財務・会計のIT導入比率が約75%とトップ
加えて、「2018年版中小企業白書・小規模企業白書」では、IT活用による生産性向上についても触れている。ITツールに関しては、「十分利活用されている」と回答した企業の割合は、一般オフィスシステムと電子メールが55%前後、経理ソフトなどが約40%、ERPやEDIで約20%であることがわかっている。この結果を受け、中小企業庁は「中小企業のITツール利活用は不十分であり、活用度合を高める余地は大きい」とコメントしている。
また、業務領域別のIT導入比率を見ると、財務・会計のIT導入比率が約75%と最も高く、他の業務領域は50%から60%までとなっている。なお、顧客管理と在庫管理は「導入したが効果が得られていない」比率が他の3領域(財務会計、人事・労務、受発注)より高く、導入前の期待に見合うほどの効果が得られていないようだ。
「ITを導入し期待した効果を得られている」企業をトップ層、「ITを導入しある程度の効果を得られている」をミドル層、これら以外をボトム層と定義した分析では、トップ層の比率は業種による差がなかったが、ミドル層の比率は、卸売業・小売業と情報通信業が高く、サービス業、建設業、運輸業は相対的に低いことが明らかになった。
そのほか、IT導入時の課題としては、費用対効果と従業員のITスキルが障壁となっていることがわかっている。「ITの導入の効果がわからない、評価できない」という課題については、効果がわかるように説明できる支援者の助けを得ることがカギとなるという。
同庁は、中小企業がIT導入を推進するには、「相談相手を見つけること」「相談相手からIT導入の効果や評価について教わること」が重要としている。
バックオフィスにおけるIT活用のポイントは?
バックオフィスにおけるIT活用としては、業種横断的な業務と言える財務会計と勤怠管理に焦点を当て、クラウドサービスの導入効果について調査が行われている。
会計も勤怠管理もソフト(インストール型、パッケージ型)の導入形態がもっと多く、クラウド型は会計では約14%、勤怠管理で約10%利用されている。
クラウドを導入した企業に月次処理に要する人日の変動を聞いたところ、ラウド会計は導入前後で変わらなかった(削減が0割)企業や、増加した(削減が0割未満)企業が17%程度存在するが、それらを含めた有効回答のあった企業全体で、クラウド会計の導入による月次処理の人日削減割合の平均値は2.6割だった。
一方、クラウド勤怠管理は、導入前後で変わらなかった(削減が0割)企業、増加した(削減が0割未満)企業が21%程度存在するが、それらを含めた有効回答のあった企業全体で、クラウド勤怠管理の導入による月次処理の人日削減割合の平均値は2.6割だった。
以上のように、中堅・中小企業においてITを活用することで、業務にまつわる課題を解決することは可能なようだ。なお、中小企業庁は小規模事業者において、IT活用の施策を浸透させるためのカギとして、ITベンダーなどの支援機関の重要性を指摘している。ITの利便性を理解していても目の前の業務に追われている小規模企業では、IT導入にこぎつけるまでが大変と言われているからだ。
中小企業庁をはじめ、中堅・中小企業のIT活用を支援しようとする手はいくつも存在し、ITを活用する土壌は整ってきている。企業の将来を見据え、IT活用に取り組まれてはいかがだろうか。