パナソニックがIFAで見せているスマート家電による「これから3~5年、“少し先の未来”にある豊かな生活提案」の特別展示、筆者はここ数年いつも楽しみにしています。2019年のテーマは、生体データのセンシングやマシンラーニングの技術を生かして、人の内面・外面を健康的にするパーソナライゼーションでした。
「Future Area」と呼ばれる特設スペースに入ると出迎えてくれる光のインスタレーションは、パナソニックのテクノロジーを駆使したスマートホームをイメージしています。
具体的な方法に関する言及はなかったものの、様々なセンシング技術を使って、家の中に暮らすユーザーの生体データを自然に、負担を感じさせることなく取得します。その後に、クラウドに送られたデータを解析して、機器や空間がユーザー個人とそのコンディションを認識しながら最適なケアを提供する……というサービスを実現します。
IFA 2019のFutre Areaにはまだコンセプト段階とはいえ、使用方法を具体的に思い描けるモックアップ(模型)も多数用意されていました。スマート家電が私たちの生活にどんな幸せをもたらしてくれるのか、わかりやすい展示内容だったことが印象的でした。
アウタービューティ・インナービューティ
コンセプトモデルのテーマは、人の外面の美しさを高める「アウタービューティ」と、内面を磨く「インナービューティ」。この2つのスマート家電に大別されていました。
アウタービューティ用としては、頭皮に頭髪、肩や顔の肌を美しい状態に保つためのウェアラブルデバイスがそろいました。ネックバンドタイプの「TONE」とヘッドバンドタイプの「GROW」は、それぞれリラックスした状態で肩や頭に装着。クラウド上でユーザーごとに管理されているデータと通信しながら、肌のコンディションを改善したり、血流の活性化をうながしたりするためのウェアラブルデバイスです。
TONEは、ホットスチームで肌の状態を整えたり、コラーゲンを生成する赤色光を照射して首回りのたるみをケア。肌の状態を美しく保ちます。GROWは頭髪の状態を把握しながら、特定波長の赤外線を出して頭髪の血流を活性化。細胞を増やして発毛・育毛をうながすウェアラブルです。筆者も身を乗り出してプレゼンテーションに耳を傾けてしまいました。
「WAVE」は、就寝前後に頭に当てて頭皮をマッサージしてコンディションを整える、ヘッドスパ効果を目的としたヘルスケアデバイスです。頭のコンディションに関するデータをどのように取得しながら、状態を整えてくれるのか気になるアイテムでした。
このほかにも実機の展示はなかったものの、スリープケア系のコンセプトモデルとして「EASE」という製品が紹介されていました。ベッドルームの壁に設置して、微細なスチームと赤外線を寝ている間に浴びて美肌ケアを行うというデバイス。スチームやアロマの香で快適な目覚めをうながしてくれる機能なども搭載して欲しいと、勝手にイメージを膨らませてしまいました。
一方、インナービューティをケアするためのデバイスとしては、おもにユーザーの身体の状態に合わせて、最適な食事を提案するフードソリューションを中心に紹介していました。
「SHOT」はユーザーのコンディションを把握して、補うべき栄養素を含む食材を提案。スムージーのような、栄養価の高い飲み物を簡単に作れるジューサーのコンセプトです。専用の材料をパックにして、ユーザーに届けるような活用スタイルも提案されていました。
「LIFT」は温度や圧力を自動的にコントロールしながら、ユーザーの健康増進に最適な食事を調理してくれるフードケアデバイスです。ボディコンディションを保つための栄養管理、そのノウハウやテクノロジーには一般の生活者だけでなく、アスリートからも熱い視線が注がれています。
今回パナソニックがお披露目した提案型のスマート家電は、個人の新築家屋にすべて一気に投入することは難しいと思います。よって例えば、多くのアスリートが生活をともにする寮や合宿設備などから実験的に導入して、その効果を一般生活者が手軽に使えるスマート家電に落とし込んでいく形が理想的なのかもしれません。