9月も下旬になり、10月1日の消費増税を前にした駆け込み購買が散見されるようになりました。家電量販店で駆け込みの多いジャンルの1つがデジタルカメラで、増税後の価格上乗せが大きくなる高価格モデルほど注目を集めているようです。そこで、新製品が相次いで登場して人気が高まっているミラーレスカメラのなかでも、価格帯がやや高めの“プチ贅沢”なおすすめモデルをビックカメラ有楽町店に聞いてきました。
デジタル一眼カメラの最近の動向について、カメラコーナー主任の常木高広氏はこう解説します。「2013年11月に登場した世界初のフルサイズミラーレス『α7/7R』を起点に、ミラーレス人気は一眼レフをしのぐ勢いになっていますね。直近だと、ダブルスコアでミラーレスが売れています。APS-Cミラーレスのラインアップも充実していますし、一眼レフからの乗り換え需要だけでなく、一眼カメラの入り口としても盛況です」
高性能ミラーレスの盛り上がりは、消費増税直前の9月末に向けて加速するとみられます。それを踏まえて、購入のポイントを3つ挙げてもらいました。
- フルサイズミラーレス用の交換レンズの充実度は、ソニーが突出。ニコンとキヤノンは2020年に向けて成長途上
- 長く使うなら、重さとバッテリーの持ちのチェックは欠かせない
- 来店は平日なら13~17時、土日なら12~14時が狙い目。午前中も比較的空いているが、販売員が少なめ
※本文と写真で掲載している価格は、2019年9月11日15:00時点のもの。日々変動しているので、参考程度に見てください。
セレクト1:15万円でハレとケの日をカバーできる「α6400」
今回セレクトしてもらったおすすめモデルは5製品。まずは「プチ贅沢な一眼カメラ入門モデル」を2つ紹介しましょう。
ひとつは、ソニーのAPS-Cミラーレス「α6400」です。0.02秒の高速AFを備え、人間だけでなく犬や猫にも対応する「リアルタイム瞳AF」機能により、家族写真もペットの写真も失敗しにくい特徴があります。重量は約403g(バッテリーとメモリーカードを含む、以下同)。
ボディ単体モデルの税込み価格は11万7471円、パワーズームレンズキットは12万1996円、高倍率ズームレンズキットは14万5929円、ダブルズームレンズキットは14万9536円となります。なかでも常木氏がおすすめするのがダブルズームレンズキットです。
「普段は薄型の標準ズームレンズを装着して持ち歩いて、運動会やイベントなど遠くからの撮影が必要なときだけ望遠レンズに付け替える、というスタイルが自然とできます。あとから望遠レンズを買うと3万~4万円しますから、最初から2種類のレンズが付属して使い道が広げられるのはよいと思います」
セレクト2:フイルムからの乗り換え派にも向く「FUJIFILM X-T3」
ふたつめは、富士フイルムのAPS-Cミラーレス「FUJIFILM X-T3」です。かつてのフイルム一眼レフカメラに似たデザイン性や操作感のボディを採用しつつ、最速秒間30コマの高速連写機能も備えています。重量は約539g。
ボディ単体モデルの税込み価格は17万1730円、ズームレンズキットは21万8862円となります。入門という切り口なので、利用頻度の高いレンズがそろうズームレンズキットをプッシュされました。
「富士フイルムの紙焼き写真風に補正してくれるフィルムコントロール機能もありますし、往年のフイルムカメラからの乗り換え機として選ぶ方も多いです。レトロなデザインが好きな若い人にもよく指名買いされますね」
セレクト3:フルサイズミラーレスの大本命「α7 III」
次は、一眼レフからの乗り換えも多い「写真ファンが持ち運びたくなるフルサイズミラーレス」を3つ挙げてもらっています。
筆頭は、ソニー「α7」シリーズのヒットモデル「α7 III」。2013年登場の「α7/7R」から続く定番シリーズということで、対応レンズのラインアップが豊富なことと、α6400と同じように「リアルタイム瞳AF」機能でピント外しの失敗が減らせる強みもあります。
