一日を精力的に活動するために朝ごはんは欠かせない存在だ。朝ご飯を食べてエネルギーをきちんと補給することにはさまざまなメリットがあるが、その中の一つに「ダイエット効果の促進」があげられる。そして、そのダイエット効果は食事の内容によってより高められる可能性があるのだ。

今回は、ダイエットにおける食事の重要性や「太りやすい朝ごはん」および「やせやすい朝ごはん」の特徴などについて消化器科 消化器外科 外科医の小林奈々医師にうかがった。

  • ダイエットをするならば、おかずが豊富な和の朝ごはんが最適解

朝ごはんがダイエットに重要な理由

「ダイエットのためには食事を抜くことなく、一日3食をきちんと食べた方がよい」といった趣旨の意見を見聞きしたダイエッターも少なくないだろう。一日に朝・昼・晩と3回の食事をとる場合、一般的に前夜の夕食からその翌日の朝ごはんまでの時間が最も空くことが多い。すなわち、体が最も「ガス欠」に近い状態であるからこそ、そこにエネルギーを注入することが重要になってくると小林医師は話す。

「私たちの体は朝にエネルギー補給をすることにより、すべて動き出します。自律神経のスイッチがオンになって体温が上がることにより、脳や身体が活動し始めるのです。腸を使うことも自律神経や体温を上げること、エネルギー消費に大きく関わっています」

もしも朝ごはんを抜いて昼食を食べるとなると、自律神経がうまく動かずにエネルギー代謝が落ち、体温も上がらないため身体は活動的に動かなくなる。エネルギー代謝が落ちるということは、いわゆる「やせにくい体」になってしまうことを意味している。ダイエットには不向きというわけだ。

「もし朝ごはんを抜いてしまった場合は、ランチがその日初の食事になり、かつ長時間腸が使われていない状況になっているので、腸に負担がかかりにくい食事をするようにしましょう。その際に血糖値が急激に上がらないようにすることもポイントです」

具体的には、スープをはじめとする身体を温めるメニューや、消化にいいものがお勧めだという。

人によっては1日の総摂取カロリーを優先的に考え、「朝に食べていないので昼と夜にしっかりと食べる」という人もいるかもしれない。ただ、この発想はダイエットをするうえではあまり好ましくない。特に夜は身体が「休息モード」に入り、消費カロリーも多くない。

「そのため、なるべく身体に負担がかからないメニューで量も控えめにするとよいでしょう。どうしても夜にしっかりと食べたい場合は就寝時間までに4~5時間は空けるといいでしょう。快眠もダイエットにはとても重要なので、寝る前のアルコールも控えめの方がいいですね」

朝食を食べることのメリット

エネルギー代謝を上げるという点以外にも、朝食を摂取することのメリットは大きいため、ダイエットをしているとき以外にも積極的に摂取したい。朝食をとることのメリットを詳しくみていこう。

体内時計をリセットできる

人間の体内時計は、一日の時間・24時間と微妙にずれている。その誤差をリセットし、体内時計のリズムを整えることには、朝の日光を浴びたり朝食を食べたりすることが有効なのだ。朝ごはんを食べて体内時計の周期が整えば、代謝も上がりやせやすくなるほか、就寝や起床などの毎日の生活サイクルが一定になるためQOLの維持向上にもつながる。

便通がよくなる

健康的に体重を落としていきたいなら、腸内環境の正常化は肝要となる。腸内環境が優れなければ食物残さが腸内に滞り、便秘が慢性化してしまう。そうなると体重が落ちにくくなるばかりか、腹部膨満感や肌荒れといった症状につながってしまう。

そのような状況を避けるべく、朝に起きたらしっかりとごはんを食べる習慣をつけるようにしよう。そうすることで腸の蠕動運動が活発になり、お通じがよくなっていく。その際は、食物繊維の多い食品やヨーグルトなどのビフィズス菌を含む食品、キムチなどの発酵食品を取り入れるとなおいいだろう。これらの食材は便秘の改善が見込まれるからだ。

