やはり食物繊維の摂取が重要だと指摘してくれた。
「食材としては食物繊維を多く含むものを食べるようにしましょう。水溶性食物繊維と不溶性食物繊維を摂ることが大事ですが、摂りすぎると下痢や便秘を促すこともあるので注意してください」
水溶性食物繊維を含む食べ物……昆布、わかめ、こんにゃく、フルーツ、里芋、大麦、オーツ麦など
不溶性食物繊維を含む食べ物……穀物、野菜、豆類、キノコ類、フルーツ、海藻など
便秘を寄せ付けないような健康的な腸を保つためには、「プロバイオティクス」と「プレバイオティクス」が重要となる。プロバイオティクスとは、生きたまま腸に届いて人体に好影響を及ぼす生きた微生物やそれらを含む食品のことを指す。代表例で言うと、乳酸菌やビフィズス菌だ。一方のプレバイオティクスは、ビフィズス菌のエサになるもので、食物繊維やオリゴ糖などが該当する。
「腸内環境を整えるために乳酸菌やビフィズス菌、これらに関与する納豆、ぬか漬け、キムチ、さらには菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖をバランスよく摂(と)ることが大切です」
便秘の治療法
食事で改善が図れなければ、治療を施すことになる。「治療法は予防法にもつながります。治療は薬だけではありません」と話す小林医師によると、便秘を解消する主な方法には以下のようなものがあるとのこと。
・水分をしっかり摂る
便を軟らかくすることが排便のしやすさにつながる。
・食生活も含め生活習慣を見直す
上記の食べ物を積極的にバランスよく取り入れ、一日3食摂ることが大切。ダイエットをして食事量や脂肪分を減らすと便秘になる場合がある。そして睡眠時間をしっかりと取り、ストレスを溜めないことで腸も動きやすくなる。
・排便時間をしっかりと取る
ゆっくりと排便ができるように時間を確保しておくことが重要。短時間で出そうとして無理にイキむと身体に負担がかかるし、痔の原因にもなる。
・生活リズムを整える
自律神経を整えることにもつながり、腸の動きを整えることを助ける。排便時間を決めることも習慣づけとしてよい。
・落ち着いて排便できる環境を整える
便意を感じたらトイレに行ける状態にしておくように。我慢していると腸の動きが悪くなり、便意を感じにくくなるケースもある。
・運動を取り入れる
適当な運動は腸の動きを促す。お腹の刺激にもなるので、非常に効果的。
・薬を使用する
整腸剤、緩下剤、刺激剤などのほか、漢方を使用する場合もある。薬の長期服用は逆効果になる場合がある。使っている薬が便秘を促す事例もあるので、まず医療機関に相談するのがオススメ。
・摘便、浣腸
便を指で掻き出す摘便や、直腸に薬液を入れて物理的な刺激を与え、腸を動かし排便を促す浣腸を行うこともある。
「慢性便秘で腸に穴が開いてしまった患者さんもいらっしゃいます。便秘はあなどれません。また、何か病気が隠されている場合もありますので、便秘だからといって放っておかずに、積極的に医療機関を受診してください」
便秘というと、人に話すのは恥ずかしいと思うかもしれないが、安易に自己判断せず、早めに専門家に診てもらうのがいいだろう。
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