セブン銀行は9月12日、日本電気(NEC)による世界トップクラスの認証精度を誇る顔認証技術を搭載した次世代ATM、その名も「ATM+」を開発したと発表した。今秋より順次、導入を進めていく方針だ。同日、セブン銀行とNECによる共同説明会が開催された。

  • セブン銀行とNECによる「ATM+」が登場した。写真は、セブン銀行の舟竹泰昭社長(右)と日本電気の新野隆社長(左)

    セブン銀行とNECによる「ATM+」が登場した

どこが変わった?ATM+

フィンテックをはじめとする技術革新により、新たな金融サービスが世の中に出始めてきた昨今。社会のキャッシュレス化により、コンビニのATM機については需要の落ち込みが指摘されているが、あえてこの時期に、セブン銀行では次世代ATMの導入に踏み切った。セブン銀行の舟竹社長が「いまこそ導入すべきタイミングだと判断した」と説明するATM+だが、従来機とはどこが違うのだろうか。

  • 従来機(左)とATM+(右)の比較。セブン銀行では2020年夏までに都内のATMを、2024年度までに全国のATMを順次、ATM+に入れ替えていくと説明している

    従来機(左)とATM+(右)の比較。セブン銀行では2020年夏までに都内のATMを、2024年度までに全国のATMを順次、ATM+に入れ替えていくと説明している

その最大の特長は、迅速かつセキュアに本人確認できるNECの顔認証AIエンジン「NeoFace」を搭載したこと。NECでは(利用環境が良好であれば)99.99%以上の高い精度で、本人かどうかを判断できるとしている。顔認証が利用できるメリットは大きい。例えば本人確認書類との照合により、より安全な取り引きが可能となる。ATMだけで銀行の口座開設も行える。将来的には、銀行のカードを持っていかずとも顔認証(と暗証番号)だけで銀行口座から現金を引き出せるサービスの提供も考えているという。

  • 顔認証と本人確認書類を照合すれば、より安全な取引が可能に。災害時など、銀行のカードが手元になくても顔認証だけで現金が引き出せるようになれば便利だろう

    顔認証と本人確認書類を照合すれば、より安全な取引が可能に。災害時など、銀行のカードが手元になくても顔認証だけで現金が引き出せるようになれば便利だろう

くの字に曲がった、2画面一体型のディスプレイを採用した。手元の左側には「Plusエリア」と呼ばれるスキャナーが使えるコーナーがあり、QRコード、本人確認書類(運転免許証 / マイナンバーカード / パスポートなど)の読み取りが行えるほか、非接触IC(FeliCa+Type A、B)が利用できる。PayPay、LINE Payといったスマホ決済サービスにも対応し、利用者層の拡大を狙う。

  • スキャナーを備えたPlusエリアを搭載

    スキャナーを備えたPlusエリアを搭載

  • スキャナーを備えたPlusエリアを搭載

    SuicaやEdyなどにも対応する

共同説明会において、ATM+の機能詳細について紹介したセブン銀行の深澤孝治氏は、次世代ATMを開発した経緯について「私たちが重要視していることは、お客様のライフスタイルの変化に応じたサービスを提供すること。決済手段の多様化、認証方法の進化、ネットサービスの拡大により、消費者動向が目まぐるしく変わる時代の中で、皆様の生活の役に立つべく、ATMにも新たな機能が必要だと考えました」と語っている。

  • 使いやすさが向上したATM+。ちなみにセブン銀行では、従来機とATM+の入れ替えにかかるコストについて、数百億円規模と見積もっている

    使いやすさが向上したATM+。ちなみにセブン銀行では、従来機とATM+の入れ替えにかかるコストについて、数百億円規模と見積もっている

まだまだATMは進化する

登壇したセブン銀行の舟竹社長は「コンビニに銀行があったら便利なのに、という声を受けて2001年にセブン銀行が誕生しました。『金融の近くて便利』を追求してきた、これまでの20年間でした」と振り返る。セブン銀行のATMは、いまや全国に25,000台を設置するまでに普及。金融機関615社以上と提携し、一日に約200万人の消費者が利用しているという。

「デジタル化とキャッシュレス化によりATMはオワコンだろう、という声も聞かれますが、まだまだATMは進化していきます。これからも多様なニーズに応えていきたい。デジタルとアナログを結び、バーチャルとリアルを橋渡しする存在を目指します」(舟竹社長)

  • セブン銀行 代表取締役社長の舟竹泰昭氏(左)と日本電気 代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏(右)

    セブン銀行の舟竹泰昭社長(左)と日本電気 代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆社長(右)

また、日本電気の新野隆氏は「今回のATM+は、第4世代にあたります。これは私事になりますが、個人的には20年前の第1世代から携わっています。当時は、銀行向けATMの半分のスペースしか許されず、しかも絶対に壊れてはいけないという、厳しい要求の下で開発が進められました。必要は発明の母と言いますが、セブン銀行様との共創で、素晴らしい開発ができたと自負しています」と話した。