JR東海浜松工場「新幹線なるほど発見デー」が5日から始まり、前頭部に特別な装飾を施した700系をはじめ、N700S確認試験車や「ドクターイエロー」などが展示された。同社の700系は2020年春の引退が予定されている。
東海道新幹線の検査・整備を行う浜松工場を一般公開する「新幹線なるほど発見デー」は毎年開催され、車両展示の他に運転台見学、車掌体験、パーサーお仕事体験、新幹線車内清掃体験、こども制服記念撮影など、さまざまなイベント(一部は事前申込制)が用意されている。東京駅から浜松工場へ直接入場できる団体専用臨時列車は今年も運転され、N700Aが「東海道新幹線唯一の踏切」を通過する様子も見学できた。
会場では、昨年に続いてN700S確認試験車や「ドクターイエロー」などを展示。「ドクターイエロー」の車内見学はツアー形式の「ガイド編」、架線を確認する観測ドームを見学する「観測ドーム編」に分けて行われたという。展示車両の中でも最も注目を集めたのが、来年春に引退を迎える予定の700系。16両のC50編成と、先頭部に「ありがとう」の特別装飾を施した先頭車1両(C49編成)が会場に展示された。
「ありがとう700系! 記念撮影&課外授業」と題した事前申込制のイベントも実施。参加者たちはC50編成の車内にて、新幹線乗務員から700系に関する授業を受けた。
進行を担当した運転士は、JR東海が保有する700系に関して、「1999年3月のダイヤ改正でデビューし、今年で20歳。(JR東海では)60編成を導入しましたが、いまはわずか4編成しか残っていない状態です。そのうちの1本が、いま乗車されているC50編成。こちらも残念ながら10月で廃車になります」と説明。東海道新幹線では現在、計3本の「こだま」で700系による定期運用が行われているが、「この3本も12月で運用が終わってしまいます。最終的に2020年3月、ダイヤ改正前には東海道新幹線で700系に乗れなくなります」とのことだった。
続いて700系に関するクイズが出題された。「700系16両編成の座席数は全部で何席?」との問題では、運転士から「皆さんがいま乗っている5号車は90席」とヒントが出たものの、参加者たちには難しかった様子。すると運転士は、次のヒントとして「せん…さんびゃく…にじゅう……にたすいち!」と発言。ほぼ正解を言っている状況に、参加者たちから笑いが起きていた(東海道新幹線の座席数は16両編成で1,323席)。
「700系は16年前、車体側面にアルファベットの文字が入りました。その文字は何でしょう?」との問題では、運転士の「『●●● JAPAN』でした」とのヒントを受け、マイクを向けられた男性が「X」と発言。「エックスジャパン! 惜しいですね~」と運転士も苦笑いだった。正解は「AMBITIOUS JAPAN(アンビシャス・ジャパン)」で、2003年の品川駅開業に合わせて登場。車体側面のロゴマークなどを除き、東海道新幹線でこのような装飾は珍しいが、300系の引退時にも車体装飾を行っており、700系の引退に向けて「なにか入れてほしいですね……」と運転士は話していた。
参加者からの質問タイムも設けられた。「運転士の仕事で大変だと思うことは?」と聞かれ、運転士は「台風や大雨で遅れることがあると、臨機応変な対応が求められるので大変です」とコメント。「新幹線の運転士になるには、在来線の運転士を経験する必要があるのでしょうか?」との質問には、「在来線の運転士にも専用の免許資格があり、新幹線の免許を持っていても在来線の運転はできません。逆に在来線の免許を持っていても新幹線の運転はできないので、別物という感じですね」と答えた。
新幹線の運転士をめざすこどもたちに向け、現役の運転士から「いまのうちに算数をしっかり勉強しましょう」とアドバイスも。「新大阪から東京までの間、ずっと速度の計算をしながら運転するので」と理由を説明し、「早く計算できるように、算盤を習うのもいいと思います」とのことだった。課外授業の最後は、参加者たちが700系のペーパークラフトを制作。その後、特別装飾を施した700系の前で記念撮影を行った。
「新幹線なるほど発見デー」では、他にも保守用車両の展示・実演やトラバーサ乗車体験などを実施。先頭車研ぎロボットの実演も多くの来場者が集まり、盛況だった。今年は2日間の開催となったこともあり、昨年ほどの混雑は見られず、来場者たちは余裕をもって見学できていた様子。ただし、この日は快晴で日中の気温が30度前後あり、会場内には日陰となる場所が少ないため、熱中症に注意する必要がある。イベント開催中、こまめな水分補給を呼びかけるアナウンスが頻繁に行われていた。
JR東海浜松工場「新幹線なるほど発見デー」は10月6日も開催され、開場時間は10~15時(最終入場受付14時30分)。入場料は無料。浜松駅付近の2カ所(アクトシティ前、遠鉄百貨店前)から無料シャトルバスが運行され、所要時間は約20分だが、時間帯により乗車まで時間を要する場合や、道路状況により所要時間が変わる場合がある。会場に駐車場・駐輪場がないため、車やバイク、自転車での来場は不可とされている。