シャープは9月25日、2019年秋冬モデルのスマートフォンの新製品「AQUOS zero2」「AQUOS sense3」「AQUOS sense3 plus」を発表しました。価格はオープンで、それぞれ現行機種と同等の価格帯になりそうです。フラッグシップのAQUOS zero2が明確にターゲットとしているのは「ゲーマー層」。そこには、シャープのどんな狙いがあるのでしょうか?

  • シャープが、2019年秋冬モデルのスマートフォン「AQUOS zero2」「AQUOS sense3」「AQUOS sense3 plus」を発表しました

「なんとなくハイエンドスマホ」の終焉

「AQUOS zero2」は、2018年12月にソフトバンクから発売され、2019年4月にSIMフリーモデルも発売した「AQUOS zero」の後継機。価格はオープンですが、実売10万円弱という価格帯を引き継ぐものと見られます。その特徴について、通信事業本部の小林繁氏が現行機種zeroとの比較を交えながら説明しました。

  • フラッグシップとなる「AQUOS zero2」。発表会場には開発中の実機が展示されていました。発売時期は今冬になります

  • 6.4インチのシャープ製OLEDパネルを搭載。このパネルにさまざまな工夫が凝らされています

zeroは、AQUOS初のシャープ製OLED(有機EL)搭載、世界最軽量といった特徴がユーザーに支持されたモデル。その進化形が、今回発表したzero2となります。画面のインチ数は6.2インチから6.4インチに大きくなり、重量は146gから143gへと軽量化されました。AQUOS初となる画面内指紋センサーも搭載する予定です。

  • 背面カメラは標準と広角の2眼に。重量は143gで、世界最軽量を更新しました(6インチ以上の画面サイズで3000mAh以上の防水スマホにおいて)

  • カメラ部分の出っ張りも最小限に抑えられています

シャープでは、zero2をゲーミングスマホとして訴求していきたい考えです。キャッチフレーズは『超軽量そしてパワフル。みんなが遊べるゲーム系フラッグシップ』。そこで強みとなるのは、液晶よりも反応速度が速いOLEDディスプレイにありました。

zero2が搭載する超高速駆動OLEDは、240Hzの画面更新が可能なのが特徴。フレーム数が増えるため画面表示は滑らかになり、またタッチ検出の頻度が増えるため反応も素早くなるとしています。「ゲームにおいて、ギリギリの勝負を分けるのが表示速度とタッチ速度の速さ。zero2では4倍速表示+4倍速タッチでゲーム体験をサポートします」と小林氏。

  • ゲーミングスマホとして、あらゆるゲームタイトルの操作性を向上させるべく改良を施しました

  • シャープ通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏

人間の目の問題として「網膜残像効果」があると小林氏は語ります。簡単に説明すると、素早く変化する画面を見ていると、現在見ている絵と直前に見ていた絵が混ざってしまうのだそう。これを軽減するため、zero2では毎秒120回の表示更新に連動して、1コマごとに黒い画面を挿入することで、画面の遷移がより鮮明に感じられるようにしたと説明します。このほか、ゲームをしているとスマホが熱くなることがありますが、放熱設計なども工夫されているとのこと。なんというゲームへのこだわりでしょうか。

  • 毎秒120回の表示更新に連動して黒い画面を挿入しています

  • 基板を小型化して本体を軽量化したことで、長時間のゲームプレイでも腕が疲れません。放熱設計も工夫しています

小林氏のプレゼンで印象的だったのは、「なんとなくハイエンドスマホ」の終焉がやがて来る、という言葉でした。そのココロは何なのでしょうか? 

