NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)で、金栗四三と共にマラソン用の足袋を開発してきた足袋職人・黒坂辛作を演じている三宅弘城。三宅は、脚本の宮藤官九郎、主演の阿部サダヲ、共演の皆川猿時という「いだてん」チームと、パンクコントバンド・グループ魂を組んでいる旧知の間柄だけに、思うところはひと塩だっただろう。

9月15日放送の第35回では、いよいよベルリンオリンピックが開幕。この回では、陸上競技がクローズアップされ、ハリマヤの足袋を履いた選手たちもマラソンに参加するので、久しぶりに辛作と金栗四三(中村勘九郎)をフィーチャーした回となる。三宅にインタビューし、今だから話せる抜てきの舞台裏から、オリンピック選手たちを支えた辛作の職人魂について語ってもらった。

  • 三宅弘城

    『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』で足袋職人・黒坂辛作を演じている三宅弘城

――三宅さんは宮藤官九郎さんや阿部サダヲさん、皆川猿時さんとは同じ事務所(大人計画)ですし、一緒にバンド活動をされています。出演される前から、『いだてん』は気になっていた作品でしたか?

実は、最初に『いだてん』の詳細が発表される前に、宮藤さんがブラジルに行ったと聞いていまして。情報解禁になった時、「だからリオに行っていたのか!」と納得したんです。ちょうど発表になった時、宮藤さんと一緒に楽屋にいたんですが、皆川(猿時)くんが「よろしくお願いします!」と言いに来ていました(笑)。もちろん、僕も「体を鍛えておきますね」と売り込んでいました。

――三宅さんといえば、器械体操やボクシングなどをされていて、運動神経の良さはお墨付きですから、やはり『いだてん』に出演したいと思われていたんですね。

情報解禁後、勝地涼くんと一緒に宮藤さんの舞台に出演した時も、勝地くんを介して「三宅さん、出ないんですか?」と聞いてもらったりしました(笑)。勝地くんも「オリンピックの話なのに、三宅さんが出ないなんて」と、さらに増幅させて言ってくれたりして。

僕は幼稚園のころ将来の夢は「オリンピックの選手になりたい」と書いていたし、ずっとオリンピックはクギ付けになって観ていました。それを描く『いだてん』の脚本家が目の前にいるんだから、当然、何度もアピールしますよね。そしたら、想定外の呼ばれ方をしましたが(苦笑)。

――代役が決まった時、宮藤さんや阿部さんたちから、どういうリアクションがあったのですか?

阿部くんからは、LINEがきたと思います。宮藤さんからは、バンドの練習の際に「よろしくお願いします」みたいなことを言われました。今年はグループ魂自体の活動があまりなかったので、みんなで集まることは少なかったし、お互いに近すぎる関係だと逆に恥ずかしがって、あまり口に出さない感じでしたね。

――辛作役を演じる上で、一番苦労した点とは?

短い期間で、いろんなシーンを撮らなきゃいけなかったし、前のシーンとの兼ね合いもあり、しゃべりの速さや動きを合わせる必要があったので、そこが難しかったです。でも、そういう時、Mっ気が出てくるのか、きついと一層やりがいが出る感じで、大変でしたが楽しかったです。

  • 三宅弘城

――実際に辛作役を演じてみて、いかがでしたか?

参加させていただけたのはうれしかったし、辛作役で良かったなと思っています。もちろんスポーツ関係の役でも良かったとは思いますが、敢えてそっちにいかず、表には出ないけど、陰でしっかり支えていく役だったから。

自分ではあまり言いたくないんですが、屋台骨になっているという意味で言えば、バンドにおけるドラマーと一緒だなと思っています。立って演奏する人は、お客さんの前に行けたりと自由に動けるけど、大抵のドラマーは座って動けない。でも、ドラマーがしっかりしているバンドは、安心してやれるのではないかと。辛作さんも表舞台には出ない人だけど、金栗さんも、辛作さんの足袋がなければ頑張って走れなかったと思うし、そういう意味でいえば、縁の下の力持ち的な共通点はあるのかなと、ふと思いました。

――三宅さんは、これまでも宮藤官九郎さん脚本のドラマや舞台に数多く出演されてきましたが、今回の『いだてん』はいかがですか?

毎回泣けるのがすごいなあと思っています。もちろん演出の力もあると思いますが、台本を読んでいるだけでも毎回ぐっときます。ちょこちょこおもしろの部分も入ってきますけど、宮藤さんの心の熱い部分が出ている本だと思いました。

宮藤さんの言葉には強い力がありますよね。ご自身も役者をやっているからか、すっと入ってきやすいし、単に暗記するのではなく、気持ちでしゃべれる台詞になっていると思います。僕は他の作品にも出させてもらっていますが、今回の『いだてん』には一層熱を感じるので、よけいに楽しくやれています。

■プロフィール
三宅弘城(みやけ・ひろき)
1968年1月14日生まれ、神奈川県出身。ナイロン100℃に所属し、同劇団の公演の他、数多くの舞台や映画、ドラマに出演。音楽活動では、“石鹸”名義でパンクコントバンド・グループ魂のドラムを担当。特技は器械体操とボクシングで、NHK Eテレの幼児向け番組『みいつけた!』で、みやけマンとして人気を博す。近作のドラマは『監察医 朝顔』(フジテレビ)や『サ道』(テレビ東京)など

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