東洋大学ダイバーシティ研究グループは9月3日、企業や団体における女性の活躍を客観的に評価する指標「女性活躍インデックス」における法人ランキング2019を発表した。この取り組みは今回で3年目となるため、3年通期の順位も併せて発表し、都内にて上位企業の顕彰を行った。
主催者である東洋大学の福川伸次総長は冒頭、「女性の活躍はこれからの日本にとって大きな課題。今回で3年目となるプロジェクトだが、大きく注目を集めていただくようになった」と挨拶。
来賓として登壇した男女共同参画・女性活躍担当大臣の片山さつき氏は「女性には仕事と家庭の両立というニーズがあり、合理的に仕事を調整して自分の利便性のあるところに集中できる」と女性の働き方を分析し、女性が活躍できる場が長期的な成長につながる点や、女性活躍推進が世界的な動きとしてあることなどを述べた。
女性活躍インデックスとは
東洋大学「女性活躍インデックス」とは、企業や団体における女性の活躍を客観的に評価する指標として開発されたもの。これは厚生労働省が企業に対し公表を義務付けている「女性の活躍推進企業データベース」を基に、独自の計算式で指標化されている。そのため、アンケート方式や応募方式と比較して客観性が高度に担保されていることが特徴だ。
しかしながら、厚労省は労働者が101人以上いる法人に、女性の活躍推進企業データベースの公表を義務付けているものの、公表できていない法人もあると指摘。女性活躍インデックスの公開により、女子学生などの企業選びの参考となり、企業・法人の女性活躍推進を加速させることもねらいだという。
計算式における抽出項目は下記の7つ。法人ランキング2019は、従業員が1,001人以上、女性労働者の割合が80%以下でデータベースの主要項目に回答している1,215法人が対象となっている。
1.女性の平均継続勤務年数(または、女性の採用10年前後の継続雇用割合)
2.男性の平均継続勤務年数(または、男性の採用10年前後の継続雇用割合)
3.管理職に占める女性労働者の割合
4.役員に占める女性の割合
5.労働者に占める女性労働者の割合
6.男性の育児休業取得率
7.女性の育児休業取得率
この3年間で、女性の活躍推進企業データベース登録企業数は7,441から10,546と1.42倍、インデックス対象法人の平均値は1.78から1.99へと1.22倍に増加しており、国の政策に一定の成果が出ていることがうかがえるという。また顕著な推移として、男性の育児休業取得率が0.05から0.11で2.11倍と大幅に増えていた。しかしながら数値としては非常に低い値であり、諸外国に比べ遅れていると指摘した。
「女性が活躍している法人」のトップ3は?
今回発表されたランキングは「法人ランキング2019 上位50社」「法人ランキング2017-2019 3年通期版」「業種ランキング2019」「業種別法人ランキング2019 各上位5社」の4つ。これらのランキング情報は東洋大学のWebサイトにて公開されている。
この発表に伴い、3年通期の順位で1位となったローソンに最優秀賞を、2位のイオンビッグ、3位のパソナテックを優秀賞として顕彰した。受賞した会社には、福川総長より表彰状が贈られた(イオンビッグは欠席)。
ローソンでは、2005年からトップの強い意志によりダイバーシティ推進の取り組みを開始しており、早くから女性をはじめ障がい者、シニア世代などの採用・活躍を推進してきた。開始当時の2005年は女性社員比率8%、女性管理職比率1%だったが、2018年にはが女性社員比率7.9%、女性管理職比率9.5%となっており、女性社員のキャリア開発研修や育児求職社員研修など、女性が継続して働き続けられるような取り組みを実施しているという。
さらに、女性役員の割合は2019年9月で41.7%と高水準。育児休業についても、男性育休の取得促進を行っており、2018年度は90%を突破した。復職後のサポートとして事業所内保育施設なども用意されているという。
パソナテックでは、女性社員の割合が61%、全管理職に占める女性の割合が51.0%、役員に占める女性の割合が31.1%となっており、ダイバーシティへの取り組みの一環として女性活躍を推進している。
1年間の育児休業取得者は100名以上おり、女性社員の出産後の復職率は100%。グループ各社の福利厚生や役立つ情報などを提供し、交流の場ともなっている専用ホームページ「パソナファミリータウン」や事業所内保育所など、多様な働き方を支援する取り組みを行っている。事業所内保育所では、大きな荷物を持って満員電車などで通勤するのは現実的ではないとして、子どもの荷物は手ぶらでも預けられるような体制を整えているという。
2019年5月には女性活躍推進法が改正されており、女性が働きやすい環境づくりの推進は不可欠な急務となっている。顕彰された法人のような取り組みを、今後は多くの法人が実践するようになるのではないだろうか。