HDR(High Dynamic Range)は、輝度情報のうちもっとも明るい部分と暗い部分の差(ダイナミックレンジ)が広い状態を意味します。しかし、スマートフォンで使われる「HDR」には2通りの意味があり、静止画撮影機能についていうときは明暗差を大きくとるよう加工する技術(ハイダイナミックレンジ合成)を、ディスプレイについていうときはHDR10などダイナミックレンジが広い映像信号を扱うための規格を指します。
「スマートHDR」はiPhone XS/XS Maxから採用された、前述の定義でいうと静止画撮影時におけるハイダイナミックレンジ合成の改良版です。『設定』→「カメラ」画面にある「スマートHDR」スイッチをONにしておくと、従来より多くの場面でHDRらしい効果を期待できます。
具体的には、逆光で撮影したとき、人の顔が暗く写ってしまうことが少なくなります。しかも背景は白飛びしないレベルで明るさを保つため、肉眼で見たときの印象に近い写真に仕上がります。夜景を撮影するときにもHDRが自動で有効になることが増え、暗い部分の階調もしっかり表現されます。
スマートHDRが実現された背景には、センサーサイズの拡大でより多くの情報を残せるようになったことのほか、センサーの高速化、画像情報を処理するチップ(ISP)の高性能化、ソフトウェアの改良など複数の要素があります。ハードウェアの性能向上だけでなく、処理のアルゴリズムを見直すなどソフトウェア的アプローチがあって実現された機能といえます。
iPhone 11/Pro/Pro Maxは、スマートHDRがさらに進化した「次世代スマートHDR」に対応しています。機械学習を利用して構図内の被写体を認識し、そこに照明を当て直すことで、より自然に近い写真撮影を可能にしました。iPhoneのHDR機能は、進化を続けているのです。