個人型確定拠出年金(iDeCo)は、掛金を毎月積み立てるだけではなく、定期預金や投資信託などを購入して運用する仕組みになっています。

このときに、どの運用商品を購入するか、そして積み立てるお金のうち、どの運用商品にどれくらいの割合を振り分けるかによって、積み立てたお金が将来どれくらいの価値になるかが左右されます。

しかし、これまでに運用をした経験があまりない人は、ラインナップの中からどの運用商品を選べばよいのか、いくら購入すればよいのかを判断するのが難しいかもしれません。

そこで、資産配分の方法とタイミングの考え方について紹介します。

  • iDeCoの資産配分のポイントは? 配分変更とスイッチングの違い※画像はイメージ

    iDeCoの資産配分のポイントは? 配分変更とスイッチングの違い※画像はイメージ

資産配分とは?

資産配分とは、投資するお金を株式や債券など異なった種類の資産に振り分けることです。これは、iDeCoに限らず運用をするときの基本です。

株式ばかりで運用するなど、特定の種類の資産だけに資金を集中させると、値下がりしたときに運用資金全体の価値が下がってしまいます。債券や不動産などは、株価が下がったときに値上がりする、変わらないなど、株式とは異なった値動きをすることがあります。そこで複数の種類の資産に資金を分けて投資をすると、どれかが値下がりしても運用資金全体の価値が大幅に下がるリスクを抑えることができます。これを「分散投資」といいます。

なぜiDeCoで資産配分が必要なの?

iDeCoは、積み立てた掛金を使って複数の運用商品のラインナップから選んで購入するしくみになっています。ですから、これから積み立てる掛金でどの運用商品をどれくらい購入するかを指定しておく必要があります。つまり、資産配分を指定しておくのです(配分指定)。

運用商品のラインナップは、iDeCoの口座を開設した金融機関によって異なりますが、一般的には定期預金や投資信託があります。定期預金は元本割れのリスクがない安定資産(「元本確保型」といいます)、投資信託は値動きや元本割れのリスクがある資産です。

資産配分を検討するときには、まずはお金を元本確保型とそれ以外のどちらにあてるのか、あるいは両方にあてるのかを考えます。両方にあてる場合には1:9なのか、5:5なのかなど、その割合を検討します。

また、元本確保型以外の投資信託には、さまざまな種類があります。株式を中心に運用するものや債券を中心に運用するもののほか、不動産、原油や金などのコモディティ(資産価値のある商品)などを含めた組み合わせのパッケージで運用するものなどがあります。さらに、それぞれについて日本の資産に投資するものと、外国の資産に投資するものがあります。

ひとくちに投資信託といっても種類によって値動きや将来の運用成果が変わることがあります。iDeCoでどんな投資信託を選ぶかを決めることは、株式を中心に運用するか、債券を中心にするか、複数をバランスよく組み合わせるかなど、資産を配分することになります。

資産配分をするときには、仮に損失が出たとするとどの程度までその損失を受け入れることができるか、60歳までにどのくらいの利益を出したいかなどに合わせて考えます。より高いリターンを狙いたい方は資産の中でも値動きの大きい株式等の配分比率を高くし、リスクを抑えたい方は値動きの小さい債券等を中心に資産の配分をするのがよいでしょう。

配分変更とスイッチングの違いは?

資産配分をするのは、iDeCoを始めるときだけではありません。運用を続けている間に、配分の割合を見直すこともできます。

配分変更

配分変更とは、毎月の掛金でどの運用商品をいくら購入するかの配分比率を変えることです。

たとえば、毎月1万円の掛金で、「定期預金Aを2,000円、日本株式を中心とした投資信託Bを4,000円、外国債券を中心とした投資信託Cを2,500円、外国株式を中心とした投資信託Dを1,500円分購入する」と指定し、同じ金額、同じ組み合わせで毎月購入し続けていたとします。

