9月25日、26日に東京都千代田区「都市センターホテル」で第60期王位戦七番勝負第7局、豊島将之王位―木村一基九段戦が行われました。
百折不撓、7度目の挑戦で悲願果たす―第60期王位戦七番勝負第7局
25日、振り駒で先手番を得た豊島王位が得意の角換わりに誘導すると、木村九段も堂々と受けて立ちます。最新形の変化から豊島王位が新手を出し、戦いに入ったあたりで1日目が終了しました。
26日、一夜明けて2日目。本格的な戦いに突入し、優劣不明の難解な局面が続きます。攻めるべきか、受けるべきか――。そんな終盤の難所で、「千駄ヶ谷の受け師」の異名を持つ木村九段が「攻め」を選びます。これが自玉の危険度を見切った好判断で、木村九段ならではの踏み込みでした。
優勢になった木村九段は着実に先手玉を追いつめ、18時44分、110手で勝利。これでシリーズ対戦成績を4勝3敗として、初タイトルとなる王位を獲得しました。
「百折不撓」。これは木村新王位が座右の銘にしている言葉で、「何度失敗して挫折感を味わっても、くじけずに立ち上がること」という意味です。木村新王位にとってはこれが7度のタイトル挑戦で、あと1局勝てばというところで何度も負けた挫折を乗り越えての初タイトルでした。46歳での初タイトル獲得は、これまでの37歳を大幅に更新する最年長記録です。
終局直後のインタビューでは、「今日はうまく指せたと思います」、「うれしいです」と素朴な感想を述べ、その後「前回の王位戦のとき(2016年の第57期王位戦七番勝負)、これが最後のチャンスだという気持ちで戦っていました。もうタイトルには縁がないものだと思っていたので……。(結果を出せたのは)なぜかは分かりませんが、一生懸命、無我夢中でやった結果だと思います」と喜びを語りました。
これで「豊島―木村、真夏の十番勝負」は5勝5敗、竜王戦の挑戦権は豊島、王位のタイトルは木村という結果になりました。豊島名人は一冠に後退しましたが、すぐに第32期竜王戦七番勝負が10月11日から始まります。