加えて、α7 IIIは「バッテリーが強化されていて、ファインダー使用時の撮影枚数が約610枚と一眼レフ並みになっているところが武器といえますね。ミラーレスは、ライブビューや電子ビューファインダーのぶんだけ一眼レフよりも電力消費が大きくなるので、その弱点をカバーしたのは大きいです」といいます。重量は約650g。
ボディ単体モデルの税込み価格は23万5990円で、ズームレンズキットは26万4470円。α7 IIIでフルサイズデビューするなら、おすすめは後者とのこと。「交換レンズを別に購入すると、トータルの価格はやはり割高になります。まずはコンパクトで軽い標準レンズで試してみて、慣れてきたらゆっくりレンズのことを考えるのがよいでしょう」
セレクト4:大口径レンズが使えるワクワクも手に入る「Z6」
ふたつめは、ニコンのフルサイズミラーレス「Z 6」です。大口径のニコンZマウントを採用し、総合的なスペックの高さからロングヒットを続けています。重量は約675g。
「高画素センサーを搭載した上位モデル『Z 7』もよい機種なのですが、価格の開きがあるので、比較的手ごろな価格のこちらをセレクトしました。描写性能に優れる大口径レンズを用意しており、四隅まできれいに表現できるのが強みですね。対応レンズはまだ少なめですが、2020年の東京五輪に向けて、今後急ピッチで充実してくると思います」
ボディ単体モデルの税込み価格は25万3692円、FTZマウントアダプタキットは29万4300円、レンズ+FTZマウントアダプタキットは33万8655円、レンズキットは34万1107円となります。オススメはレンズ+FTZマウントアダプタキットとのこと。
「マウントアダプターがあれば、多彩な一眼レフ用の交換レンズが使えるので、柔軟に撮影を楽しめるのが魅力です」
セレクト5:フルサイズミラーレスで一番軽い「EOS RP」
最後のオススメは、キヤノンの「EOS RP」です。フルサイズミラーレスのなかで、重量は最も軽い約485gとなっており、ボディのコンパクトさもあって女性からの人気が一段と高いモデルだといいます。
「一眼レフ入門機のEOS Kissシリーズから乗り換える方も多いですね。フルサイズなのに同シリーズ並みに軽いですし、モニターが横に開くバリアングルを採用している点も共通していますから」
ラインアップの豊富さもEOS RPの特徴です。ボディ単体モデルの税込み価格は17万3340円、マウントアダプタキットが18万8967円、標準ズームレンズ(RF24-240 IS USM)キットが25万2720円、単焦点レンズ(RF35 MACRO IS STM)キットが22万9791円、マウントアダプター+単焦点レンズキットが25万8660円です。
「10倍ものズーム比を持つ標準ズームもよいと思いますが、キヤノンもフルサイズミラーレス用の交換レンズはこれから充実していく流れなので、一眼レフのレンズ資産が生かせるマウントアダプター付きキットがおすすめです」
はみ出し情報…レンズを初めて追加するなら単焦点がおすすめ
ボディや標準レンズはすでに持っていて、増税前のタイミングで交換レンズを追加したい…と考えている人には、「単焦点レンズがおすすめです」といいます。
「単焦点の明るいレンズならばボケ味がすごく大きくなりますし、暗いところもきれいに撮れます。コンパクトで持ち運びしやすいですし、何より付属のズームレンズとの違いが実感しやすいのが魅力です」
たとえば、α7 IIIでもα6400でも使えるソニーEマウントの単焦点レンズ「FE 50mm F1.8(SEL50F18F)」の税込み価格は2万8198円です。対応レンズはボディによって異なりますので、自分のカメラでどのような交換レンズが使えるか、カタログやWebサイトで確認してみるとよいでしょう。
著者プロフィール
古田雄介
フリーランスライター。『アキバPick UP!』(ITmedia PC USER/2004年~)や『売り場直送! トレンド便』(日経トレンディネット/2007~2019年)などのレポート記事を手がける。デジタルと生老病死のつながりにも詳しい。著書に『死とインターネット』(Kindle版)、『ここが知りたい! デジタル遺品』(技術評論社)、『故人サイト』(社会評論社)など。