JR東日本は26日、東京駅でテロ対応実動訓練を実施した。総武地下4階コンコースで爆破テロが発生したという想定で、駅係員による初動対応訓練や避難誘導訓練、丸の内中央口(改札外)での応急救護訓練などが公開された。
同社は毎年、駅構内でのテロ発生時における避難誘導や応急救護を目的に、東京駅と東京医科歯科大学の医療連携にもとづくトリアージ訓練等を行っているという。今回の訓練はJR東日本と東京医科歯科大学医学部附属病院、丸の内警察署、丸の内消防署、セントラル警備保障の協力により行われた。
訓練は成田空港駅発着の列車も使用する総武線地下ホーム(地下5階)の上階で、10時頃に「爆破テロが発生し、爆破による怪我人は約30名、爆破箇所付近では煙が充満している(火災発生はなし)」との想定で行われた。「軽傷」「パニック 発作」「足に破片が刺さった」「左下肢切断」などのビブスを着用した負傷者役の社員たちが「痛いよ」「助けて」と声を上げる中、駅係員が駆けつけ、被害状況を確認して関係箇所へ連絡。続いて地上への避難誘導を行い、「外国人」(のビブスを着用した社員)の助けも借りながら被害者を抱え、地上へつながる特別避難階段へ誘導した。
地上では、丸の内中央口付近に現地対策本部が設置されていた。駅係員は被害者に応急手当てを行い、重傷者に対してターニケットによる圧迫止血も実施。消防や病院との連携によるトリアージ(負傷者を傷病の緊急度・重症度に応じて分類し、治療や搬送の優先順位を決定すること)をはじめ、重傷者を救急車へ搬送する訓練も行った。負傷者役の社員から「救急隊! 早く運んでくれよ」「何分待たせるんだよ」といった声も聞かれる状況の中、救急隊員や駅係員が、「順番に対応しますのでお待ちください」「あともう少しです。がんばってください」などと声をかける場面も見られた。
今回の訓練は、現在開催中のラグビーワールドカップ2019日本大会に続き、来年も国際的なスポーツイベントである東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されること、10月以降に皇室関連行事が多く予定されていることを踏まえ、東京駅がテロの標的になりやすい場所のひとつであるとの認識から実施されたという。
「発災後、警察・消防が現場に臨場するまで、駅社員は何をすべきか。発災時の初動対応と情報共有、お客様の避難誘導、応急救護、警察・消防との連携、この4段階で訓練を行いました」とJR東日本総務・法務戦略部危機管理室長の石田昌也氏は言う。東京オリンピック・パラリンピックに向けて、「開催まで300日余り。鉄道を安全かつ安心してご利用いただくために、今回のような取組みを今後も続けたい」と語った。
テロ対応実動訓練は1時間ほどで終了。閉会式では東京医科歯科大学医学部附属病院の副院長・救命救急センター長、大友康裕氏が講評を行い、「実効性の高い、大変良い訓練だったと思います。テロのような非人道的行為は本来、あってはならないこと。それでも万が一の場合に備え、今日の訓練を通して、東京駅職員の皆さんが適切な行動を取っていただけると確信しています」と述べた。
JR東日本常務執行役員東京駅長の小池邦彦氏も挨拶し、「これからも細かな部分を練り上げ、お客様に安全・安心を提供できる東京駅にしたい。駅全体でも防犯カメラや警備員を増やし、防護用具を設置するなど対策を行っていますが、警察・消防や東京医科歯科大学の皆さんとの連携もやはり大事。今日の訓練を契機に、安全・安心をさらに高めていけたら」と話した。