国土交通省は、猛暑時の停電による駅間停車への対応を検討するため、首都圏の鉄道事業者を集めた緊急の会議を行い、この会議における情報共有・意見交換等を踏まえ、その対応の考え方を取りまとめた。
2018年6月に発生した大阪北部地震では、多数の列車が駅間停車し、乗客の救済に時間を要したことが課題となった。国土交通省では3大都市圏の鉄道事業者が参加した連絡会議を開催し、駅間停車列車における乗客の早期救済等に関する取組みの対応例を2018年11月に取りまとめ、鉄道事業者はこれを踏まえ、各種取組みを行っている。
一方、2019年8月6日に京成電鉄で発生した猛暑時の停電による駅間停車では、空調の停止によって一部の乗客が熱中症となり、病院に搬送される事態となった。このような事態は電化区間の路線のどこでも起こりうるものであり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり、国土交通省は猛暑時の停電による駅間停車への対応を検討するため、首都圏の鉄道事業者を集めた緊急の会議を実施。この会議における情報共有・意見交換等を踏まえ、その対応の考え方を取りまとめた。
対応の考え方としては、「乗客救済の早期判断」「乗客の早期救済(対応策の例)」「車内の温度上昇の抑制(対応策の例)」「その他」の4項目に分類されてる。
「乗客救済の早期判断」は、復旧に要する時間の見通しや列車内の状況を総合的に勘案した乗客の車外への救済の必要性の判断をより迅速に行うこととした。復旧見通しがつく以前に乗客の救済を開始する判断を行った場合、乗客の救済作業を優先するために運転再開が遅れることなどが想定されるが、乗客の安全を最優先する観点からやむをえないことであると考える。
「乗客の早期救済(対応策の例)」では、降車用の梯子などを適切に配備し、救済に迅速に向かうための自転車等を駅に配備することが必要としている。消防・警察等の関係機関との連絡体制を再確認し、早期の降車・誘導への支援が得られる体制を整えることも必要と考える。「車内の温度上昇の抑制(対応策の例)」では、車両の新造等の際、窓の開く構造、ブラインドの設置、赤外線を遮断するガラスの使用等の対応が考えられる。
「その他」では、とくに鉄道の電気設備について、部品点数が多く二重系が困難等の構造的な特性もあり、リスクの極小化にも限界があると考えられるため、乗客による降車の協力、乗客同士の助け合いなど乗客による自助・共助の対応にも期待すると考える。