8月も終わりを迎えましたが、まだまだ暑い日が続いていますね。9月に入っても、熱中症の警戒が必要な日々が続きそうです。今回は、熱中症の症状や対策について、子どもや高齢者、ペットなど、それぞれに分けて注意点をまとめてみました。しっかりと対策をして、残暑を乗り切りましょう!
熱中症とは? どんな症状?
熱中症とは、高温多湿な環境に私たちの体が適応できないことで生じるさまざまな症状の総称のことを言います。人間の体は、体温があがった際には基本的には汗をかき、身体の表面から熱を空気中に逃がして37℃を超えないように出来ていますが、体外にうまく熱を捨てられないと、体に熱がたまってしまいます。このような状態を熱中症といいます。
主な症状は以下の通りです。
1.めまいや顔のほてり
めまいや立ちくらみ、顔がほてるなど。一時的に意識が遠のいたり、腹痛などの症状が出たりすることもある。
2.筋肉痛や筋肉のけいれん
「こむら返り」と呼ばれる、手足の筋肉がつるなどの症状が出る。筋肉がピクピクとけいれんしたり、硬くなったりすることも。
3.体のだるさや吐き気
体がぐったりし、力が入らない。吐き気やおう吐、頭痛などを伴うこともある。
4.汗のかき方がおかしい
汗が止まらない、もしくはまったく汗をかかないなど、汗のかき方に異常がある。
5.体温が高い、皮膚の異常
体温が高く、皮膚を触るととても熱い、皮膚が赤く乾いているなど。
6.呼びかけに反応しない、まっすぐ歩けない
声をかけても反応しなかったり、おかしな返答をしたりする。または、体がガクガクとひきつけを起こす、まっすぐ歩けないなどの異常がある。
7.水分補給ができない
呼びかけに反応せず、自分で上手に水分補給ができない。
一口に「熱中症」と言っても、その症状はさまざまなので、上記のような症状があったら熱中症の疑いがあることを頭に入れておくと安心です。特に6、7は危険な状態ですので、すぐに医療機関を受診するようにしましょう。
では、主な症状に関しては理解しましたが、熱中症のリスクが高い状況について、世代ごとで違いはあるのでしょうか。最近はペットも大切な家族の一員だという方も多いかと思いますので、それぞれの注意点や対策を見ていきましょう。
働く人たちの熱中症リスク
ビジネスパーソンなどの働く人たちにとっても、熱中症は大きな脅威となります。その中でも、建設業や製造業、運送業や警備業など屋外で長時間働くことが多い人たちは特に注意が必要です。作業のために通気性の悪い衣服や保護具を着用する場合、高温多湿・直射日光や無風などの条件下で作業を始めた初日~数日間や、休み明けなどは体が暑さに慣れていないタイミングは特に注意してください。対策としては以下のとおりです。
【対策】
・暑さ指数(WBGT値)が計れる測定器を用いて、基準値を超えていないか確認する
・帽子をかぶったり、日陰で作業をするなどして直射日光をさえぎる
・扇風機などで風通しをよくする
・こまめに休憩を取る
・身体を適度に冷やせるグッズや設備を利用する
・水分、塩分を定期的に補給する
・吸湿性や通気性がよい素材の服を選ぶ
・できるだけ1人では作業せず、周囲の人が変化に気づける環境づくりをする
オフィスなど屋内で働く人も、通勤時の満員電車や外回りの際など、その環境によっては熱中症になる可能性があります。できるだけ通気性の良い服装をこころがけ、日かげを選んで歩くなど、日々の生活を工夫して熱中症から身を守りましょう。
子どもを熱中症から守る
乳幼児は自律神経の働きが未熟で、放熱や発汗による体温調節がうまくできないため、大人に比べて熱中症にかかりやすいといわれています。また、新陳代謝も活発なので、汗や尿として体から出ていく水分が多く、脱水を起こしやすいという側面もあります。歩行時はもちろん、ベビーカーの利用時も大人よりも背が低く地面に近い乳幼児は、地面の照り返し(輻射熱)を受けやすいことなどがあり、熱中症の危険度が高まります。
