1人の人間と1匹の犬、両者の切ない交わりやタイムマシンの不思議な関係が描かれたSF短編漫画「buddy(あるいはどのページ順に読んでもいい物語)」がツイートされ、注目を集めている。作者は、Twitterやpixivで漫画を投稿している、猫オルガンさん。タイトルの通り、どのページから読み始めても物語が繋がっていく構成に、感嘆の声があがっている。
buddy(あるいはどのページ順に読んでもいい物語) pic.twitter.com/RQv6n5228i
— 猫オルガン (@applebeesong2) September 9, 2019
2090年、1人の老いた博士がタイムマシンを完成させる。その一生を発明に捧げた彼は、「家族もおらず天涯孤独の身」。彼の脳裏には、子どもの頃に見た、あるものの記憶が蘇る。そこで鳴き声をあげるのは、飼い犬のウェルズ。その存在を認めて博士は「わしは天涯孤独じゃなかった」と思い直す。ただ、彼の残された時間は長くない。ウェルズの新しい飼い主を見つけないと、と思い至る。
その10年前、初老の学者が雨に打たれている1匹の子犬を見つける。「なんだおまえさん……どこかで見たような顔だな」と、子犬を傘の中に入れてやる学者。発明のために全財産をなげうってきた彼だが、それでもよければ「うちにくるかい?」と引き寄せる。そして「おまえさんに子供の頃に飼ってた犬の名前をやろう」として、その子犬をウェルズと命名する。
時は一気に遡り2025年、1人の少年が犬の最期を看取る。少年は「うう……さよならウェルズ……」と涙を流しながら、「僕はもう二度と犬なんて飼わないぞ……」と誓う。悲痛な面持ちで、こんな思いはもうしたくない、と吐露する。
2020年、少年は草原にて、上空から飛来する物体を発見。驚きながら「間違いない……あれはタイムマシン……SF雑誌で見たことある……」と確信するが、それは瞬く間にふっと消えてしまう。そんな彼の近くには犬が。「なんだいキミ……飼い主とはぐれたのかい?」と声かけながら、少年は犬の首輪にある名前を見つける。「ふぅん……おまえウェルズっていうのかい?」。
リプライには「一度最初から最後まで読んだ後、今度は4枚目から1枚目に向かって逆方向から読み返したくなる!」「鳥肌立ったわ……年代を掘り下げていく構成が上手」「何度もループして見てしまう……」「どこから読んでも話がつながるすごい」と、その構成力に感嘆の声が。また、「愛が輪廻してる」「出会いは冷たい雨でも、まぶたを閉じれば暖かい」と詩的なコメントも見られた。
さらに、「犬の名前の元ネタはH.G.ウェルズかな?」「SFの父ウェルズと同じ名前の犬はタイムマシンなんて経験してしまうんですね。子供の頃の博士、寿命を迎える博士どちらにも寄り添うということになるのでしょうか? 犬と人、深い縁で繋がっていてこれこそホントの幸福!」など登場する犬の名に関する指摘も。H.G.ウェルズは、一種のディストピアSF小説とも言える名作『タイム・マシン』を1895年に発表したことで知られる。
この短編の作者はTwitter、Instagram、pixivなどのSNSで漫画を投稿している、猫オルガンさん。これまでにも「ロックンロールは鳴り止まないっ」「温かい方程式」「魔女旅に出る」「魔法を信じ続けるかい?」といったセンチメンタルなオリジナルの短編がポストされている。