10月7日まで実施している「BEST SELECTION キャッシュバックキャンペーン」の後押しもあり、低価格モデル「ニコン Z 6」を中心に売れ行きを伸ばしているニコンのフルサイズミラーレス「Z」シリーズ。画質の良さと使い勝手の良さだけでなく、交換レンズが続々と登場してきていることも支持される理由といえます。

特に、2019年は超ワイドズームレンズ「NIKKOR Z 14-30mm f/4 S」や大口径標準ズームレンズ「NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S」など、使い勝手のよい交換レンズを相次いでリリース。この9月には、中望遠の単焦点レンズ「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」がいよいよ登場。ニコン Z 6に装着してインプレッションしてみました。

  • ニコンが9月上旬に発売したZマウントの単焦点レンズ「NIKKOR Z 85mm f/1.8 S」。実売価格は税込み9万5000円前後

85mm f/1.8 Sは、扱いやすいサイズに収められた開放値F1.8の中望遠レンズ。重量は470gほどで、フルサイズのZ 6に装着しても1150gほどに抑えられ、ハンドリングは良好だと感じます。

外観は、ほかのNIKKOR Zレンズシリーズと同様に、ソリッドでストレートな印象です。フォトグラファーがさまざまな機能を割り当てられるコントロールリングは、動きが滑らかで動画撮影時にも配慮されており、オートフォーカスとマニュアルフォーカスの切替スイッチの節度感も好ましく感じました。

  • NIKKOR Z 85mm f/1.8 Sは、描写性能を追求した「S-Line」に属する高性能レンズ。デザインも、ほかのS-Lineのレンズと同じくシンプルだが質感が高い

レンズには、ニコン製交換レンズで評価の高いナノクリスタルコートが施され、逆光時もゴーストやフレアが少なく、太陽がフレーム内に入るような厳しいシーンでもヌケ感のあるクリアな写真が撮れます。最短撮影距離は撮像面から0.8mで、近距離から遠距離までビシッとAFが決まりました。レンズには、ホコリや水滴の侵入を防ぐシーリングを施しているので、過酷な環境下での撮影も安心して臨めるのがうれしいところです。

実写して感じたのは、ボケがとても美しいこと。開放値F1.8の中望遠レンズなので、被写体の背景がキレイにボケてくれるのが印象的です。絞り開放で撮ったカットは、焦点面がクッキリとシャープに描きつつ、その周囲は上品に消えゆくようにデフォーカスしていく感じがたまりません。Zシリーズはオートフォーカス性能が優れているので、絞り開放から積極的に使える点が素晴らしいですね。特に、瞳AFの精度が高く、左右どちらの眼にピントを合わせるか切り替えるのも簡単なので、ポートレート撮影では絶大な威力を発揮すること間違いないでしょう。

もちろん、ちょっと絞ればよりキリッとした描写も楽しめるので、風景やスナップショット、テーブルフォトなどでも活躍するでしょう。

  • 高台から霧の中の湖面を見つめる観光客たち。絞り開放で2段ほどマイナス補正をかけましたが、幻想的で面白いカットになりました。光芒のクリアなヌケ感と、霧の粒まで描き出しそうな写りに驚きました(ISO100、1/8000秒、F1.8、-2補正)

  • 同じ高台から山中湖を捉えました。絞り開放ながら湖面のさざ波の様子、森の鬱蒼としたディテールを確実に捉えてくれました(ISO100、1/5000秒、F1.8、-1.7補正)

  • 絞り開放から安心して使えるレンズに仕上がっていると感じます。キリリとエッジが立って鮮明な焦点面と、背景の自然で美しいボケ味はとても気に入りました(ISO100、1/125秒、F1.8、-0.3補正)

  • 古民家の囲炉裏端をチョイ絞りで撮りましたが、イメージ通りに仕上がりました。オートフォーカスも正確かつ高速で、狙った位置にピントが一発できますし、逆光のカットですがシャドウ部の粘りも申し分ありません(ISO1100、1/100秒、F2.0)

  • 西日が差し込む古民家で機織り機を撮りましたが、糸の向こうで光る西日が透けてとてもドラマチックになりました。糸の連なる感じがとても立体感あふれていて、ポテンシャルの高さを感じました(ISO250、1/100秒、F1.8、-1.3補正)

  • 絞り開放からとても解像感が高く、シャープな描写が得られます。いにしえの消防着をクローズアップで撮りましたが、これほどキッチリと写るとは思いませんでした。生地の目まで緻密に写し撮ることができました(ISO720、1/100秒、F1.8、-0.7補正)

  • 渋谷にある写真学校のスタッフを撮らせてもらいました。絞りはもちろん開放ですが、Z 6の優秀な瞳AFのおかげでしっかりと右の女性の瞳にフォーカスしてくれました。任意の瞳への切り替えが圧倒的に簡単なZシリーズは、ポートレート撮影に向くと感じました(ISO125、1/100秒、F1.8、+0.3補正)

  • NIKKOR Z 85mm f/1.8 Sは携行しやすいサイズ感で、幅広いジャンルの被写体にマッチし、上質なボケ味を堪能できる高性能レンズという印象を持ちました。ZマウントのF1.8シリーズは、35mm f/1.8 S、50mm f/1.8 S、85mm f/1.8 Sの3本がそろいましたが、どれもコンパクトながら高い描写性能を誇ります(ISO400、1/100秒、F1.8、-1補正)

  • 山中湖畔で富士山を狙うフォトグラファーを撮影。サイドからの光でエッジが立った撮影者の向こうに、雄大な富士山がキレイにボケて写りました。Tシャツのディテールや柵のクモの巣まで分かる描写性能に脱帽です(ISO100、1/8000秒、F1.8、-1.3補正)

  • とあるバーで、写真談義中に撮ったヒトコマ。Z 6の優秀なオートホワイトバランスもありますが、その場の雰囲気を見たままに表現することができました(ISO640、1/100秒、F1.8、-0.3補正)