「朝食はいつも抜いてしまう」という人は、まずはバナナ1本とか小分け式のヨーグルト1個といった具合に少量から始めていき、徐々に習慣づけていくようにしたい。

ダイエット向きの「やせる朝ごはん」

朝ごはんを食べることがダイエットをするうえで重要なのがわかったところで、今度はその「質」に注目してみよう。

やせる朝食のために摂取したい栄養成分

体内時計をリセットして代謝を上げるためにも、朝食には炭水化物とたんぱく質、脂質をバランスよく摂取する必要がある。

やせる朝食の秘訣は和食

体重をコントロールするのに適しているのは、さまざまな栄養素が摂(と)りやすい和食だという。ご飯にみそ汁、副菜1~2種類という内容が好ましく、ご飯は血糖値の急激な上昇(血糖値スパイク)を避けるべく、白米よりも玄米や雑穀米を選択するとなおよい。また、発酵食品や果物、野菜をメニューに取り入れることが大切とのこと。

特に玄米や雑穀米は、食後血糖値の上昇を示す指標・GIが低いという特徴を持つ。GIとは、食品に含まれる糖質の吸収度合いを示し、摂取2時間までの血液中の糖濃度を計ったもの。このGIの値が低い食品は、肥満や2型糖尿病の発症リスクを低減させる可能性が示唆されているため、ダイエットに励む人は積極的に摂取したい。

具体的に朝食に用いたい食材は以下の通り。

  • れんこん
  • しいたけ
  • 長ネギ
  • キャベツ
  • 大根
  • ブロッコリー
  • ナス
  • ほうれん草
  • 納豆
  • ひじき
  • 昆布
  • もずく
  • りんご
  • キウイ
  • グレープフルーツ
  • プレーンヨーグルト

やせる朝食を洋食でも実現!

朝はパン派という人は、全粒粉のパンやライ麦パンなど噛み応えのあるものを採用するとよい。これらのパンは口を動かして咀嚼する回数が増えるため、満腹中枢が刺激されやすいうえ、GI値が低いという特徴を持つ。

おかずは、ハムエッグやチーズでたんぱく質を摂取し、サラダやフルーツ入りヨーグルトなどでビタミンや脂質をバランスよく摂るように心掛けたい。

ダイエット向きではない「太る朝ごはん」

反対にダイエットにあまり向いていないのは、普通のパンやベーコン、ソーセージなどの加工食品だという。

「脂質が多いものは、朝ごはんにはあまりお勧めしません。糖質管理の観点から言うと脂質は摂って良いと言われますが、量と質は注意が必要です。余分な脂質を身体にためないため、食物繊維はしっかりと摂るようにしてください。パンは腹持ちがあまりよくないですし、パンにジャムやバターなどを塗ることを習慣化している場合は、糖質や脂質などの観点から注意が必要です。また、ソーセージやベーコンなどの加工肉などもあまりお勧めしません」

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コンビニで「やせる朝ごはん」をそろえるコツ

ダイエットをするとなったら、和食ベースの朝ごはんをしっかりと食べればよいことがわかった。ただ、会社勤めの人ならば寝坊で欠食してしまうこともあるだろうし、泣きやまない赤ちゃんの対応などに追われ、出社時間までに食事を用意できないというケースもあるだろう。

そのようなとき、頼りになるのがコンビニエンスストア。コンビニで朝ごはんを購入する際のポイントも聞いてみた。

「主食は腹持ちのよいおにぎりをチョイスしましょう。最近は玄米やもち麦などを用いた商品もあるので、これらもお勧めです。その付け合わせとして、おみそ汁か野菜が多く含まれているスープも選びたいところです。身体を温める一助になります。ひじき、卯の花などの和惣菜もプラスできるとなおいいですね。一方でどうしてもパンが食べたいときはシンプルなものを選ぶようにし、全粒粉を使ったパンがあればそちらを優先しましょう。果物などが入ったジュースを選ぶときは糖分フリーで、可能ならば食物繊維が含まれているものを選ぶといいでしょう」

ダイエット時における食事面の注意点

ダイエットをするうえで食事面で気をつけるべきポイントをあらためて以下にまとめたので参考にしてほしい。

バランスよく食べる

副菜を取り入れる

血糖値が上がりすぎないよう、食べるものの種類を選ぶ

食べる時間を考慮する

一日3食の中で食べる量のバランスを考える(可能ならば朝に多め、夜は少なめ)

「『特定の食材で下痢になりやすい』『便秘になりがち』など、自分の体質を考慮することもダイエットに役立ちます。私は自分の遺伝子診断をして、糖質は代謝しやすく、脂質は代謝しにくいことがわかっています。こういう知識も参考になると思います」

※写真と本文は関係ありません