『2019年版 住みたい田舎ベストランキング』(宝島社)総合ランキング第1位、楽天トラベルが調査した「2018-2019年末年始、国内旅行人気急上昇エリアランキング」第1位、ジープラスメディアによる外国人が訪れるべき日本の観光地ランキング「Top 10 Japan Travel Destinations For 2019」第1位、メディプラス研究所が実施した「ストレスオフ(ストレス指数の低い)都道府県ランキング 2019」第1位――。
数々の受賞歴を誇るこのエリア。どこだかわかる人はいるだろうか。
答えは「鳥取県」。厳密にいうと、住みたい田舎ベストランキングでは「鳥取県鳥取市」が選ばれたのだが、「大きなまち」のカテゴリーにおいて、同市は「総合部門」「若者世代が住みたい田舎部門」「自然の恵み部門」の3冠を達成している。
多くの人が魅力的だと認める鳥取県。2018年以降、多くの都道府県で「eスポーツ協会」が生まれたように、この地でもeスポーツ協会が誕生する。そして、2019年7月20日には、米子市にある皆生温泉「東光園」でeスポーツイベント「温泉×eスポーツDAY in 鳥取」を開催。イベントでは、『鉄拳7』『ストリートファイターV AE(ストV)』『ウイニングイレブン 2019』『荒野行動』のトーナメントに加え、『大乱闘スマッシュブラザーズ SP』『クラッシュロワイヤル』『ぷよぷよeスポーツ』の交流会などが行われた。
最近増加している地方のeスポーツイベントだが、「温泉×eスポーツDAY」最大の特徴は「畳の大部屋」で実施されたことだろう。宴会が行われるような大広間に、ちゃぶ台や座椅子、そして、空間にあまり似つかわしくはないPlayStation 4などのゲーム機やディスプレイが並んだ。
「温泉というリラックスできる環境で、ゲームをしながら交流できるイベントを行いたいと考えていました。ゲーミングチェアを並べてカッチリやるのもいいですが、ゴロゴロと寝っ転がりながらバトルロイヤルゲーム『荒野行動』をするようなラフな雰囲気を演出したかったのです。なので今回のイベントは、宴会をテーマに、畳の部屋で実施することに決めました。目的はもちろん、eスポーツによる鳥取県の活性化です」
「温泉×eスポーツDAY」の主催者である鳥取県eスポーツ協会の渡部裕介氏は、イベントのコンセプトを語る。やはり、時代が令和に移ろうとも、畳や木から漂う“和の香り”が安心感を与えることには変わりないようで、参加者はリラックスした表情でイベントを楽しんでいた。
外に出て気づいた鳥取の魅力
まるで“夏休みのおばあちゃんち”のような空気が漂う「温泉×eスポーツDAY」。渡部氏は鳥取の活性化が目的だと話すが、いくつも地方創生の手段があるなかで、eスポーツを選んだ理由はなんだろう。
「eスポーツを選んだのは、鳥取に新しい風を吹かせたいと考えたためです。ただ、普通のeスポーツ大会を開催するだけではおもしろくないですよね。なので、鳥取でしかできないようなイベントにしたいと思い、鳥取の観光資源の1つである温泉でリラックスしながら、ワイワイと楽しめるイベントを実施しようと思いました」
何かと話題のeスポーツ。「2018 ユーキャン新語・流行語大賞」トップテン受賞語に選ばれるほど盛り上がりを見せており、勢いはまだ衰えることを知らない。渡部氏は、その流れに乗ることで鳥取に新しい風を吹かせられると考えたのだろう。
だが、数々のランキングで上位を獲得するほどの街である。eスポーツで新しい風を吹かせなくとも、盛り上がってきているような気もするが、そうではないのだろうか。
「たしかに、住みたい田舎ランキングなどでは1位に選ばれましたが、まだまだ盛り上がっているとはいえないでしょう。特に、住んでいる立場からすると、鳥取県には刺激がないと話す人がたくさんいます。実際、私も昔は何もないと思っていました。鳥取から出たくて出たくて仕方なかったですね。しかし、18歳で東京へ行き、海外でさまざまなビジネスに触れてから、改めて鳥取を見ることで、その考えは変わりました。いいところがたくさんあると気づけたんです」
渡部氏は、住んでいるだけでは見えてこなかった鳥取県の魅力として、競合が少なくブルーオーシャンがあること、生活コストの安さ、自然の豊かさなどを挙げた。
いまはまだ、盛り上がっていると言い切れる状態ではないが、鳥取には多くの魅力がある。そこをうまく発信できれば地域の活性化に結びつけることができるかもしれない。そう考えた渡辺氏は、eスポーツのイベントに着手。「温泉×eスポーツDAY」を開催したというわけだ。