乳幼児は暑さや体の不調を自分の言葉で十分に訴えることができません。さらに遊びに夢中になってしまうと、のどの渇きや気分の悪さといった熱中症のサインに気づくのが遅くなりがちです。以下の対策を行い、汗のかき方や体温、顔色や泣き方など子どもの変化に十分注意してあげたいところですね。
【対策】
・水分を多めにとらせてあげる
・熱がこもらない素材や薄い色の衣服や帽子を身につけさせる
・子どものいる高さの気温や湿度を気にかける
・車内などの暑い環境に置き去りにしない
・日差しがない屋内でも屋外と同じ対策を意識する
児童や中高生についても、体育の授業や部活動、遠足や登山などの野外活動で熱中症にかかるリスクがありますので十分な対策が必要です。屋外での活動の際には無理をしすぎず、通学時にも日よけ対策をしっかりとしましょう。また屋内でも、風のない閉め切った体育館での運動や、剣道など防具をつける競技は熱中症に特に注意が必要です。周囲の大人が普段から子どもたちに呼びかけをしてあげることが大切です。
熱中症搬送者の約半数は高齢者
2018年5月から9月にかけて熱中症で救急搬送された人のうち、約半数の48.1%が65歳以上の高齢者でした(※1)。高齢者は体温の調節機能が落ちて、温度に対する感覚が弱くなるため、暑さを自覚しにくくなります。また、体内の水分量が減少して脱水状態になりやすいのも特徴です。
自宅で発症したというニュースもよく耳にしますが、もったいないと思ってクーラーなど冷房機器を控えるのは、熱中症のリスクを高めるのでおすすめしません。
【対策】
・気温や湿度を測って周りの環境を把握する
・冷房などを利用して室内を涼しくする
・のどが乾く前に水分を計画的にとる
・入浴前や寝る前には水分補給をする
・服装や時間帯に配慮して出かける
高齢者は、自分で暑さやのどの渇きに気づきにくいうえ、体調の悪化を我慢してしまうことがあります。意識的に対策をするよう心がけ、周りの人も体調に変わりがないかこまめに気にかけましょう。
※1「平成30年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況」(総務省消防庁)
ペットも熱中症になる
ペットの熱中症は、高温多湿な環境に長時間さらされることで体温が上昇し、高体温および脱水によって起こります。また、体温を発散する機能が低下している場合や、運動のしすぎによっても起こる場合があります。
地面から近いところを歩き、気温以上に高温の環境下にさらされているペット。猫でもまれに見られますが、圧倒的に犬に多く見られます。その中でも、特に熱中症のリスクが高い犬種はフレンチ・ブルドッグ、パグ、シーズーなど。猫ではペルシャ、エキゾチックショートヘア、ヒマラヤンなどの短頭種のリスクが高く、肥満の場合には犬猫共に注意が必要です。
熱中症の初期症状としては、パンティング(「ハアハア」という激しい呼吸)、よだれ、歯肉や舌のほか結膜などの充血やうっ血、頻脈などが見られます。こうした場合、なるべく直腸(肛門)で体温測定をしてみましょう。40度を超える場合には熱中症の疑いが強いです。また、重篤化した場合には、ぐったりとして意識がない、嘔吐や下痢、震え、意識がない、けいれん発作などの症状が生じる場合もあり、最悪の場合、死に至ることもあります。症状をしっかりと把握して、迅速な処置をしてあげましょう。
【対策】
・ペットを高温の環境に置かない
・暑い時間帯に散歩や外出をしない
・こまめな給水を心がける
・必要に応じて水道水をかけ流すなどして体を冷やす
・室内は26度以下を保ち、風通しをよくする
・室内ではペットが自由に居場所を選択できるようにする
・飲み水を飲める状態を維持する
もしペットが熱中症になってしまったら、症状が出てから90分以内を目安に、早急に治療をすることが大切です。全身に常温の水道水をかけたり、水道水で濡らしたタオルなどで体を包み、涼しい場所で風を送ったりして、体幹を冷やしてあげましょう。すぐに動物病院を受診してください。
症状をうまく訴えられないペットの命を守れるのは飼い主さんだけです。熱中症のリスクをできるだけ避け、もしもかかってしまった場合は、できるだけ早く正しい処置をしてあげることが大切です。