お笑いコンビ・ハライチの岩井勇気が、9月26日に初エッセイ集『僕の人生には事件が起きない』(新潮社)を発売する。
この本は新潮社の雑誌、webサイトで連載していた内容がもととなっている。岩井はエッセイ執筆のオファーについて、「書けると思われがちだよなって(笑)」と心境を振り返る。
同エッセイは日常がテーマとなっており、漫才や出演番組の裏側などについては取り上げられていない。その理由を聞くと、「あまり裏側を言うのは好きじゃないんですよね。なんかネタばらしみたいな感じがするじゃないですか」と明かした。
また、岩井は近年、「腐り芸人」として取り上げられることも多いが、岩井自身は「自分では腐っていると1つも思っていない」と語った。
■担当者からの絶賛も「素直には受け取ってない」
――エッセイ執筆のオファーを受けたときの心境はいかがでしたか。
コンビのネタをつくる方で、ちょっと陰なキャラっぽい感じだから、書けると思われがちだよなって(笑)。澤部とは同級生なので、読者感想文とかも見たことあるんですけど、「俺って文章力ないな、澤部の方が文才あるな」って思ってましたから。
――実際に書いてみてどうでしたか。
誰が読むんだよという気持ちはありましたけどね。「こんなことがありましたよ」っていろんな人に言うべきこと、この話題だったらみんな興味あんだろということも別に起きてないので。
――ただ、担当者の方からは「まだ始めたばかりなのにすごい面白いです」などと言われたそうですね。
「反響良いです」「面白いです」と言ってくれてたんですけど、まあ、そりゃ言うだろうなと。こういうヤツって、乗せないと書かなくなりそうな感じするじゃないですか。俺が逆の立場でも言うでしょうし、別に素直には受け取ってないです(笑)。
その人自身にメリットがなく、まったく言う必要ないのに「岩井のエッセイ面白かったです」と言っていたら、うれしいですけどね。ただ、岩井のエッセイをあえて評価することで、自分の評価を上げようというのが透けて見える人はちょっとな、というのはあります。
■あまり裏側を言うのは好きじゃない
――執筆するなかで、ネタが思い浮かばなかったなどの苦労はありましたか。
ネタが出てこないというのはなかったです。ネタというほどのことではなく、なんでもないことを一生懸命面白く書くことが多かったので、逆に事欠かないですね。なんでも面白く書けるようにしようという意識ではいました。
――エッセイは日常をテーマにした内容となっています。漫才や出演番組の裏側などを取り上げなかったのはなぜですか。
そもそも、あまり裏側を言うのは好きじゃないんですよね。なんかネタばらしみたいな感じがするじゃないですか。「ここのオチがどう」とか「すべってる」とかって、客が知る必要はないし、客が言うことでもないので(笑)。それを芸人側が言い過ぎたことで浸透しちゃって、そういう見方をするようになっちゃってるけど。なんか楽屋まで入ってきてる感じがするんですよね。客は別に笑いに来て、面白ければ笑えばいい話ですから。
――岩井さんはラジオでも日常について話されることが多いですが、話すと書くとでは、どんな違いがありますか。
ノリで押し切れるので、話す方が簡単ですね。字ズラにすると面白くないノリがいっぱいありますし、あらすじだけ聞いたら、マジでつまらないような話ですから。
――ラジオだと、澤部さんというツッコミがいるのも、大きな違いなんでしょうか。
そうですね。聴き手がいるというのもありますし、ラジオだと明らかにボケていてもいいという感じです。文章だと、独りよがりで閉鎖的な感じがしちゃうんですが。だから、読者を置いていかないように、とは意識していました。ラジオでは、要所要所で笑いを入れていかないと怖いんですが、文章はめちゃくちゃ長くない限りは、最後のオチまでたいがい読んでくれますから。
■みんな面白いことなんて起きてないですから
――「僕の人生には事件が起きない」というタイトル通り、収録されているエピソードには、驚くような「事件」は起きていない印象です。
オチがあるか分からない、なんでもない話を面白くできたほうが芸人なんじゃないの、とは感じます。基本的にはみんな面白いことなんて起きてないですからね。そんなに起きてないのに、大きい声で「起きてますよ!」って言っているような人の集まりなんで、芸能人って(笑)。
――そうなんですね(笑)。
結局、みんな日常生活なんて別に普通だし、なにも起きてないので。テレビとかに毒されて、「すごいいろんな出来事が起きているのに、俺の日常は普通だな」じゃなくて、みんな普通。だからこそ、別に見方を変えて楽しもうと思えば、楽しめるんじゃないかって思います。