ひとつの世界観で「映画」と「舞台」2種類の物語を連動させるという、東映と東映ビデオが立ちあげた新企画「東映ムビ×ステ」第1弾『GOZEN』の"舞台"パート、『GOZEN -狂乱の剣-』(脚本・演出:毛利亘宏)が、9月12日より東京・サンシャイン劇場にて上演され、同日に公開ゲネプロとマスコミ囲み会見が行われた。

  • 左から、松村龍之介、前山剛久、元木聖也、矢崎広、若月佑美、浪岡一喜、毛利亘宏

「東映ムビ×ステ」第1弾で描かれるのは「時代劇」の世界。『GOZEN』=御前試合とは、腕に自慢の武芸者たちが殿の目の前で技を競い、一番強い者を決めるトーナメントのことである。徳川二代将軍秀忠の時代、北陸の海沿いあった府月(ふづき)藩を舞台に、藩主・望月甲斐正(演:浪岡一喜)の号令によって、武芸者たちを募って御前試合が行われようとしていた。

今年7月に公開された映画『GOZEN-純恋の剣-』(監督:石田秀範)では、『ロミオとジュリエット』をベースに、御前試合出場を隠れみのにして任務を遂行せんとする柳生隠密・青山凛ノ介(演:犬飼貴丈)と、府月藩筆頭家老・神谷眞三郎の娘・八重(演:優希美青)との激しい"恋"模様が、東映京都撮影所のベテランスタッフの手によって映像化された。今回の舞台『GOZEN-狂乱の剣-』では、凛ノ介と同じく御前試合に挑んだ若者・望月八弥斗(もちづき・はやと/演:矢崎広)にスポットが当てられ、彼を中心としたさまざまな人物が複雑に絡み合い、まさに"狂乱"という言葉が似合う、凄絶な"戦い"のドラマが繰り広げられるという。

公開ゲネプロに先立って行われた囲み会見では、主演の望月八弥斗役・矢崎広ほか主要キャストが揃い、東京・大阪と2か所で上演される今回の舞台についての意気込みを熱く語った。

亡き父の仇を討つという闘志を秘め、傾奇(かぶき)者を装う望月八弥斗(もちづき・はやと)を演じる矢崎広は、初日公演の日を迎えたことについて「ついに来たな!という気持ち。緊張もありますが、どんな風にお客様から観てもらえるだろう、という期待のほうが強い」と、自信を持ってコメントした。そして「毛利さんから台本をもらったときは、最後まで駆け抜けられるか不安に思い、ハードな稽古ではありましたが、キャストのみなさん、素敵なカンパニーに支えられ、ここまでやってくることができました」と、激しいアクションやダンスを交えた稽古をこなし、万全の態勢であることをアピール。シェイクスピア悲劇『ハムレット』をベースにした舞台の内容については「映画を観て舞台を観たくなりますし、舞台を観ると映画が観たくなります。ムビ×ステというひとつのジャンルとして、みなさまにお届けできるのではないか」と、映画と舞台の融合によって、ひとつの世界観が大きく膨らんでいくといった新鮮な体験をしてほしいと目を輝かせた。

二刀流で戦う正体不明の美剣士・流狂四郎(ながれ・きょうしろう)を演じる元木聖也は、「『GOZEN』は昨年冬から京都で映画『純恋の剣』の撮影をしていて、ほんとうに長い期間付き合っている作品。映画では深く描かれなかったキャラクターたちが、舞台ではより濃く"こんな風にしゃべるんだ""こんな風に動くんだ"という感じで描かれています」と、映画では明かされなかった人物たちの内面や意外な行動が舞台で観られることを強調。そして「毛利さんの台本を読んで、こんなにデカいスケールなんだ!と驚いたのが最初の感想。独特な世界観にどんどん引き込まれます」という、ストーリーの魅力について語った。

『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018年)の高尾ノエル/ルパンエックス&パトレンエックス役で、優れた身体能力を駆使して激しいアクションに挑んだ元木は、舞台での"二刀流"を用いた激しい立ち回りについて触れ、「みなさんの殺陣のレベルもすごく高いですし、あっと驚く展開もあるので、期待してほしい」と胸を張った。また「『ルパパト』のメンバーにも舞台を観に来てもらって、"宣伝"をお願いします! と言ってあります。たぶん来ると思います(笑)」と、放送終了後も強い絆で結ばれている『ルパパト』共演者からの応援を期待するコメントを残し、さわやかな笑顔をのぞかせた。