同社では今後、消費者がスマホを購入する際の判断基準が2つに分かれると見ています。ひとつは「明確な目的があり、強い意志を持ってこだわりのフラッグシップを購入する」、そしてもうひとつは「失敗のない賢い選択をしたくて価値あるパフォーマンス機を購入する」。そこで、ハイエンドスマホを購入する層の目的のひとつを「ゲーム利用」と定め、ゲーミングスマホに特化したわけです。

  • 「なんとなくハイエンドスマホ」の終焉が来ると語る小林氏

  • AQUOS zero2では、ゲーマーのうちライト層とガチ層の間にあたる「エンジョイ層」(スペックの高いゲームをカジュアルに楽しむ層)の取り込みを狙います

  • AQUOS zero2のスペック表

市場の変化はシャープにとってチャンスか

いま、スマホ市場の競争環境は激しく変化しています。総務省の指導もあり、今後は、スマートフォンの販売価格が明確になり、消費者もスマホごとの価格差を意識するようになることが予想されます。このことについて、通信事業本部の中野吉朗氏は「従来は端末の購入補助によって、ハイエンド機でも買いやすい状況となっていました。いってみれば、スマホ市場全体が『お求めやすいハイエンド機』で形成されてきた背景があります。でも、端末の購入補助がなくなると、スマホによっては価格が上昇したように見えるケースもあるでしょう。シャープは幅広いラインアップを用意して、お客様とのコミュニケーションを活性化していきたい」と説明しています。

  • シャープ通信事業本部 本部長の中野吉朗氏

senseシリーズで幅広いユーザーに満足を

一方の「AQUOS sense3」「AQUOS sense3 plus」は、2019年上半期で最も売れた(BCN調べ)AndroidスマホとなったAQUOS sense2の後継機という位置づけの製品です。ともに4000mAhの大容量バッテリーを積んでおり、電池切れの心配がなくなるとアピールします。

  • AQUOS sense3は5.5インチ。防水防塵、耐衝撃、FeliCaに対応しています。2019年秋以降に発売

  • デュアルカメラながら、背面はかなりシンプルです

  • イヤホンジャックはしっかり搭載しています

  • 5.5インチのIGZO液晶を搭載します

価格については「販路によって決まるもので、我々では決めていません。ただ、ターゲット層も現行機種と大きくは変わらないゾーンを狙っていきます」と説明。sense2が3万円ほどだったので、sense3もそのあたりになることが予想されます。

  • AQUOS sense3 plusは6インチIGZO液晶の大画面モデル。Dolby Atmos対応ステレオスピーカーを搭載しています。2019年冬以降に発売

  • カメラはデュアルカメラですが、性能はsense3よりも若干優れています

  • イヤホンジャックも搭載しています

  • 背面パネルは光沢仕上げになっています

AQUOS sense3、AQUOS sense3 plusともに「間違いのない基本性能」を搭載。処理性能、ディスプレイ&カメラ、デザインの3つのポイントで、幅広いユーザーに満足してもらえるとしています。

  • AQUOS sense3のスペック表

  • AQUOS sense3 plusのスペック表

小林氏によれば、「すでに何百万人という方にsenseシリーズを使っていただいています。とにかく、めちゃくちゃな台数が出ている。今後も、senseシリーズでスマートフォンのAQUOSブランドを認知していただくと同時に、zeroシリーズでハイエンドなスマホも出していき、ブランドのイメージを醸成していきたい」とのことでした。

シャープから折りたたみスマホが出る?

発表会の終了後、小林氏は記者団の囲み取材に応じました。その中から、気になる話題を取り上げましょう。

端末の購入補助がなくなり、これまで優遇されてきたハイスペック機に競合できるチャンスでは…という問いに対して、小林氏は「とにかく市場全体を活性化させたいというのが本音ですね。スマートフォンはもう飽きちゃった、業界に新しい商品が出てきても話題にならない、というのが一番怖い」と素直な思いを口にしました。5Gという新しく大きな変化には期待している、それがスマホへの興味関心を引き上げてくれれば、とも話していました。

自社製のOLEDパネルを搭載できる強みについては、「開発チームと密にやり取りすることで、可能性を最大限に引き出せるポジションにいます」と手応えを感じている様子でした。

折りたたみスマホの開発については「検討中です。市場のニーズを見ながらですね。OLEDそのものを折りたたむのが難しいというよりは、表面のガラスに耐久性を持たせる、ヒンジの機構をどうするか、そこに防水機能を付与する技術など、OLED以外の課題が圧倒的に大きい。いまは技術を蓄積しながら、継続して検討しています。需要があれば、シャープの折りたたみスマホとしてすぐに出せるようにしておきたいですね」とのことでした。