2019年8月26日、栃木県日光市とNTT東日本が市民生活向上と地域経済活性化の推進をサポートするための連携協定を締結した。日光市では、ICTを活用し技術行財政改革の推進に向けたインフラ構築や地域経済の活性化を目指すとしている。
日光市が思い描く未来に向けて、ICTはどのような形で寄与できるのだろうか。今回は、ICTを活用した「地域創生」について日光市の担当者に話をうかがった。
ICTで業務効率化を図る
栃木県日光市は、2006年に旧日光市・今市市・藤原町・栗山村・足尾町の5自治体が合併して発足。市内に日光東照宮や二荒山神社などの世界遺産を持つ日本有数の観光都市で、2018年には訪問観光客が1,230 万人を超え、2年連続で過去最高を更新している。だが、その一方では人口減少や少子高齢、地域経済の活性化やインバウンド対策などの課題も抱えている。
日光市は令和元年度から、民間企業との協業制度である「日光市と民間企業等との協働に関する提案募集制度」の運用を開始しており、今回の連携はNTT東日本が最初のケースとなる。これまで公民連携として建築や金融機関との連携はあったが、今回のような先進的な取り組みは初めてとなる。
一方、NTT東日本は「地域とともに歩むICTソリューション企業」として各自治体と連携を強化しており、ICT(AI、ロボティクス、IoTなど)やネットワークなどを活用したソリューションを提案している。
日光市の新たな取り組みでは、ICTを取り入れた実証実験として短期的にRPA(ロボットによる業務自動化)やAI-OCR(光学文字認識)を活用し、業務の効率化を図るとしている。
「まずは、できるとこから始めたい」と語るのは、企画総務部・総合政策課の鈴木和仁課長。「4月からは、新たに総合企画部として複合的に実効性のある政策を推進し、それぞれの業務を所轄課に振れるようしたい」という。「現場で頑張り、部署ごとで考える」と、職員の意識改革をめざしている。
ICTで市民の生活環境の底上げを
また今回の連携について、総合政策課・政策調整係の大塚正副主幹は「NTT東日本との連携は全体的な業務の底上げとなり、それが市民の生活環境の底上げとなる」とし、まずはRPAソフトウェアのオペレーター育成を行うとしている。
地域の活性化について、既に全国の地方自治体で問題となっている人口減少対策、教育の充実、地域のインフラ拡充、観光振興などに対してもNTTのツール活用をめざしている。
その一つの取り組みとして、近年は道の駅での無断の車中泊が各地で問題視されていることなどを受け、キャンピングカーの車中泊スペースの提供が検討されている。
観光エリア周辺の宿泊施設の不足を補いつつ、外国人観光客に人気のあるキャンピングカーの利用場所を設けることで、より多くのインバウンド需要を見込む。駐車スペースにはNTTの遊休地を利用し、予約や空き状況など情報発信にICTを活用し、利用を呼び込むとしている。
主に情報を担当している企画総務部・総合政策課の印南雅章係長は「NTT東日本さんとの連携によって、ICTの活用という意識が職員の中にも芽生えてきています。職員の意識の底上げを図り、新たな施策をすることで住民が暮らしやすい環境を整えることが結果的にいい方向につながっていくのでは」と、NTT東日本との「協働」に期待を寄せる。
成功事例の積極的な発信も視野に
そのほかでは、日光市が全国に向けて発信している「日光ブランド」にもICTの活用を検討しており、再構築を検討。さらには各種イベントでの連携や外来植物除去や足尾銅山の植樹 活動など、地域環境の美化・保全を目指していく。
「日光という特異性のある地域で、どのような形でICTの取り組みができるのかを見極めていきながら、今後は教育や観光面で新たな取り組みをしていければいいと考えています。そして、一定の効果が出た施策に関しては日光市民にはもちろんのこと、市外に対しても積極的に発信していきたいですね」(鈴木課長)