スタートアップの世界にはしばしば「ペンギン」が登場します。可愛らしいペンギンが、競争の激しいビジネスの世界でいったいどんな意味をもつのでしょうか? 解説していきます。
ファーストペンギンとは?
ビジネスにおける「ファーストペンギン」とは、「リスクのある新分野にチャレンジして利益を得る人」のことです。
新規市場の開拓には、さまざまな「先行者利益」があります。それまで無かった製品・サービスを世に出すことができれば、顧客をいち早く獲得したり、強気の価格で販売できたり、制度面・技術面で主導権を握ることができるのです。反面、成功するかどうか分からない分野に投資をするわけですから、大きなリスクを負う必要があります。
こうしたリスクに対して果敢に挑戦していく起業家を、ファーストペンギンと呼びます。
ファーストペンギンの語源
ファーストペンギンはペンギンの習性に由来する言葉です。
南極に住むペンギンは水の中をまるで飛ぶようにすいすいと泳ぎ、魚類やイカ・タコなどを食べて生活しています。しかし、アザラシやシャチといった大型の捕食者にはかなわず、出会ったら丸吞みにされてしまいます。
餌を探しに行きたいが、食べられるのは怖い。ペンギン達は氷上にずらっと並んで、なかなか海に潜ろうとはしません。それでも、とうとう最初の一羽が飛び込んで、天敵がいないことを確認できたら、他のペンギンたちも続々と海に入っていきます。
最初の一羽は、最もリスクが大きい代わりに、逃げ出す前の魚をたくさん食べることができるチャンスを持ちます。ですから、未踏の世界に挑む起業家のことを、この「最初の一羽」になぞらえて、「ファーストペンギン」と呼ぶようになったのです。
ファーストペンギンの使い方と使用例
「あの人はファーストペンギンだ」「あなたもファーストペンギンを目指しなさい」というように、ファーストペンギンは最初に行動を起こす人に対して使う言葉です。
ファーストペンギンとセカンドペンギンの違い
ファーストペンギンに対して、セカンドペンギンという言葉もあります。ファーストペンギンが海に飛び込んで、危険が少ないとわかったらすぐさま後を追った「二羽目のペンギン」がセカンドペンギンです。
ファーストペンギンがリスクを背負ってチャレンジする起業家ならば、セカンドペンギンはリスクが小さいことを即座に見極めて行動する企業家といえるでしょう。
ファーストペンギンとセカンドペンギンの具体例
『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』というルポルタージュが存在するように、楽天の創業者である三木谷浩史氏は、日本で最も成功したファーストペンギンの一人だといわれています。インターネットで物を買うことがまだ常識でなかった時代に、ECモールの事業を開拓したのが楽天です。
ITの分野では「最初に勝った者が最も大きく利益を獲得する」といわれています。あくまでも「最初に勝った者」であり、「最初に始めた者」ではない点が注意です。
Googleが検索サービスを最初に提供したわけではなく、FacebookがSNSを最初に提供したわけではありません。これらの企業は、優れた技術やマーケティングによって成功したセカンドペンギンであるといえるでしょう。