キャッシュレスが盛り上がる中、スマホ決済サービス「PayPay」のユーザー数が1000万人を突破した。加盟店も100万カ所を突破するなど急速に拡大しており、毎月のように新しい還元キャンペーンも打ち出している。

  • PayPayのユーザー数は1000万人、加盟店は100万カ所を突破した

果たしてPayPayはこのまま拡大を続けていくのだろうか。本記事ではPayPayの最新動向を振り返るとともに、次の展開を予想してみたい。

1000万人を超えたPayPay、キャンペーンの中身も進化

まずはPayPayの最新動向を振り返ってみよう。PayPayの登録ユーザー数は8月7日に1000万人を突破。累計決済回数は1億回を超えたという。登録したまま使っていないユーザーも含まれそうだが、単純平均でも1人あたり10回の決済をしている計算になる。

  • 8月5日のソフトバンク決算説明会時点では980万人。その後1000万人を突破した

第三者の調査では、インフキュリオン・グループが2万人を対象に3月に実施した調査結果として、QRコード決済の利用率は11.6%、サービスごとの利用率ではPayPayが1位となるなど、各種コード決済の中でも頭ひとつ抜き出た存在といえそうだ。

さて、PayPayといえば"キャンペーン"だ。2018年12月に20%還元を打ち出した「100億円キャンペーン」によりユーザー数や認知度は急上昇したものの、終了後に決済回数は大きく落ち込んだ。そこで第2弾以降は日常生活の中に広く浅くPayPayを組み込む方向に転換している。

  • 第1弾100億円キャンペーンの終了後、決済回数は落ち込んだ(SoftBank World 2019で示された資料より)

6月からは一律で20%還元ではなく、業種や時間帯を絞り込んだ「ワクワクペイペイ」が始まった。6月にはドラッグストアを対象としたことで、全国のドラッグストアでPayPayの導入が進んだ。8月と9月はスーパーマーケットが対象となり、西友、ライフ、イトーヨーカドーらが相次いでPayPayを導入している。

9月のキャンペーンは還元率が最大10%に下がるものの、もともとスーパーは価格設定が安いだけに、コンビニでの20%還元より嬉しい人は多いのではないだろうか。これまでスマホ決済に興味がなかった層への拡大も期待できそうだ。

PayPay残高は、名称が変わって複雑化する嫌いはあるものの、機能としては充実してきた。Yahoo!マネー事業との統合により銀行口座への出金に対応した「PayPayマネー」が9月30日以降に導入され、これまでの残高は「PayPayマネーライト」になる。

ワクワクペイペイなど通常の還元で付与される「PayPayボーナス」とは別に、有効期限が60日間と短い「PayPayボーナスライト」が登場。これまでの期間固定Tポイントを置き換える形で、PayPayの残高がバラ巻かれることになりそうだ。

  • 有効期間が60日間と短い「PayPayボーナスライト」が登場

キャッシュレスが盛り上がる中、7月には7pay(セブンペイ)の不正利用問題によりコード決済に不安の声が上がる局面もあった。これに対してPayPayはユーザーと加盟店の両方に対して不正利用時に全額を補償する制度を8月28日に導入した。多くの人が安心してPayPayを使える環境に向けて、一歩前進したといえそうだ。

加盟店は100万カ所を突破、ただし増えすぎた弊害も

全国チェーンの導入が相次ぐPayPayだが、加盟店は8月8日に100万カ所を突破したという。既存の非接触決済を含めた加盟店数を誇る事業者もある中で、PayPayがコード決済だけでこの数字を達成したのは面白い。全国チェーンだけでなく、地域チェーンや個人経営の店にも営業部隊を展開しているようだ。

実際にPayPayを導入した小規模店で話を聞いてみると、初期費用は不要で手数料も当面は無料とのことから、「失うものはない」と判断したという。一方、観光客が多いエリアでは、PayPayを導入することで訪日中国人客に需要のあるアリペイに対応できることが大きな魅力になっているようだ。

  • 那覇におけるPayPay対応店舗の例。アリペイ対応を掲げる店も多い

ただ、実際にPayPayを使おうとすると、アプリに表示される対応店舗が多すぎて店を探すことが難しい場面が増えてきた。地域情報のサイトである「Yahoo!ロコ」にはPayPay対応が検索条件として用意されており、地域やジャンルを絞り込んだ検索はできるものの、この機能はアプリでも実現してほしいところだ。

  • 札幌のすすきのでPayPayアプリを起動した様子

  • こちらのPayPay対応店舗は地図上の表示とはやや異なる場所にあった

このように急速な拡大に使い勝手が追いついていない面はあるものの、将来的にはクーポンや店舗アカウントのフォロー機能など、他社が得意としている領域にも積極的に攻め込む姿勢を打ち出している。当面の間、スマホ決済でNo.1のポジションが揺らぐことはなさそうだ。