ロータス・カーズの日本正規輸入代理店であるエルシーアイは、ロータスのフル電動ハイパーカー「エヴァイヤ」(Lotus Evija)をお披露目した。会場となったのは富士スピードウェイ。ロータスファンの祭典である「Japan Lotus Day 2019」の開催当日で、日本の見込み客へのアピールというわけだ。ロータスの伝統である開発コードナンバー「Type130」にちなみ、台数は130台の限定生産となる。
エクステリアコンセプトはポロシティ(多孔性)
エヴァイヤのボディは全長4,459mm、全幅2,000mm、全高1,122mm。米国の超音速戦闘機から着想を得たフルカーボンのエクステリアは、低いフロントとたくましいリアの間に、ティアドロップ型キャビンが収められたロー&ワイドなスタイルだ。
ロータス・カーズのリードデザイナーであるバーニー・ハット氏は富士スピードウェイに来場し、デザインの要諦を以下のように説明した。
「最も特徴的なのは『ポロシティ』(多孔性、多くの穴がある)と呼ぶデザインコンセプトで、ボディサイドのリアクォーター部を貫くベンチュリートンネルが最も目立っています。そのヒントはル・マンのレーシングカーから得たもので、空気が最適な流れでボディシェルを通り抜ける構造になっており、そのエアフローがホイールを抑える圧力を増大させ、さらにドラッグも低減します。左右のベンチュリートンネルの出口はリアエンドにあり、LEDの縁取りが赤いリボンのような印象的なテールライトになっています。夜になると、ジェット戦闘機のアフターバーナー(再燃焼装置)のように見え、各トンネル内には内部を照らすLEDも隠されています」
「ヘッドライトには、世界で初めてハイビームとロービームの両方にレーザーを採用しました。2枚のフロントスプリッターは、バッテリーパックとフロントのeアクスルを冷却する役目を持ち、フロントセクションやサイドウイングは、偉大なF1カーである『Type72』へのオマージュとなっています。空気抵抗を低減するためドアミラーはなくし、フロントウイングに組み込まれた電動式カメラがせり出す仕組みとしました」
ハット氏によれば、エヴァイヤが目指したのは「息を呑むような美しさ」と「時代に即した形」、そして、「唯一無二のデザインフィーチャー」だという。デザインにはロータス流のプレステージを取り入れ、「すぐにロータスとわかる形」を狙ったそうだ。
シャシーはワンピース構造のカーボンファイバーモノコックで、フロントリアのサブフレームを合わせても重量はわずか129キロ。1,680キロという車両全体の重量は、EVハイパーカーとしては世界最軽量だ。
最高出力2,000馬力のモーターを搭載
パワートレーンなどの説明役は、ロータス・カーズのエグゼクティブディレクターであるジェフ・ダーウィン氏だ。
「エヴァイヤの名前は、『Eve』という単語の変化形から生まれたもので、『最初の存在』『命あるもの』という意味を込めました。クルマづくりでもモータースポーツでも、パイオニアとして確固たる地位を築いているロータスにとって、ふさわしい名前です」
「エヴァイヤは、自動車のデザインにとっても、エンジニアリングにとっても魅力的な存在です。しかも俊敏でたくましく、現代的なクルマでもあります。同時に、ロータスのDNAとキャラクターも引き継いでいます。美しい外観の下にカーボンファイバーモノコックと超先進的な電動のパワートレーンを搭載しており、そのパワーは、ロードカーとして初めて2,000psを超えました」
パワートレーンは合計で最高出力2,000ps、最大トルク1,700Nm(173.3kg)に到達。それぞれが500psを発生するモーターで四輪を駆動する。電力を供給するリチウムイオンバッテリーパックは2,000kW級で、2シーターの座席のすぐ後ろに収められ、バッテリーカバーがリアガラス越しに見える状態になっている。停止状態から時速100キロまでの加速は3秒以下、300キロまでの加速は9秒以下。最高時速は320キロだ。時速100キロから200キロへの加速が3秒以下、200キロから300キロへの加速が4秒以下というから、中・高速域での加速力についても圧倒的だ。
エヴァイヤは電気自動車(EV)なので、充電時間も気になるところ。ロータスによれば、このクルマは800kW供給に対応可能なユニットを搭載しているため、現時点では商品化されていないものの、実現すればわずか9分でフル充電できるようになるそうだ。現時点で最速の350kW充電ユニットなら12分で80%、18分で満充電となる。
航続距離はWLTP複合サイクルで250マイル(400キロ)、NEDC複合サイクルで270マイル。高度なエアロダイナミクスと4つのラジエーター冷却パッケージがバッテリーを最適な温度に保つので、「トラック」モードにセットした際でも、7分間は出力レベルを下げることなくフルパワーが引き出せるという。
商品化の立役者は中国企業?
両サイドのディヘドラル・ドアは、ドアハンドルがなくリモコンキーで開閉するタイプだ。乗り込むと、ルーフコンソールに組み込まれたスイッチが作動してドアが閉まるシステムになっている。
乗れば目に飛び込んでくる「フローティングウイング」型のダッシュボードは、エクステリア同様にポロシティコンセプトを反映している。ダッシュボードにはインストルメントパネルとエアダクトが収められていて、「ロータスのコンポーネントは何一つ、安易なものであってはならない」というコーリン・チャップマン(ロータス・カーズの創業者)の鉄の掟が反映されている。
ステアリングホイールは、LMP(ル・マンプロトタイプ)やF1カーを彷彿させる楕円形で、「レンジ」「シティ」「ツアー」「スポーツ」「トラック」の走行モード選択スイッチが下部中央に配置してある。シンプルかつ唯一のデジタルディスプレーには、通常は必要最小限の情報のみが表示されるようになっている。
センターコンソールもポロシティデザインで、宙に浮いた“スキーのスロープ”のような形状を持つ。触覚フィードバック技術を用いたタッチ式ボタンが配置され、六角形のくぼみが付けられた各ボタンは、表面に光が当たると自然の創造物であるかのような視覚効果が生まれるという。
ダーウィン氏によると、エヴァイヤを購入するオーナーは「多くのクルマを所有し、スーパーカーや電動ハイパーカーをすでに持っている人が望ましい」そう。また、この時期にロータスがハイパーカーを出した理由については、「こうしたハイパーカーを作ろうという計画は以前からあったものの、なかなか実現できなかった。今回は、親会社である中国の吉利汽車(ジーリー)の力が大きかった」とのことだ。
エヴァイヤの生産は2020年、ロータスが故郷の英国(ヘセル)に新設する専用の製造施設で始まる。価格は200万ポンド(日本円で約2億6千万円)とのこと。エヴァイヤのオーナー向けサービスメンテナンスについても計画中だそうだ。