キヤノンのデジタル一眼レフカメラ「EOS 90D」の発売日が9月20日に決まりました。キヤノンとしては久々の中級APS-C一眼レフの新製品で、画素数や操作性が向上したとあって、「EOS 80D」や「EOS 7D」など、APS-C一眼レフを愛用してきた人にとっては特に気になる存在なのではないでしょうか。EOSシリーズを長く使っている鹿野貴司カメラマンに、ファーストインプレッションをまとめてもらいました。

  • キヤノンが9月20日に販売を開始するAPS-C一眼レフ「EOS 90D」。実売価格は、ボディ単体モデルが税込み15万円前後、EF-S18-135 IS USM レンズキットが税込み20万円前後

絶妙なサイズ感のAPS-C一眼レフ

このところ、フルサイズミラーレスで怒涛のごとくカメラや交換レンズの新製品を投入しているキヤノン。もう一眼レフの新製品は出さないのかな…と思っていたら、写真ファンにとって定番の“EOS 2ケタシリーズ”に3年ぶりの新機種「EOS 90D」が登場しました。しばらく動きの少なかったAPS-Cフォーマット機の世界ですが、キヤノンはAPS-Cユーザーを見捨ててはいなかったのです。

フルサイズ人気が急速に広まった昨今ですが、APS-Cフォーマット機はフルサイズ機と比べて優位な点がいくつもあります。EOS 90Dは、その点を強く押し出してきたモデルといえます。

EOS 90Dを手にしてまず感じたのは、一眼レフとしては大きくも小さくもない絶妙なサイズであること。EOS 80D以前のカメラもそうなんですが、EOS 90Dはいうなれば“細マッチョ”。EOSシリーズらしく曲線を基調にしながら、てっぺんのポップアップストロボ部分や、サブ液晶と背面の角、モードダイヤル下の側面などは直線的でエッジが効いた仕上げにしています。シャープで高級感のあるボディは、2ケタEOSやEOS KissシリーズなどからのステップアップでEOS 90Dを選ぶ人はもちろん、これまで上位機種を愛用してきた人も“撮る気”にさせてくれると思います。

  • 一眼レフEOSらしいスタイルを継承するEOS 90D。シャッターボタンはEOS-1Dシリーズなどの上位機種と同じ構造とし、絶妙な押し具合でレリーズできる

操作面では、EOS 80Dのバリアングル液晶を継承。一方で、EOS 7D Mark IIなどの上位機種のみが採用していたマルチコントローラー(右手親指でグリグリ操作できるレバー)を2ケタEOSで初めて搭載しました。EOSシリーズでこの両方を備えているのは、いまのところEOS 90Dだけ。ふだん、フルサイズ一眼レフ「EOS 5D Mark IV」を使っている僕も何ら操作に不満はなく、むしろバリアングル液晶の存在をうらやましく感じました。

  • 背面には、ジョイスティック型のマルチコントローラーを新たに搭載した

さらに、背面液晶を用いたライブビューでの撮影がとても快適なのも驚きました。実質的には“一眼レフの機能も兼ね備えた高性能ミラーレス機”というべきかもしれません。

画素数は、他メーカーも含めてAPS-Cフォーマット機としては最大となる有効3250万画素。今回は試作機を使用したため、画質はまだ最終仕様ではないそうですが、そのまま製品版となったとしても不満のない画質でした。サイズ、基本性能、操作性、画質、価格のバランスが高いレベルでまとまった、お買い得感のあるAPS-C一眼レフだと思います。

  • おみくじを結ぶ手にピントを合わせつつ、背景の影も見せたかったので、F5.6まで絞りました。「APS-Cフォーマットはボケが小さい」などといわれることがありますが、それは中判などの大きなフォーマットと比べての話。実際にはかなりボケが大きいのです(EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS USM、ISO100、1/640秒、F5.6)※試作機のため、作例は長編3480ドットに縮小して掲載しています(以下同じ)

  • さらにボケを活かそうと、ふだんEOS 5D Mark IVで愛用している単焦点レンズ「EF50mm F1.8 STM」を装着して撮影。35mm換算で80mm相当というのはポートレート向きの画角ですが、スナップでも要素が整理できて面白いと思います(EF50mm F1.8 STM、ISO100、1/800秒、F1.8)

  • 連写はAF・AE追従で最高秒10コマと、EOS 7D Mark IIと同じ。ライブビューではさらに速くなり、最高秒11コマに。EOS 7D Mark IIもスペック上は最高秒10コマでしたが、使い勝手は5年で大きく進化したと感じます(EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS USM、ISO100、1/10秒、F25)

  • バリアングル液晶のおかげで、人混みの中でも頭ひとつ上のハイアングルから撮影できます。もちろん、ローアングルでも威力を発揮します(EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS USM、ISO100、1/250秒、F5.6)

  • これもEF50mm F1.8 STMで撮影。このレンズは実売1万5000円ほどで買えるお手ごろレンズですが、こんなボケを生かした写真も思いのまま。EOS 90Dを購入したら、ぜひ一緒にそろえてほしいレンズです(EF50mmF1.8 STM、ISO100、1/800秒、F1.8)

  • 実写したカメラは試作機でしたが、3250万画素もの高画素によって、過去のAPS-Cフォーマット機より一段と精細感が感じられました(EF-S 18-135mm F3.5-5.6 IS USM、ISO100、1/160秒、F8)

  • 夕暮れの淡い光の中でも、AFがしっかりと働きました。ミラーレス機の性能も向上しましたが、AFに関しては技術が成熟した一眼レフにまだアドバンテージがあると思います(EF50mm F1.8 STM、ISO400、1/200秒、F1.8)