育児休業から復職した際に利用できる、育児短時間勤務(時短勤務)制度。勤務時間が短い中で、ときに「もう少しだけ仕事がしたい」「職場の繁忙期をサポートしたい」という思いを持つこともあるかもしれません。しかし法律上、会社は時短勤務利用者に、残業をさせることができるのでしょうか?
今回は、時短勤務中の残業について法的な観点から、解説していきたいと思います。
育児短時間勤務制度とは
育児短時間勤務(時短勤務)制度とは、1日の所定労働時間を「原則6時間」とする制度です。
これは「労働基準法」ではなく、「育児・介護休業法」という法律に定められています。この制度は、会社の規模に関わらず必ず設けなければならない制度で、一定の要件を満たした労働者は、子どもが3歳になるまで利用することができます。
時短勤務中なのに残業はできる?
結論から言うと、会社が時短勤務中(=子どもが3歳までの間)の社員に残業をさせることについて、問題はありません。ただし本人が会社に対して請求した場合、会社は残業をさせることができなくなります。
育児介護休業法には「3歳に満たない子を養育する労働者が子を養育するために請求した場合には、 事業主は所定労働時間(原則6時間)を超えて労働させてはならない」とあります。
つまり子どもが3歳未満の場合、働くお母さん、お父さんが「残業出来ません」と会社に請求をすれば、残業はしなくていい、出来なくなるということです。
したがって時短勤務中(=子どもが3歳までの間)に残業免除の請求をしたにも関わらず、残業命令がされた場合は違法になるということです。
これはあくまでも「労働者が請求した場合」に限られますので、保育園のお迎え時間が決まっていて、残業が出来ない事情等がある場合には、必ず「残業免除の請求」を会社に対して行いましょう。
時短勤務中に残業した場合、給料はどうなる?
残業した分は当然給与として支給されます。しかし、いわゆる2割5分増しの割増賃金が支払われるかどうかは会社の規定の仕方により異なります。
時間外労働(残業)には大きく分けて2種類あります。「法定内時間外労働」と「法定外時間外労働」の2種類です。
「法定内時間外労働」とは、所定労働時間(ここでは6時間)を超えた8時間以内の時間外労働を指します。一方、「法定外時間外労働」とは、労働基準法で定められている1日8時間、または週40時間を超えて働くことを指します。
労働基準法では、あくまでも法定外時間外労働についてのみ25%の割増賃金の支払いを義務付けており、法定内時間外労働に対する割増しについては会社の任意となっているわけです。
例えば、1日6時間の時短勤務者が1時間だけ残業した場合は、残業時間を足しても7時間なので法定労働時間に収まります。この1時間に対して、法的には割増賃金の支払いは必要ないということです。なお、労働基準法はあくまでも最低基準であり、法律を上回る割増賃金を設定している会社もありますので、一度自分の会社の就業規則を確認してみましょう。
ここで、法定内時間外労働として1時間残業した分のお給料はどうなるのか、疑問を持つ方も多いと思います。
この答えとしては、「割増賃金の支払いはされないが、時間単価で計算した1時間あたりの賃金は支払われる」ということになります。
例えば給与を24万円/月もらっていて、時短勤務で120時間/月(6時間×20日)働いている人の場合、時間単価は「2000円」(24万円÷120時間)となります。このケースでは、1時間残業をすることによって2000円が24万円に上乗せされるということになるのです。
まとめ
子どもが生まれると、どのような働き方が自分に合っているのか、考える機会も増えると思います。働き方の選択肢の一つとして、時短勤務制度をうまく活用し、仕事と家庭を上手に両立できるといいですね。