メルセデス・ベンツからまた、コンパクトカーが登場した。クーペスタイルとステーションワゴン(シューティングブレーク)の2種類からボディタイプを選べる新型「CLA」が発売となったのだ。メルセデスの小さなクルマは増える一方だが、これらのモデルで需要の食い合いをしてしまうおそれはないのだろうか。
メルセデス・ベンツ日本(MBJ)は8月27日、初のフルモデルチェンジで生まれ変わった新型「CLA」およびメルセデスAMGに新たに加わるAMG35シリーズの第1弾「AMG A 35 4MATIC」を発表した。
昨年10月の新型「Aクラス」を皮切りに、本年6月の新型「Bクラス」、7月の「Aクラス セダン」など、多くのコンパクトモデルを市場投入してきたMBJ。新型「CLA」の登場により、この商品群のラインアップはさらに広がることになる。同社が小さなクルマに力を入れるのはなぜか。都内で行われた新型車発表会で詳しく聞いてきた。
初代モデルから徹底して磨き上げてきたデザイン
2013年に4ドアクーペ、2015年にステーションワゴン(シューティングブレーク)が発売となった初代「CLA」は、躍動感を感じさせるスタイリッシュなデザインが受けたヒット作だ。日本ではこれまでに累計約4万台を販売している。
新型車発表会に登場したMBJの上野金太郎代表取締役社長は、「初代の特徴にさらに磨きをかけた我々の自信作であり、ボディースタイルやディテールなど、とにかくスタイリングにこだわったモデル」だと新型「CLA」を紹介。商品企画を担当した中山怜氏も、「CLAのハイライトはなんといってもデザイン」と語るなど、デザインに対するなみなみならぬこだわりが確認できた。
新型「CLA」のエクステリアデザインは、キャラクターラインやエッジを極力なくした曲面で構成したシンプルな作りとなっている。なめらかな曲面だからこそ、そのボディーには光の陰影による豊かな表情が現れるという。サメの尖った鼻先を思わせるフロントサイドのデザインは、ノーズを実際よりも長く見せ、シャープな印象だ。
メルセデスらしさを感じたのが、前後のライト周りだ。ヘッドライトとリアのコンビネーションランプはともに、上下方向に細いデザインとなっていて、ワイドな印象を与える。外側が膨らむ独特なデザインは初代「CLA」の特徴だった造形で、新型「CLA」もその伝統を受け継いでいる。
だが、デザイン一辺倒かといえば、そうではない。例えばボディーサイズは、全長4,688mm×全幅1,830mm×全高1,439mm(シューティングブレークは全高1,442mm)に変更している。これにより、前後席の室内幅や前席のヘッドルーム(シートの座面から天井まで)が初代CLAと比べて拡大した。また、リアシートのバックレストは4:2:4分割可倒式を採用し、車内利便性も向上させている。
選択肢拡充で悩む喜びを
新型「CLA」からは確かな進化を感じるものの、結局のところ、このクルマは「Aクラス」「Bクラス」「Aクラス セダン」などと同じカテゴリーのクルマだ。「メルセデスのコンパクトカー」という商品群において、これらのクルマが互いのシェアを食い合ってしまうおそれはないのだろうか。
この疑問を上野社長にぶつけてみたところ、そうはならないという答えが返ってきた。
それを裏付けるのが、実際に購入するユーザーの動向だ。メルセデス・ベンツの購入を検討するユーザーは、自分たちの使用方法やライフスタイルを踏まえ、車幅や積載量などを詳細に見て購入車種を判断しているという。上野社長の見解は以下の通りだ。
「当然のことながら、似たようなサイズなので、一部はぶつかってしまう可能性を持ち合わせていますが、デザイン性を尖らせていったことで、各自のキャラクターはかなり立ってきており、それぞれのセグメントがより分かりやすくできていると感じます。今までは『A』『B』というところで終わっていたものが、そこにセダンやスポーティーなもの、積載量を増やしたものなどが加わったことで、これからは、用途に合わせてより細かく選択できるのではないでしょうか」
今後については「お客様のご要望を聞き、しっかりと説明することで、ただクルマを買うのではなく、クルマを買うという体験をより楽しんでいただきたい」と語った上野社長。群雄割拠のコンパクトカー市場において、新型「CLA」はどのようなユーザーの心をつかむのか。その動向を見守りたい。