本来、Windows 7のEoS(End Of Support、サポート終了日)は2020年1月14日であり、翌日以降はセキュリティ更新プログラムの提供が止まる。だが、一部の法人ユーザーは事情が異なるようだ。まず、VL(ボリュームライセンス)契約を結んでいる企業は、有償の拡張セキュリティ更新(ESU:Extended Security Update)プログラムを契約することで、最大3年間(2023年まで)は緊急または重要なセキュリティ更新プログラムを受けられる。この内容はMicrosoftが以前からアナウンスしていたので、ご承知の方も少なくないだろう。
いま話題になっているのは、「Windows 10 E5」「Microsoft 365 E5」 「Microsoft 365 E5 Security」契約ユーザーへのプロモーションである。該当する法人企業は上記のESUを2019年6月1日~12月31日まで提供されることが、「Microsoft End-of-Support-FAQ」というPDFで明らかになった。
日本マイクロソフトが2019年7月に発表した調査結果によれば、同月時点の国内Windows 7推定稼働台数は法人市場で1,141万台に及ぶ。減少傾向にはあるものの、EoSその日を迎えても7,645万台がWindows 7にとどまると推計している。また、OS移行に着手した従業員1,000人以上の企業は95%と順調ながらも、中堅中小企業はEoSの認知が77%にとどまり、移行うんぬん以前であることが浮かび上がってくる。
「Windows 10への移行をうながしながら、Windows 7救済策を提示するのか」という見方もある。確かに古いOS基盤を使い続けるのは、セキュリティの観点から決して好ましいことではない。だが、企業としては構築したVDI(仮想インフラストラクチャー)環境をWindows 10へ移行させるには、人的・金銭的なコスト増も発生し、移行に取り組みたいが難しいという事情もあるだろう。加えて、中堅中小企業がVL契約を結ぶメリットは多くない。あくまでも今回の施策は、大企業ユーザーをクラウドベースのライセンスへ移行させる意図があると捉えるのが素直な見方ではないだろうか。
今回は法人ユーザーを対象にした話題のため、多くの一般ユーザーは(Windowsプラットフォームを使い続けるなら)Windows 10に移行するしかない。LinuxやGoogle Chrome OSでは、周辺機器を含めたWindowsと同等のデスクトップ体験を得られるか難しいだろう。企業は費用をかけることで数年間はWindows 7にとどまれるが、Windows 7を使っている一般ユーザーは遅くとも2019年内には、Windows 10に移行するか別のプラットフォームへ乗り換えるか判断したいところだ。
阿久津良和(Cactus)