甲斐正を影から警護する凄腕の暗殺者・結城蔵人(ゆうき・くらんど)を演じる前山剛久は「稽古に入ってから今日を迎えるまで、あっと言う間でした」と、集中して稽古に臨んだようすをうかがわせた後「舞台の台本を読んで"蔵人、こんな感じなの?"と驚くことがいっぱい。映画では考えられなかったセリフや立ち振る舞いがあり、映画を観てから舞台をご覧になる人はビックリするのではないか。視覚・聴覚の両方で楽しめる作品です」と、舞台でさらなる発展を遂げる蔵人のキャラクター造形に意欲を燃やしていた。

妹・奈奈の身を案じる兄・小松原蓮十郎(こまつばら・れんじゅうろう)を演じる松村龍之介は「僕も映画から出演してきまして、撮影からこの日まで、充実した日々を送りました。毎日刺激のある稽古を経て、自信をもって初日を迎えられたのを嬉しく思います。舞台で嬉しかったのは、蓮十郎の"父"や"妹"が出てきてくれたこと。蓮十郎の家族への思いや、八弥斗との関係性の変化など、キャラクターの深いところを楽しんで」と、舞台へと興味を引っぱる役割を担った映画の"ラストシーン"を受けて、舞台では蓮十郎の人物描写が深まっていることをアピールした。

八弥斗と惚れ合っているが、父・烈山や兄から交際を反対されている奈奈(なな)を演じる若月佑美は「私はここにいる方たちの中で、唯一映画に出演していません。映画でのヒロイン(八重)ははかなくて、切ない部分が魅力でしたが、舞台で私が演じたヒロイン・奈奈はちょっと"強め"といいますか、芯をしっかり持っているところが強調されていると思います。男性キャストの方々がたくさん戦っている中で、女性がどういう風に立ち回って、色を添えていけるかが勝負だと思っています」と、主義主張をはっきりと口に出す活発なヒロインを演じる意欲をのぞかせた。

徳川家への謀反を企んでいる野心家、府月藩主・望月甲斐正(もちづき・かいのしょう)を演じる浪岡一喜は「僕は21年前、早稲田大学1年のとき演劇研究会(劇研)に入ったんですが、そこで当時4年だった先輩が毛利さんなんです。そして毛利さんの『少年社中』が立ち上がるという瞬間でした。少年社中の第1回公演のとき、ピンスポを主演の井俣(太良)さんに当てていたのが僕。そんなことを思い出していて、あれから21年後、こういう形で毛利さんと一緒に仕事ができるというのはすごいことだなあ、と感慨深いです。昔の汚いアトリエから始まって、こんなサンシャイン劇場という立派な場所でやらせてもらえるようになったのは本当に嬉しいし、自分の成長を昔の先輩に伝えたい」と、先輩である毛利との長年の信頼関係や、自身の地道な努力と成長をふりかえった。舞台の内容については「甲斐正は何かあると、蔵人! 蔵人! と呼んでいます。これはきっと、僕(甲斐正)と蔵人の中に恋物語があると思うんです。ちゃんと観ていただければ伝わるはずです。今回のテーマは、僕と蔵人の『GOZENずラブ』です(笑)」と、映画化もされた人気テレビドラマのタイトルをもじって、作品中でぶつかりあうさまざまな"愛"のかたちに注目してほしいと語った。

脚本・演出を手がけた毛利亘宏(少年社中)氏は「東映さんの新しいジャンル立ち上げのときに、僕を選んでいただき光栄です。『仮面ライダー』シリーズの脚本をやらせてもらったとき、石田監督にはお世話になりました。今回、映画を撮られた石田監督の胸を借りて、舞台ならではの『GOZEN』を成立させました」と、良い意味で映画との「ライバル関係」があることを明かし、映画を上回る満足度を! という強い意欲と挑戦を示した。さらに「今まで僕が演出家として培ってきた"すべて"をここに投入しました。映画と舞台、2つの作品が連動して、より大きな作品になるというのはクリエイター冥利。このダイナミズムを楽しんでいただきたい。映画を観た後にこの舞台をご覧になると、ビックリする要素がいっぱいです!」と、東映ムビ×ステの醍醐味を強くアピールした。

最後に矢崎は「令和という新しい時代にふさわしい作品になったのではないかと思っています。キャスト一同、汗をほとばしらせながらみなさまにメッセージを全力でぶつけたい。東京公演、そして大阪公演の千秋楽まで駆け抜けていきますので、どうぞ応援をよろしくお願いします!」と意欲を語り、幅広く応援を呼びかけた。

舞台『GOZEN-狂乱の剣-』は、9月12日~23日は東京・サンシャイン劇場、27日~29日は大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティにて上演される。

脚本・演出:毛利亘宏
出演:矢崎広、元木聖也、前山剛久、松村龍之介、若月佑美、井澤勇貴、松本寛也、井俣太良、廿浦裕介、梅津瑞樹、上遠野太洸、 AKANE LIV、山本亨、波岡一喜

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