このうち、預金を買い付けるのをやめて、その分投資信託Dの買い付けを増額するといったように、新たな掛金で購入する運用商品の割合を変えるのが、配分変更です。

  • 配分変更の例

    配分変更の例

スイッチング

一方スイッチングは、これまでに保有してきた運用商品を売却または解約して、他の運用商品に買い換えることを指します。

たとえば、「預金A」(5年定期)の残高の一部を売却して、「投資信託D」(外国株式の投資信託)を購入するといった手続きを指します。

仮に毎月1万円の掛金のうち、「預金A」(定期預金)を月々2,000円×12カ月投資していたら、1年後の預金Aの残高は2万4,000円の残高になります。この2万4,000円の預金を売却または解約し、そのお金で新たに「投資信託D」(外国株式の投資信託)2万4,000円分を一括で購入するような手続きが、スイッチングです。

配分変更やスイッチングのタイミングはいつ?

では、配分変更やスイッチングはどんなタイミングでするとよいのでしょうか。

配分変更は中長期的な視点で

掛金の配分は、回数制限なく変更することができます。ただし、iDeCoは長期にわたって少しずつ積み立てながら運用するものです。あまりこまめに変更すると、一つひとつの運用商品をじっくり積み立てられず、運用の方向性が定まりにくくなることがあります。

まったく変更せずにそのままにするのは問題ですが、短期的な市況の変化に合わせてこまめに配分変更する必要はそれほどありません。

むしろ、ライフプランに合わせて中長期的な観点で見直すとよいでしょう。たとえば若い時期には株式を中心とした投資信託を多めに、年金を受け取る60歳以降まで近づいてきた時期には定期預金や債券など、安定性の高い資産を中心に運用する投資信託を多めに配分するなど、運用に対してどれくらいのリスクをとれるかの考え方に沿って配分変更するとよいのではないでしょうか。

スイッチングは利益確保やリバランスのために

スイッチングは、おもに運用で出た利益を確保したいときや、値動きによって資産配分が当初と変わったときに行うのが効果的です。

iDeCoでは、60歳以上にならないと今まで積み立てたお金を現金として受け取ることができません。かりに投資信託が値上がりして利益が出ていても、その時に引き出すことはできないのです。そこで、投資信託の利益相当分を売却して、定期預金などの元本確保型商品を買い付けることで、利益を確保することができます。

もうひとつ、リバランスを行ううえでもスイッチングが有効です。先ほどの例で、「預金A」を20%(2,000円)、「投資信託B」を40%(4,000円)、「投資信託C」を25%(2,500円)、「投資信託D」を15%(1,500円)で買い続けていくと、それぞれの残高が積みあがっていきます。

投資信託の価値が変わらなければ、残高に占めるそれぞれの割合はずっと2 : 4 : 2.5 : 1.5になるはずです。

しかし実際には投資信託は値動きをします。日本の株価が上がれば、日本株を中心とした投資信託Bの価値が上がり、残高に占める割合が40%から50%に上がるかもしれません。

このような場合に、スイッチングによって割合が高くなったものを売却して割合が低いものを購入し、もとの資産配分の割合に戻すよう調整することを「リバランス」といいます。

リバランスは年に1〜2回程度行うのが目安です。定期的に運用状況をチェックする習慣にもなります。

ただし1年のうちにあまりひんぱんにスイッチングすることはおすすめしません。特に一部の投資信託には信託財産留保額という売却時の手数料がかかるためです。投資信託を売却するときに売却金額から差し引かれ、運用残高が減ってしまうことがあります。

長期の運用では資産配分と定期的な調整を

iDeCoは積み立てをスタートしたらそれで終わりではありません。将来の老後資金に向けて計画的に準備を進められているか、定期的に確認しながら運用することが大切です。運用の状況やライフプランに応じて、毎月の掛金や積み立てた残高の資産配分を見直し、上手に資金を増やしていきたいですね。