2019年9月6日からドイツ・ベルリンで開催された家電の総合見本市イベント「IFA 2019」では、多数のスマートフォンメーカーが最新モデルを展示していました。今後日本での発売が期待されるスマートフォンや、注目の「5G」に関する取り組みなど、IFAで見たモバイルに関する話題をピックアップして紹介しましょう。

  • IFA 2019

    IFA 2019はドイツ・ベルリンで開催。家電だけでなく、スマートフォンなどモバイル関連の展示も多くなされていた

5Gで火花を散らすファーウェイとクアルコム

まず、次世代モバイル通信規格の「5G」に関する各社の取り組みに注目しましょう。2019年は世界的に「5G元年」とされており、ドイツテレコム(T-Mobile)など現地の携帯電話会社も5Gのサービスを始めていることから、IFA会場内では5Gに関する展示や発表もいくつかなされていました。

  • ドイツテレコム

    ドイツテレコムのブースでは、商用サービスを開始する5G関連のサービスや端末を積極的にアピールしていた

中でもサムスン電子は、「Galaxy S10 5G」「Galaxy Note10/10+ 5G」「Galaxy Fold 5G」に加え、より安価に購入できる5Gスマートフォン「Galaxy A90 5G」も発表。5G対応スマートフォンのラインナップを数多くそろえていることをアピールしています。

  • Galaxy A90 5G

    サムスン電子が新たに発表した5Gスマートフォン「Galaxy A90 5G」。749ユーロ(約88,800円)と、5Gスマートフォンの中では比較的安価に抑えられている

5G関連でより注目を集めたのは、ファーウェイ・テクノロジーズとクアルコムが基調講演で5Gに関するアピール合戦を繰り広げたことでしょう。

ファーウェイは新しいチップセット「Kirin 990」を発表しましたが、これは5G通信に必要なモデムを内蔵した初のチップセットになるとのこと。これまで5Gのモデムチップは、メインのチップセットと別に搭載する必要があったのですが、モデムを内蔵したKirin 990を開発したことで、ファーウェイはスマートフォンなどの開発でより優位な立場に立ったともいえます。

  • Kirin 990

    ファーウェイのコンシューマービジネスグループCEO、リチャード・ユー氏の基調講演では、5Gモデムを内蔵した新しいチップセット「Kirin 990」を発表。これを搭載した「HUAWEI Mate 30」も間もなく発表する予定だという

一方のクアルコムは、同社のチップセット「Snapdragon」シリーズの5G対応をより加速させることを発表。現在5Gの対応が進められているのは、ハイエンド向けの「8」シリーズのみですが、今後はミドル~ミドルハイクラス向けの「7」「6」シリーズも5Gに対応させることを発表しました。2019年第4四半期には、5Gに対応した7シリーズのチップセットを投入するとしており、年末から来年にかけて、より低価格の5Gスマートフォンが登場する可能性が高まったといえます。

  • クリスティアーノ・アモン氏

    クアルコムのクリスティアーノ・アモン氏の基調講演では、Snapdragonのミドルハイクラス向け「7」シリーズを5Gに対応することが明らかに。年末頃にはこれを搭載した、より低価格の5Gスマートフォンの登場が期待される

5Gの基礎となるチップセットに関して激しい競争が繰り広げられているということは、それを搭載したスマートフォンの競走加速にもつながることも示しています。ゆえに両社の争いは5Gがローンチ初期段階から、本格的に普及するフェーズへと急速に進んでいる様子を示しているといえそうです。

国内投入が期待される「Xperia 5」と「Galaxy Note10/10+」

今回のIFAで発表・展示がなされた中でも、日本での発売が最も期待されるのが、ソニーモバイルコミュニケーションズが発表した「Xperia 5」です。これは日本で2019年の夏モデルとして販売された「Xperia 1」のコンセプトや性能はほぼそのままに、ディスプレイサイズを6.1インチ、横幅を68mmと小型化したモデル。従来のXperiaシリーズでいうところの「Compact」シリーズに近いモデルといえるでしょう。

サイズが小型化したことから、ディスプレイの解像度は4KではなくフルHD+(2,520×1,080ピクセル)となるなど性能面で譲る部分はいくつかありますが、それでもXperia 1と同じ21:9比率の有機ELディスプレイを採用し、映像制作の現場で用いられるマスターモニターの色を再現する「クリエイターモード」や、映画と同じ21:9比率で秒間24コマの映像を撮影できる「Cinema Pro」、人間の瞳を追従してフォーカスを当てる「瞳AF」など、Xperia 1の特徴的な機能はしっかり搭載。映像を観る、撮影することにこだわったスマートフォンに仕上がっています。

