今年もIFAに出展したパナソニックは、オーディオ・ビジュアル分野の展示も充実していました。中でも来場者の目を引いていた、透明な有機ELパネルを活用した映像インスタレーションとしても使えるディスプレイの試作機、そしてテクニクス初のイヤホンを紹介します。

  • ハリウッドのコンテンツとパナソニックのテクノロジー、その親和性をアピールするために展示された、ダークナイト三部作に登場する「実物のバットモービル」も大人気

スイスの家具メーカーとコラボした、透明な有機ELディスプレイ

「Transparent OLED=透明有機EL」と名付けられた展示は、実は2018年のIFAでもパナソニックのブースで動いている様子を見ることができました。ただ、それは未来の生活提案という特別展示の中であり、ワインセラーのトビラに搭載したり、リビングのインテリアのガラス扉と合体していたり。2019年の試作機のような形で、単品のディスプレイ製品として切り出した展示を、筆者は初めて目の当たりにしたように思います。

  • パナソニックのブースに展示された、透明有機ELディスプレイの試作機。大勢の来場者が注目していました

55インチの透明有機ELディスプレイを少し斜めに傾けて、美しいウッドのボックスにはめ込んでいます。とても洗練されているプロダクトデザインは、パナソニックのプロダクトデザイナーと、スイスに拠点を置く家具とインテリアのトップブランドであるヴィトラ社のコラボによるものです。

デモをしていたディスプレイは2種類。1つは透過するパネルで、映像を点けていないときには木枠とガラスパネルを組み合わせた静かな家具のよう。もう1つは、透過しないパネルを載せて、映像を点けているときはテレビとしてしっかり映像が見られるもの。これら2種類を試作してデモを行い、反響を確かめていました。

  • こちらは透明度の高い有機ELディスプレイを搭載して、情報ディスプレイやインスタレーションとしても使えるイメージ

  • 一方、画面の透過率を下げて普通に映画などを楽しめるようにしたコンセプトモデルも展示

パナソニックの担当者は「ディスプレイ然とせず、ナチュラルに室内に溶け込むデザインを目指した」と語っています。今回展示されているものは商品化を見据えて開発されているプロトタイプですが、IFAの展示を見て「今すぐにでも欲しい!」という引き合いがビジネスのディーラー、一般来場者の双方から寄せられているそうです。

プロの映像制作現場を支える、大画面業務用モニター

映像技術の展示としては「Megacon=メガコン」と仮称を付けた、業務用を想定した高コントラストの液晶リファレンスモニターの試作機を出展していました。開発に着手した背景には、パナソニックの大型有機ELテレビを制作現場のリファレンスとして使っているプロの映像クリエイターが増えてきた中で、プロの仕様に耐える本格仕様の「大型サイズ」業務用モニターを提供したいという狙いがあったそうです。

  • 液晶を採用する業務用ディスプレイ「Megacon」の試作機

Megaconは、視野角が広いIPS方式の液晶パネルを採用しています。前面に4K、後面にフルHDという2枚のディスプレイを並べて配置し、バックライトの明滅を正確にコントロール。液晶の特長である高いピーク輝度を生かしながら、黒色の再現性も高めて豊かなコントラスト表現が可能になるといいます。デジタルシネマの色域規格「DCI-P3」の99%をカバーする広い色再現と、1,000ニットのピーク輝度を備えます。今後も、55インチの大画面モニターとして開発が進められるそうです。

このほか特別視聴室では、2020年にパナソニックが発売を予定するテレビ「VIERA」に搭載するために開発を進めているという、「Filmmaker Mode」の技術コンセプト展示が行われていました。こちらは映画フィルムを再生したときの本来の映像を、最先端のテレビによるスムージング処理をかけずに、ありのまま再現するモード。

  • 特別視聴室では、Filmmaker Modeの技術試写も体験。写真からは伝わらないと思いますが、右側の試作機ではよりフィルムライクな映像が楽しめました

  • パナソニックのテレビ、VIERAの現行プレミアムモデルを紹介。2019年モデルからNetflix画質モードが追加されています

ユーザーがテレビを楽しむ家庭の環境で、いわゆる映像クリエイターの意図を忠実に再現するために設けられるモードです。マーティン・スコセッシやジェームズ・キャメロンをはじめとする、ハリウッドの著名監督からラブコールを受けて開発がスタートしました。パナソニックは2020年モデルのテレビに実装を予定していますが、ほかにもLGエレクトロニクスやVIZIOがサポートを表明しています。

テクニクスからは約12万円の高級イヤホン

パナソニックのプレミアムオーディオブランド「テクニクス」からは、初めてのイヤホン「EAH-TZ700」が展示されていました。欧州で11月に発売を予定する新製品で、価格は1,199ユーロ(約12万円)という高級モデルです。

  • テクニクス初のイヤホン「EAH-TZ700」

  • MMCX端子によるリケーブルにも対応

10mm口径のダイナミック型ドライバーは、振動板中央のドームに薄膜の金属を使い、フリーエッジ構造を採用。小柄なきょう体ながら、歪みのないパワフルなサウンドを実現しました。また、磁気回路の一部に磁性流体の技術を投入したことによって、正確なストロークを実現。ドライバーの性能を余すところなく引き出します。

会場で試聴できたサウンドは、透明感と広い音場感に富んでいました。伸び伸びとした鳴りっぷりの良さが魅力的です。IFAの開催と同時期に、日本国内のヘッドホン関連イベントにも展示されたようで、日本でも2019年秋ごろの登場を期待したい製品です。

DJ用ヘッドホン「EAH-DJ1200」も出展されました。11月に179ユーロ(約21,000円)で発売を予定しています。テクニクスのターンテーブルと雰囲気を近づけた、プロフェッショナル志向のデザインが人気を集めそうです。

  • テクニクスのDJ用ヘッドホン「EAH-DJ1200」