  • Xperia 5

    ソニーモバイルが発表した最新スマートフォン「Xperia 5」。21:9比率のディスプレイなどXperia 1のコンセプトを引き継ぎながら、小型化を実現したモデルだ

もう1つ、国内投入が注目されるのが、サムスン電子の新機種「Galaxy Note10」と「Galaxy Note10+」です。これはGalaxy Noteシリーズの最新モデルで、従来は1モデル展開であったのが、今回から新たに6.3インチディスプレイを採用した小型モデルの「Galaxy Note10」と、従来のサイズ感ながら6.8インチとより大画面化を実現した「Galaxy Note10+」の2モデル展開となっています。

両機種ともに、Galaxy Noteシリーズ最大の特徴でもある「Sペン」を用いたペン操作に対応していますが、そのSペンに関する操作が拡充。ペンを用いてカメラアプリなどを遠隔で操作できる「リモート操作」に、新たにジェスチャー操作を追加。「シャッターを切る」など単純な操作だけでなく、「メイン・フロントカメラを切り替える」「カメラモードを切り替える」などより多くの操作ができるようになりました。

  • Galaxy Note 10/10+

    8月に発表されたばかりのGalaxy Noteの最新機種「Galaxy Note 10/10+」も展示。大画面ディスプレイに加え、ジェスチャー操作でリモート操作が便利になるなどペンの機能も強化

ちなみにIFAの会場では、シャープも欧州向けを中心としたスマートフォンを展示していました。今回のIFAに合わせて「AQUOS R3」の欧州展開を開始するほか、新しいミドルクラスのスマートフォン「AQUOS V」を提供することが明らかにされています。

  • AQUOS R3

    2018年に欧州市場への再参入を果たしたシャープ。今年は日本でも発売されたハイエンドモデル「AQUOS R3」を投入して勝負をかける

「Galaxy Fold」がついに登場、2画面のアプローチも増加

IFAで大きな注目を集めていたのが、ディスプレイを折りたためるスマートフォン「Galaxy Fold」です。2019年2月に発表されたものの諸事情から販売延期となっていたのですが、2019年9月から韓国を皮切りとして正式に販売を開始。今回のIFAでも実物が披露されました。

  • Galaxy Fold

    市場投入が延期されていた、ディスプレイを直接折りたためるスマートフォン「Galaxy Fold」も満を持して展示。実際に使ってみるとこれまでにない感覚を味わえて非常に楽しい

Galaxy Foldについて改めて説明すると、タブレットに匹敵する7.3インチのディスプレイを、本のように内側に折りたためるスマートフォン。大画面をフルに活用して映像やゲームなどのコンテンツを楽しめるのはもちろんのこと、閉じた状態でも背面に搭載されている4.6インチのディスプレイで基本的な操作が可能です。発表時点でも日本円にして20万円を超える価格が話題となりましたが、それでも韓国では発売日に即日完売するなど高い注目を集めているのは確かで、日本投入も大いに期待したいところです。

【動画】Galaxy Foldを折りたたんだり開いたりしている様子
(音声が流れます。ご注意ください)

ちなみに他のメーカーからも、ディスプレイをプラスするという別のアプローチで、ディスプレイの大型化を実現する取り組みが出てきているようです。その1つはASUSのゲーミングスマートフォン最新機種「ROG Phone 2」で、2画面ディスプレイに拡張できるドックを装着することで、2つの画面をフル活用しながらゲームが楽しめる仕組みが用意されています。

  • ROG Phone 2

    ASUSの最新ゲーミングスマートフォン「ROG Phone 2」。前機種同様、専用のドックを装着することで2画面を実現している

同様に、LGエレクトロニクスの「LG G8X ThinQ」も、2画面を搭載したスマートフォンとして注目されます。こちらは専用のアクセサリーを装着することで、デュアルディスプレイを実現する仕組み。2つの画面の一方をコントローラーにしてゲームを快適にプレイしたりと、さまざまな活用ができるようになっています。

  • LG G8X ThinQ

    「LG G8X ThinQ」も、専用の周辺機器を装着することで2画面化が可能に。2つの画面を活用し、ゲームだけでなくさまざまなコンテンツの楽しみ方が広がることをアピールしていた